「ここ5~6年、裏社会の現場で大学生の姿を見る機会が増えてきている」
ノンフィクション作家の草下シンヤ氏がそう話す。『裏のハローワーク』など、裏社会に関する書籍を多く発表している草下氏は現在、「週刊ビックコミックスピリッツ」で連載中の漫画『ハスリンボーイ』(小学館)の原作を担当。 “ハスリン”とは非合法な商売で稼ぐことを意味する。作中では主人公である大学生のタモツが、奨学金返済のため違法な道具屋として池袋の裏社会で働く様子が描かれているが、フィクションとはいえ、実際に多くの取材に基づいているそうだ。いま大学生(若者)の間で裏稼業が流行しているとはどういうことなのか。草下氏に話を伺った。
◆Fラン大学生が将来を不安視、裏社会に希望を見出す
「大学生は裏稼業においてバレにくい(職質されにくい)という特権があり、裏社会の人間が利用しようとするんです」
一般的に大学生といえば、一人暮らしを始めたり、サークルや飲み会、旅行など遊びの機会が増えたりする。当然、お金が必要となってくる。そんなときに近寄ってくるのが裏社会の人間たちだ。とはいえ、大学生が普通のアルバイトではなく、裏稼業にまで手を出してしまう背景にはなにがあるのだろうか。
「裏社会にいる大学生はいわゆるFラン大学の人間が多い。真面目に就職したとしても年収300万、日本経済は縮小していくばかりで先が見えない。表の世界でやっていくことがバカバカしく思えてきてしまうようです。そのなかで一見派手に見える裏社会に魅せられ、道を外してしまうことが多いですね」
現在は大卒だからといって安定した未来は約束されていない。それならば一攫千金を狙って……ということらしい。一方で、大学生にとっては大金でも、裏社会にとっては端金。彼らにとっては使い勝手のいい労働力を安く購入している構図なのである。
◆入り口は繁華街のキャッチから…
では、実際に普通の大学生がどのようにして裏社会に流れていくのか。「数年前の一斉摘発で捕まったキャッチの半数が大学生だった」と草下氏。現在、都内をはじめ多くの?華街では路上での客引き行為が条例で禁止されている。上野の仲見世通りなど浄化された地域もあるが、迷惑な客引き行為が絶えない地域もいまだに見られる。そんなキャッチの仕事が大学生に人気のアルバイトとなっているらしい。とはいえ、それが裏社会への入り口となってしまうこともある。
「通りによって仕切っている組織が異なり、最終的にはケツモチである組織に金銭が流れることになる。路上に立つにも場所代を組織に2~3万円程度収める必要があり、やはり一般的なバイトと比べると、裏の人間と接する機会が多いです。またキャッチの間には “やっつけ”っていう言葉がある。ムカついた客がいれば、ぼったくりの店に連れて行っちゃう。そういう店との繋がりから、裏社会に足を踏み入れてしまう大学生が多いですね」
ほかの裏稼業と比べて、路上のキャッチは大学生にとってハードルが低い。なろうと思えば誰でもなれる。しかし、そこは繁華街。裏社会の人間も少なくないのだ。
◆クスリの売人やオレオレ詐欺に加担することも…
大学生はもちろん、若者たちが道を踏み外すパターンはそれだけではない。クスリの売人、オレオレ詐欺のグループなどに転身するケースまであるという。
「クスリ系の犯罪は、やはりクラブが入り口になることが多いです。マリファナの売人をやっている大学生もいる。そいつ自身がネタ好きで買うためにクラブに出入りしているうちに売人に目を付けられてしまうんです。『ネタが好きならお前も売ってみるか?』という感じでスカウトされる。あるいは、自分で吸うぶんだけマリファナの栽培をしていた大学生が、クラブで売人に尾行されて家を突きとめられ、脅しをかけられてそのまま手下にされてしまった例もありますね」
また、地元の悪い“先輩”から誘われてしまうこともある。たとえば、ハスリンボーイの舞台となっている池袋をはじめ、半グレ集団によるオレオレ詐欺事件の被害も深刻だ。今年1月~6月における「オレオレ詐欺」などの特殊詐欺の被害額は174億9000万円にのぼる。草下氏は、これらの詐欺に加担していた若者のひとりをこう振り返る。
「建築現場の仕事で地方から東京に出てきた18歳の青年が、オレオレ詐欺の受け子(金を受け取る役目)で捕まってしまった。同じく上京していた地元の先輩に誘われて参加してしまったらしいんです。その先輩の男は詐欺グループにいたことがあり、そこでノウハウを盗んで独立したようですが……」
先輩が作った詐欺グループを仕切っている人間たちも20代前半の男たちだったという。捕まった青年は大学生ではなかったが、このような若者たちの犯罪集団は無数に存在しており、なかには大学生が参加していることもあるようだ。
◆中高生まで…犯罪の低年齢化を危惧
「昔はセパレートしていた表社会と裏社会が渾然一体となって交じり合いつつあり、いまでは犯罪や反社会勢力が近い存在となっています」
その結果として裏社会の現場に大学生が増えているわけでもあるが、さらに草下氏は犯罪の低年齢化を危惧する。
「いまは大学生にとどまっていますが、高校生、さらには小中学生が犯罪組織の一員となれば摘発は困難になる。海外マフィアでは小学生がクスリの運び屋として使われていますが、日本においてもそのような未来はそう遠くないところにきている気がします」
表社会に希望を見出せず、裏社会にすがる若者が増えていく。この状況が続けば、さらに混沌とした社会へと移り変わっていきそうだ。
【PROFILE】草下シンヤ/1978年、静岡県出身。豊富な人脈を活かした裏社会取材を得意とし、『実録ドラッグレポート』『裏のハローワーク』などの著作がある。現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて『ハスリンボーイ』(原作担当/漫画・本田優貴)を連載中
日刊SPA! / 2018年8月30日 15時55分
2018年8月31日金曜日
こんな仕事は才能の無駄遣い辞め時を示す10のサイン
以下は読者のオードリーからの便りと、それに対する私からの回答だ。
私は昨年5月に現在の職場で働き始めました。1年よりもずっと長くここで働いているように感じますが、それは良い意味でではありません。就職してすぐに、上司のキャロラインが私のポジションについてうそをついていたことがわかりました。キャロラインは私のポジションが素晴らしい役割であるかのように説明していましたが、実際には違いました。この1年で、できると思っていた仕事の2割ほどしか担当できませんでした。先月行われた年次評価の場でこれについて触れ、1年前に私が作成した当初のプロジェクトプランについて話し合えないか、キャロラインに尋ねました。すると彼女は「いいえ、大丈夫。それについては心配しないで」と答えました。キャロラインは快活で明るい人ですが、上司としては最悪です。私を含め部署の誰に対しても、それぞれのやりたいように仕事をさせてくれません。自分が全て承認しなければならないのです。私はこれまで、発案した10以上のアイデアを彼女に却下されてきました。全て、私の就職面接で彼女の方から持ち出してきたものです!きっと1年前の面接では、私を採用するために、あることないことを口にしたのでしょう。実際に就職した後は、魅力的なプロジェクトに関する話はすべて消えてしまいました。この仕事に就いて1年が経ちます。もう十分でないでしょうか?もし可能なら、一つの仕事に1年ではなく2年はとどまった方がよい、とよく耳にします。でもこのつらい1年余りの間、周囲に示せるようなことは何もできませんでした。この職に就いてから、以前の仕事でできなかったようなことは何もできていません。私は別の仕事を探し始めるべきでしょうか?
オードリーへ
時は前に進み続けているのに、自分が前へ進めていないのならば、それは遅れを取っているということ。あなたは成長と自己開発の機会を欲している。今の職場でそれが実現できないのであれば、それは自分を苦しめているということだ。あなたには、自分を伸ばせる仕事に就く価値がある。応募者に対して言うことと、従業員に対して言うことが異なるような人間の下で働く必要はない。前へ進むべきだ。さもなければ、時間と才能を無駄にしてしまう。以下は、自分と合わない仕事のために才能を無駄にしていることを明確に示す10のサインだ。
1. 現実世界は常に変化しているにもかかわらず、自分の会社は変わらない。新たな学びの機会が多い仕事だと言われていたにもかかわらず、職務内容が数カ月経っても変わらない。
2. 上司が新しいことを試す気がなく、ワークフロー改善や改革に関心がない。このような人間の下で自分のキャリアを無駄にする暇はない!
3. 上司へ何度も進言しているにもかかわらず、変化に前向きな姿勢を取ってくれない。私は、企業が取り組む「変革管理」イニシアチブの99%は無意味だと思っている。というのも、変化に対して抵抗を見せるのは従業員ではなく、その上司であることが多いからだ。
4. 自分には、仕事に関する壮大なアイデアがある。顧客に対してより良いサービスを提供し、売り上げを増やす方法を見つけた。自分のアイデアを頭の中で練ったり、内容を書面に書き出したりさえもした。しかし心の中では、そのアイデアが絶対に日の目を見ることはないと分かっている。
5. ワークグループの中で自分だけが”反抗者”になっている。上司に目を覚ましてもらい、未来へ足を踏み出してほしいと思っているのは自分だけ。同僚は、現状に完全に満足している。あなたは、もっときびきびとした人たちと一緒に働くべきだ!
6. 職場を見回した時、自分が見習うべき人が誰もいない。自分は新参者であるにもかかわらず、既に他の同僚よりもものごとの進め方を心得ているし、アイデアも豊富だ。
7. もっと独創性を発揮する自由を与えられ、自分の貢献が評価され、素晴らしい実績を上げるチームの貴重なメンバーであるという実感を得られることを夢見ている。今の仕事では、そうした感情は一切得られない。
8. 年内やその先を見据えた時、自分の仕事に何らかの変化が起きることを期待できない。
9. 日曜の夜、翌朝の出勤を思うと気分が悪くなる。
10. 本能的に今の仕事を嫌っている。自分の心を信じよう!
あなたは1年間、今の仕事を続けてきた。十分すぎる長さだ。いずれにせよ、自分にふさわしい仕事を見つけるのには数カ月かかるものだ。迷うことなく、転職活動を密かに始めよう。就職活動へエネルギーを費やすことで、現在の仕事のつらさも和らぐかもしれない。今回のことで悩み過ぎないこと。あなたが持っていた素晴らしいアイデアの数々は、将来めぐりにめぐって、別の場所で役に立つだろう。転職活動が順調に進めば、上司のキャロラインのあなたに対する態度も変わってくるかもしれない。あなたが次のステップへ進もうとしていることに気づき、引き留めようと必死になるかもしれないが、そうなっても時すでに遅しだ!
Forbes JAPAN / 2018年7月24日 20時0分
私は昨年5月に現在の職場で働き始めました。1年よりもずっと長くここで働いているように感じますが、それは良い意味でではありません。就職してすぐに、上司のキャロラインが私のポジションについてうそをついていたことがわかりました。キャロラインは私のポジションが素晴らしい役割であるかのように説明していましたが、実際には違いました。この1年で、できると思っていた仕事の2割ほどしか担当できませんでした。先月行われた年次評価の場でこれについて触れ、1年前に私が作成した当初のプロジェクトプランについて話し合えないか、キャロラインに尋ねました。すると彼女は「いいえ、大丈夫。それについては心配しないで」と答えました。キャロラインは快活で明るい人ですが、上司としては最悪です。私を含め部署の誰に対しても、それぞれのやりたいように仕事をさせてくれません。自分が全て承認しなければならないのです。私はこれまで、発案した10以上のアイデアを彼女に却下されてきました。全て、私の就職面接で彼女の方から持ち出してきたものです!きっと1年前の面接では、私を採用するために、あることないことを口にしたのでしょう。実際に就職した後は、魅力的なプロジェクトに関する話はすべて消えてしまいました。この仕事に就いて1年が経ちます。もう十分でないでしょうか?もし可能なら、一つの仕事に1年ではなく2年はとどまった方がよい、とよく耳にします。でもこのつらい1年余りの間、周囲に示せるようなことは何もできませんでした。この職に就いてから、以前の仕事でできなかったようなことは何もできていません。私は別の仕事を探し始めるべきでしょうか?
オードリーへ
時は前に進み続けているのに、自分が前へ進めていないのならば、それは遅れを取っているということ。あなたは成長と自己開発の機会を欲している。今の職場でそれが実現できないのであれば、それは自分を苦しめているということだ。あなたには、自分を伸ばせる仕事に就く価値がある。応募者に対して言うことと、従業員に対して言うことが異なるような人間の下で働く必要はない。前へ進むべきだ。さもなければ、時間と才能を無駄にしてしまう。以下は、自分と合わない仕事のために才能を無駄にしていることを明確に示す10のサインだ。
1. 現実世界は常に変化しているにもかかわらず、自分の会社は変わらない。新たな学びの機会が多い仕事だと言われていたにもかかわらず、職務内容が数カ月経っても変わらない。
2. 上司が新しいことを試す気がなく、ワークフロー改善や改革に関心がない。このような人間の下で自分のキャリアを無駄にする暇はない!
3. 上司へ何度も進言しているにもかかわらず、変化に前向きな姿勢を取ってくれない。私は、企業が取り組む「変革管理」イニシアチブの99%は無意味だと思っている。というのも、変化に対して抵抗を見せるのは従業員ではなく、その上司であることが多いからだ。
4. 自分には、仕事に関する壮大なアイデアがある。顧客に対してより良いサービスを提供し、売り上げを増やす方法を見つけた。自分のアイデアを頭の中で練ったり、内容を書面に書き出したりさえもした。しかし心の中では、そのアイデアが絶対に日の目を見ることはないと分かっている。
5. ワークグループの中で自分だけが”反抗者”になっている。上司に目を覚ましてもらい、未来へ足を踏み出してほしいと思っているのは自分だけ。同僚は、現状に完全に満足している。あなたは、もっときびきびとした人たちと一緒に働くべきだ!
6. 職場を見回した時、自分が見習うべき人が誰もいない。自分は新参者であるにもかかわらず、既に他の同僚よりもものごとの進め方を心得ているし、アイデアも豊富だ。
7. もっと独創性を発揮する自由を与えられ、自分の貢献が評価され、素晴らしい実績を上げるチームの貴重なメンバーであるという実感を得られることを夢見ている。今の仕事では、そうした感情は一切得られない。
8. 年内やその先を見据えた時、自分の仕事に何らかの変化が起きることを期待できない。
9. 日曜の夜、翌朝の出勤を思うと気分が悪くなる。
10. 本能的に今の仕事を嫌っている。自分の心を信じよう!
あなたは1年間、今の仕事を続けてきた。十分すぎる長さだ。いずれにせよ、自分にふさわしい仕事を見つけるのには数カ月かかるものだ。迷うことなく、転職活動を密かに始めよう。就職活動へエネルギーを費やすことで、現在の仕事のつらさも和らぐかもしれない。今回のことで悩み過ぎないこと。あなたが持っていた素晴らしいアイデアの数々は、将来めぐりにめぐって、別の場所で役に立つだろう。転職活動が順調に進めば、上司のキャロラインのあなたに対する態度も変わってくるかもしれない。あなたが次のステップへ進もうとしていることに気づき、引き留めようと必死になるかもしれないが、そうなっても時すでに遅しだ!
Forbes JAPAN / 2018年7月24日 20時0分
2018年8月14日火曜日
手数料1億円払っても割に合わない? 医学部“裏口入学”の現実
東京医科大学に息子を“裏口入学”させたとして文部科学省の前科学技術・学術政策局長・佐野太容疑者が受託収賄の疑いで逮捕された事件。前代未聞の事件だが、取材を進めるとその背景には医学部の裏口入学の知られざる実態があった。
証言続々…“裏口”仲介する予備校
実は、私立大学医学部をめぐる状況は大きく変わっている。たとえば東京医科大学の場合、43年前に比べると偏差値は15ポイント上昇。この偏差値は、東京大学の理科系学部に匹敵し、競争率は“16.5倍”という難関だ。そうしたことから医学部への入学が困難となり、何年も浪人することとなるため一部で裏口入学の斡旋が起きるという。では、裏口入学の実態はどのようなものなのか?
近畿大学医学部教授の巽信二氏は自身も「裏口入学を持ち掛けられたことがある」と話す。
ーー裏口入学させてくれと言われたことはありますか?
あります。最近でもありますね。入っても苦労するよと。そういう親の過保護的な援助はやめたほうがいい。
裏口入学の依頼をしてくる人はいるが、近畿大学ではすべての依頼を断っているという。その上で巽教授は、「大阪にも東京にもあるんですけど、ある全寮制の予備校に一旦入って、成績が上がればいいですけど、上がらなくても預かった子供は1年間で何とか行先を探して、裏口入学で医大に入れてやるというのをやっていたのは知っています」と話す。また、杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏も、他の大学のケースとした上で「今までも事件になったケースはあると思う。裏口入学を約束したけど、結局入学できなかったから金を返せ、とかそういう争いはあったと思いますけども。仲介に“誰か”入っている感じですよね。」と、巽教授と同様に裏口入学を持ち掛けてくる人たちが存在していることを明かした。ここで注目したいのは2人の教授が指摘する“裏口入学を仲介する予備校”の存在だ。元医学部予備校経営者の原田広幸氏はそうしたブローカーの存在を赤裸々に明かす。「裏口入学があることは、予備校の先生たちにとってほぼ常識だと思います。ブローカーとしか言いようがないのですが、大学の有力者と人脈があるという風に言っている人たちがいて、紹介料を取る形でビジネスをやっていると思います。」裏口入学ブローカーの存在。その実態とはどのようなものなのか?原口氏は裏口入学のブローカーが、医学部専門の予備校経営に関わっているケースもあると指摘する。「そういう予備校は1、2年単位でぱっと出てまた消えてを繰り返しています。冬になると新規学生を募集して新しい予備校ができたりするんです。そしてまた1、2年すると消えたりする予備校があるので、ブローカーが絡んでいるのかな、と」気になるのはその「手数料」だが、驚くほど高額なケースもあるという。「ある私立大学だとブローカーへの手数料が1億円は必要だと。ブローカーが半分とっても、大学側に半分、10%でも1000万円ですよね」
喉から手が出るほど欲しい“ブランディング”
しかし、今回の事件は単なる裏口入学ではない。文科省の官房長(当時)が自分の子供を医学部に合格させてもらう見返りに、文科省の支援事業の対象校とするよう取り計らったという受託収賄容疑だ。その支援事業とは、文科省が2016年から始めた「私立大学研究ブランディング事業」で、独自色を打ち出す研究に取り組む私立大学に補助金を出すというもの。東京医科大は、2016年度は落選したが、文科省の官房長(当時)に働きかけた2017年度には見事選ばれ、およそ3500万円の補助金を受けている。教育評論家の尾木直樹氏は、この「ブランディング事業」の指定を受けることが大学の経営にとって大きな意味を持つのだと指摘する。「大学にお金が入ってくるだけではなく、弾みがついて受験生の間で人気になってくる。これは間違いない。どこの大学でも、経営戦略として喉から手が出るほどこのブランディング事業指定は欲しいのです。そこに上手に文科省の前局長はつけこんで、自分の息子を入れてくれと。これはない。呆れてしまう」
意外…きっかけは私大医学部の学費の値下げ!?
大学ジャーナリストの石渡嶺司氏による、一旦は下火になっていた裏口入学が再燃したきっかけが実は意外なことにあったと指摘した。それは2008年に順天堂大学が医学部の学費を値下げしたことだったという。順天堂大学は6年間の学費を2970万円から2090万円に下げ、これによって優秀な学生が集まるようになり偏差値も62.5(2017年度)から70(2019年度予想)にアップした。ほかの私立大学もこれに追随し医学部の学費を値下げ。すると偏差値もアップしたのだった。
石渡氏は
「医学部はもともと経営が赤字になりやすい体質がありました。しかも偏差値が上がり、人気が高まることで、一般家庭の受験生も入学するようになってきています。そこに、医者の子弟よりも一般家庭からの方が、寄付金が集まりにくいという事情があります。全部の医大が裏口入学をしているというわけではないのですけども、医大によっては、同窓会のリストなどを作って、どれくらいの寄付金が集まるかというのを考えることになります。また、政府からの補助金が下がっている傾向があります。そのため競争的な補助金というものが増えているんですけれども、それを東京医科大学としては何が何でも受諾したかったというのも、今回の事件につながったとみています」
と、今回の事件の背景を語った。
寄付金一口1000万円の私大も?
石渡:医学部の寄付金というのは10万、20万円という単位ではないですね。数百万円、場合によっては一口1000万円という大学もあります。
佐々木恭子:私立ですから、独自にどういう学生がほしいかを決める自由は、大学にあるわけですよね。
有本香(ジャーナリスト):補助金が入っているので私立とはいえ入試は「公正」でなくてはいけないと思います。しかし公平さというのは、私立という側面があると思うので、この学校に入って6年間学費を払い続けることができるか、というバックボーンを大学側が一つの判断基準として持っていたとしても、そこに文句は言えない。
寺脇研(元文部官僚・京都造形芸術大学教授):大学とは憲法で定められた学問の自由で、自治ですからね。
パトリック・ハーラン:アメリカでは寄付で学校に行く人も多いんですよ。僕の通ったハーバード大学もそう。そのために寄付額を多く募ろうとするんですね。そのために「レガシー枠」というものがある。同窓会の子供がちょっと入りやすくなる。同じような点数の受験生の場合、両親がOBだったらその子息を通す。その代り寄付金をより多くもらう。それで私のような貧しい子供が入れるようになるんです。それがオープンにされているんです。裏口入学なんてレッテルはなく「レガシー」なんてちょっとかっこよい響きになっているんですね。
割に合わない「医学部裏口入学」
石渡:医学部・歯学部の裏口入学は、私はもっとも割に合わないものだと思っています。医学部に入ったから必ず医者になれる、というものではなく、あくまでも国家試験の受験資格が得られるだけなんですね。しかも合格率もまじめに6年間勉強し続けても、ざっと1割は合格できないという難関試験です。さらに各大学は見た目の国家試験の合格率を上げるために受かりそうもない学生については容赦なく留年させる。それがざっと1割います。ですから勉強ができないまま入学してしまうと留年、ないしは卒業はできるけど国家試験には受からないという状態が続く。そういった意味では裏口入学は、割に合わない話ではないかと思います。
佐々木:これから入試も2020年に改革が行われる中で、どうやって公平性・フェアさを保っていけばいいのか。
寺脇:そこが大問題です。大問題なのに文部科学省の高官が、自分で裏口入学をやっちゃってるなんていったらね、今文科省が進めている大学入試改革の信頼性まで失われる。これはきちんと裁いてもらって真相を究明してもらいたい。2020年にセンター試験が廃止され、大学入試改革が行われようとしている矢先の文科省幹部による不正。国民はもっと怒ってもよいのではないだろうか?
(「報道プライムサンデー」7月22日放送分)
プライムニュース サンデー
証言続々…“裏口”仲介する予備校
実は、私立大学医学部をめぐる状況は大きく変わっている。たとえば東京医科大学の場合、43年前に比べると偏差値は15ポイント上昇。この偏差値は、東京大学の理科系学部に匹敵し、競争率は“16.5倍”という難関だ。そうしたことから医学部への入学が困難となり、何年も浪人することとなるため一部で裏口入学の斡旋が起きるという。では、裏口入学の実態はどのようなものなのか?
近畿大学医学部教授の巽信二氏は自身も「裏口入学を持ち掛けられたことがある」と話す。
ーー裏口入学させてくれと言われたことはありますか?
あります。最近でもありますね。入っても苦労するよと。そういう親の過保護的な援助はやめたほうがいい。
裏口入学の依頼をしてくる人はいるが、近畿大学ではすべての依頼を断っているという。その上で巽教授は、「大阪にも東京にもあるんですけど、ある全寮制の予備校に一旦入って、成績が上がればいいですけど、上がらなくても預かった子供は1年間で何とか行先を探して、裏口入学で医大に入れてやるというのをやっていたのは知っています」と話す。また、杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏も、他の大学のケースとした上で「今までも事件になったケースはあると思う。裏口入学を約束したけど、結局入学できなかったから金を返せ、とかそういう争いはあったと思いますけども。仲介に“誰か”入っている感じですよね。」と、巽教授と同様に裏口入学を持ち掛けてくる人たちが存在していることを明かした。ここで注目したいのは2人の教授が指摘する“裏口入学を仲介する予備校”の存在だ。元医学部予備校経営者の原田広幸氏はそうしたブローカーの存在を赤裸々に明かす。「裏口入学があることは、予備校の先生たちにとってほぼ常識だと思います。ブローカーとしか言いようがないのですが、大学の有力者と人脈があるという風に言っている人たちがいて、紹介料を取る形でビジネスをやっていると思います。」裏口入学ブローカーの存在。その実態とはどのようなものなのか?原口氏は裏口入学のブローカーが、医学部専門の予備校経営に関わっているケースもあると指摘する。「そういう予備校は1、2年単位でぱっと出てまた消えてを繰り返しています。冬になると新規学生を募集して新しい予備校ができたりするんです。そしてまた1、2年すると消えたりする予備校があるので、ブローカーが絡んでいるのかな、と」気になるのはその「手数料」だが、驚くほど高額なケースもあるという。「ある私立大学だとブローカーへの手数料が1億円は必要だと。ブローカーが半分とっても、大学側に半分、10%でも1000万円ですよね」
喉から手が出るほど欲しい“ブランディング”
しかし、今回の事件は単なる裏口入学ではない。文科省の官房長(当時)が自分の子供を医学部に合格させてもらう見返りに、文科省の支援事業の対象校とするよう取り計らったという受託収賄容疑だ。その支援事業とは、文科省が2016年から始めた「私立大学研究ブランディング事業」で、独自色を打ち出す研究に取り組む私立大学に補助金を出すというもの。東京医科大は、2016年度は落選したが、文科省の官房長(当時)に働きかけた2017年度には見事選ばれ、およそ3500万円の補助金を受けている。教育評論家の尾木直樹氏は、この「ブランディング事業」の指定を受けることが大学の経営にとって大きな意味を持つのだと指摘する。「大学にお金が入ってくるだけではなく、弾みがついて受験生の間で人気になってくる。これは間違いない。どこの大学でも、経営戦略として喉から手が出るほどこのブランディング事業指定は欲しいのです。そこに上手に文科省の前局長はつけこんで、自分の息子を入れてくれと。これはない。呆れてしまう」
意外…きっかけは私大医学部の学費の値下げ!?
大学ジャーナリストの石渡嶺司氏による、一旦は下火になっていた裏口入学が再燃したきっかけが実は意外なことにあったと指摘した。それは2008年に順天堂大学が医学部の学費を値下げしたことだったという。順天堂大学は6年間の学費を2970万円から2090万円に下げ、これによって優秀な学生が集まるようになり偏差値も62.5(2017年度)から70(2019年度予想)にアップした。ほかの私立大学もこれに追随し医学部の学費を値下げ。すると偏差値もアップしたのだった。
石渡氏は
「医学部はもともと経営が赤字になりやすい体質がありました。しかも偏差値が上がり、人気が高まることで、一般家庭の受験生も入学するようになってきています。そこに、医者の子弟よりも一般家庭からの方が、寄付金が集まりにくいという事情があります。全部の医大が裏口入学をしているというわけではないのですけども、医大によっては、同窓会のリストなどを作って、どれくらいの寄付金が集まるかというのを考えることになります。また、政府からの補助金が下がっている傾向があります。そのため競争的な補助金というものが増えているんですけれども、それを東京医科大学としては何が何でも受諾したかったというのも、今回の事件につながったとみています」
と、今回の事件の背景を語った。
寄付金一口1000万円の私大も?
石渡:医学部の寄付金というのは10万、20万円という単位ではないですね。数百万円、場合によっては一口1000万円という大学もあります。
佐々木恭子:私立ですから、独自にどういう学生がほしいかを決める自由は、大学にあるわけですよね。
有本香(ジャーナリスト):補助金が入っているので私立とはいえ入試は「公正」でなくてはいけないと思います。しかし公平さというのは、私立という側面があると思うので、この学校に入って6年間学費を払い続けることができるか、というバックボーンを大学側が一つの判断基準として持っていたとしても、そこに文句は言えない。
寺脇研(元文部官僚・京都造形芸術大学教授):大学とは憲法で定められた学問の自由で、自治ですからね。
パトリック・ハーラン:アメリカでは寄付で学校に行く人も多いんですよ。僕の通ったハーバード大学もそう。そのために寄付額を多く募ろうとするんですね。そのために「レガシー枠」というものがある。同窓会の子供がちょっと入りやすくなる。同じような点数の受験生の場合、両親がOBだったらその子息を通す。その代り寄付金をより多くもらう。それで私のような貧しい子供が入れるようになるんです。それがオープンにされているんです。裏口入学なんてレッテルはなく「レガシー」なんてちょっとかっこよい響きになっているんですね。
割に合わない「医学部裏口入学」
石渡:医学部・歯学部の裏口入学は、私はもっとも割に合わないものだと思っています。医学部に入ったから必ず医者になれる、というものではなく、あくまでも国家試験の受験資格が得られるだけなんですね。しかも合格率もまじめに6年間勉強し続けても、ざっと1割は合格できないという難関試験です。さらに各大学は見た目の国家試験の合格率を上げるために受かりそうもない学生については容赦なく留年させる。それがざっと1割います。ですから勉強ができないまま入学してしまうと留年、ないしは卒業はできるけど国家試験には受からないという状態が続く。そういった意味では裏口入学は、割に合わない話ではないかと思います。
佐々木:これから入試も2020年に改革が行われる中で、どうやって公平性・フェアさを保っていけばいいのか。
寺脇:そこが大問題です。大問題なのに文部科学省の高官が、自分で裏口入学をやっちゃってるなんていったらね、今文科省が進めている大学入試改革の信頼性まで失われる。これはきちんと裁いてもらって真相を究明してもらいたい。2020年にセンター試験が廃止され、大学入試改革が行われようとしている矢先の文科省幹部による不正。国民はもっと怒ってもよいのではないだろうか?
(「報道プライムサンデー」7月22日放送分)
プライムニュース サンデー
見積の2倍・勝手に処分、遺品整理でトラブル
親族などが死亡した場合に所持品を処分する遺品整理サービスを巡り、料金や作業内容に関する契約トラブルが増えているとして、国民生活センターは19日、注意を呼びかけた。国民生活センターによると、「業者から見積金額の2倍の費用を請求された」「処分しないよう頼んだものを処分された」といった相談が毎年100件程度、全国の消費生活センターなどに寄せられている。今年度は6月末時点で31件と、例年を上回るペースという。遺品整理業者は全国に数百はあるとみられ、国民生活センターは「見積もりは複数の社から取り、事前に料金や具体的な作業内容の確認を」と呼びかけている。
2018/7/19(木) 20:01配信読売新聞
2018/7/19(木) 20:01配信読売新聞
2018年8月8日水曜日
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