2026年10月23日金曜日

株式分割(株式が分割)されると、どうなるの? 仕組みやメリット・デメリットを会社と投資家の目線から解説

 「株式の分割って何?」「株式が分割されると株価はどうなるの?」などと疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。株式分割とは発行済みの株式の総数を増やすために会社が株式を分割することで、会社と投資家、双方にとってメリットとデメリットがあります。うまくタイミングを押さえれば、今まで価格が高くて買えなかった株を購入できたり、株価上昇の波に乗ったりもできるでしょう。株式分割の仕組みや目的とともに、株式分割の一般的な流れ、メリット・デメリットを解説します。株式分割によって、どのような影響があるのか、理解しておきましょう。

〇株式が分割されると、どうなるの?

株式の分割とは、すでに発行している株を会社が分割し、総数を増やすことです。株の総数は変わっても、保有する資産の価値は同じです。例えば、1株2,000円の株を会社が2株に分割した場合、同時に1株の価格も分割されます。そのため「1株1,000円×2株=2,000円」となり株式全体の価値は変わりません。

〇株式を分割する目的とは?

会社が株式分割を行う目的は、主に以下の2つです。

1. 株式の流動性を高めるため

2. 証券取引所に上場するため

順に解説していきましょう。

1.株式の流動性を高めるため

1つ目の目的は、株を取引する市場の流動性を高めるためです。

株を分割すると、1株あたりの価格(株価)が下がります。株価が下がることにより、投資に回せる資金が少ない投資家でも株を購入できるようになるため、株式市場の流動性が高まることが期待できるのです。なお、東京証券取引所では、投資単位が50万円以上(株価5,000円以上)の企業に対して、株式分割を推奨しています。これには、投資単位を引き下げることで個人投資家が投資しやすい環境を整えるという狙いがあります。

2.証券取引所に上場するため

2つ目の目的は、証券取引所に上場するためです。

上場とは、会社が証券取引所に株式を公開することを指します。会社が上場するためには、証券取引所の審査に通過しなければなりません。上場すると、一般の人でも証券取引所で株式を購入できるようになります。

上場するためにはさまざまな基準が定められており、証券取引所によってその基準は異なります。例として、東京証券取引所で最も大きい市場であるプライム市場を見てみましょう。

株主数:800人以上

流通株式数:20000単位以上

流通株式時価総額:100億円以上

流通株式比率:35%以上

時価総額:250億円以上

流通株式数は20,000単位以上とされているため、その条件を満たすために株式分割を行う場合があります。

〇株式を分割する会社側のメリットとデメリット

会社が株式分割を行うにあたって、以下のようなメリットとデメリットがあります。

・メリット

「投資家層の拡大が期待できる」

1つ目のメリットとして、投資家層の拡大に期待できる点が挙げられます。株式分割を行うことで1株あたりの金額が下がり、今まで投資したくてもできなかった方が株を購入しやすくなるためです。投資家層が拡大すれば、株主数も拡大しやすくなります。結果として、市場の流動性の向上も期待できるでしょう。

「配当の代替手段にできる」

2つ目は、配当手段の代わりにできることです。株主への配当を増やしたい場合、1株あたりの配当を変えずに株式分割を行えば、株主は持っている株の価値はそのままで増配(配当を増やすこと)できます。例えば、100株保有している株式が2つに分割され200株になったとします。このとき1株の価値も分割されるため資産総額の価値は変わりませんが、配当の額が以前のままであれば株主は100株分の配当が増えることになります。会社は自社株の配当金増加を市場にアピールできるでしょう。

・デメリット

「株価の変動が大きくなる」

1つ目のデメリットは、株価の変動が大きくなりやすいことです。株式分割をすると市場で売買しやすくなるため短期的な取引を行う投資家が増える可能性があります。短期的な利益を追求する投資家が増えると、短期間で急激に価格が上昇・下落するなど、株価が不安定になるリスクがあります。

「株主数の増加による管理の負担が増える」

2つ目は、株主の管理に関する手間が増えることです。会社は、株主を管理するために以下のような業務を行わなければなりません。

株主名簿の作成:株主を把握するため、氏名、住所、保有株式数などを正確に記載。

配当金の分配:配当金が決定したら、株主への利益分配が必要。

反社チェック:反社会的勢力から資金提供を受けると会社の社会的信用が大きく損なわれるため、株主に対しても反社チェックが必要。

株主が増えることで会社は1人あたりに対してさまざまな手間がかかるため、負担が増えます。

〇株式を分割する投資家側のメリットとデメリット

続いて、株式が分割されることによる投資家側のメリットとデメリットを解説します。

・メリット

「株の取引がしやすくなる」

1つ目は、株取引に対するハードルが下がる点です。株式分割が行われると1株の値段が下がるため、株を買いやすくなります。例えば、1株1,000円の場合、100株単位で買うと10万円が必要です。この株が「1:2」で分割(1株を2株に分割)されると、1株の値段は500円になり、100株を5万円で購入できます。結果として、資金に余裕のない投資家でも株の取引がしやすくなるでしょう。

「金融資産の組み合わせ(ポートフォリオ)を多様化できる」

2つ目は、さまざまな株式を購入できる可能性が高まり、金融資産の組み合わせ(ポートフォリオ)を多様化できる点です。1株あたりの価格が高いと、購入できる株が限られるため、予算内で購入できる金融資産が限定されます。株式が分割されて1株あたりの価格が下がれば購入しやすくなるため、金融資産の組み合わせの選択肢が増えます。

「配当金が増える」

3つ目として、配当金の増加が挙げられます。株式の分割がされると、1株あたりの配当金も同様に減るのが一般的です。しかし、株主に還元することが目的の場合、配当金が変わらないことがあります。例えば、100株保有している株式が2つに分割されると200株になります。このとき1株の価値も分割されるため、資産の総額は変わりませんが、配当の額は据え置かれる場合があります。すると株主は何もせずとも、100株分の増配を得ることができるのです。配当金の割合が同じであれば、株主は何もしなくても所有する株式が増えるため、結果として配当金が増えることになるのです。

・デメリット

「取引所で売買できない株(単元未満株)が発生する」

1つ目のデメリットは、取引所で売買できない株(単元未満株)が発生する可能性があることです。例えば、100株保有していた株式が「1:1.1」の割合で分割されると、110株になります。株式は通常、売買できる単位が100株からと定められているため、端数の10株については取引所で売買できません。端数の株は1単元に満たないため「単元未満株」と呼ばれます。単元未満株を売却したい場合は、株を発行した会社に買い取り請求をする必要があります。

「株価が安定しなくなる」

2つ目のデメリットは、株価が安定しなくなることです。株の流動性が上がって市場の動きが活発になると、株価の値動きも激しくなる可能性があります。売買のタイミングを見極めるのが難しいと感じ、不安になることもあるでしょう。

〇株式分割にはメリットとデメリットがある

株式分割を行うことで、会社は資金提供をより受けやすくなり、株主数を増やす可能性がある一方、リスクも存在します。また、投資する方にとっては、株価が下がるため購入しやすくなるのがメリットです。多くの種類の株を購入することで、株価の急な下落に伴うリスクを軽減できるでしょう。さまざまなメリットとデメリットがあるため、状況に応じて使い分けることが大切です。株式分割されることで、今まで手が出なかった株が購入できるようになるかもしれません。興味がある会社の株が株式分割を行う予定がないか、情報をチェックしておくといいでしょう。


2026年9月9日水曜日

証券担保ローンとは?メリット・デメリット、効果的な活用シーンを紹介

 数年前に副業を始めるにあたってネットバンクの口座が必要になって(別にネットバンクの口座がなくても副業はできるのだが、手数料等の都合で便利なので口座開設をした)口座開設を行い、2年位前にネット証券の口座を開設しNISAなどの取引を少しずつ行い始めました。そうすると最近になってネットバンクの方から「証券担保ローンはどうですか」というメールが届くようになったため、証券担保ローンについていろいろ開設したいと思い、書くことにしました。

〇証券担保ローンとは

証券担保ローンは、保有している有価証券(株式、債券、投資信託など)を担保にして資金を借り入れるローンです。担保にした有価証券の時価評価額に応じて、借りられる金額が決まります。証券担保ローンの借入額は、「有価証券の時価評価額の50%?70%」のように一定割合に設定されていることが一般的です。有価証券の時価評価額が下落した場合、追加の担保を要求されたり、返済を求められたりすることがあります。証券担保ローンの担保に利用できる有価証券の種類には、国内上場株式や外国株式、米国国債などがあります。金融機関によって担保として受け入れられる有価証券の種類が異なるため、金融機関のWEBサイトで確認しましょう。

〇証券担保ローンのメリット

証券担保ローンには、以下のようなメリットがあります。

・有価証券を売却せずに資金を調達できる

証券担保ローンは、保有している株式や債券などを売却せず、それを担保として資金を借り入れることができます。有価証券の時価評価額が将来上昇することを期待して保持しながら、現金が必要な際に資金を調達することが可能です。また、証券担保ローンを借り入れている間も、担保にしている有価証券からの配当金や利息・利子、株主優待を引き続き受け取れます。

・有価証券の時価評価額によっては高額の融資が受けられる

カードローンなどの金融商品では、収入によって借りられる金額の上限が決まっている場合があります。しかし証券担保ローンは、有価証券に高い評価額を得られれば、その評価額に応じた融資が受けられます。場合によっては、高額の融資が受けられる可能性があるといえるでしょう。

・柔軟な資金使途に使える

証券担保ローンで借り入れた資金の使い道は原則自由です(一部自社商品の購入等に制限を設けている金融機関があります)。投資資金や生活費、ビジネス資金などさまざまな資金使途に利用できます。ブライダルローンや医療ローンといった目的別ローンは、結婚資金や医療費など特定の資金使途でしか利用できません。しかし、証券担保ローンであれば別の投資や運用に充てることも可能です。

・カードローンと比べて金利が低い

証券担保ローンはカードローンと比べて金利が低い傾向があります。金融機関によって違いはありますが、1?4%台である場合がほとんどのようです。カードローンの場合、金融機関や借入額によって異なりますが、金利が15%前後になることも珍しくありません。証券担保ローンは金利が低い傾向にあるため、支払総額を抑えやすいというメリットがあります。

〇証券担保ローンのデメリット

証券担保ローンには、以下のようなデメリットがある点に注意しましょう

・証券価格が下がると追加担保の差し入れを求められる

証券担保ローンには、担保不足のリスクがあります。担保不足とは、担保にしている有価証券の時価評価額が、融資残高に対して一定の割合を下回る状態のことです。有価証券の時価評価額が下落して担保としての価値が下がると、一部または全部の出金、株式の振替ができなくなる可能性があります。さらに時価評価額が下がった場合は、追加担保の差入れまたは借入額の一部返済が必要です。

・価値が暴落すると強制的に売却され返済に充てられる

担保にしている有価証券の時価評価額が下がり続けると、金融機関が有価証券を強制的に売却してローンの返済に充てることがあります。担保の追加差し入れでは賄えない激しい暴落の場合は、強制的に売却される可能性があるため注意が必要です。強制的に売却された場合、計画していないタイミングで有価証券を売却することになります。証券担保ローンを借り入れる際は、有価証券の時価評価額の変動によって強制売却のリスクがあることを理解したうえで申し込みましょう。

・借入可能額の制約がある

証券担保ローンは高額な融資を受けられる可能性はあるものの、有価証券の種類によっては借入可能額の制約が設けられています。例えば、「この有価証券は何%」のように、あらかじめ有価証券の時価評価額に対する借入可能額の割合が決められている場合があります。条件は金融機関によってさまざまです。有価証券の種類や金融機関が定める条件によっては、十分な資金を借り入れられないかもしれません。証券担保ローンを申し込む前に、金融機関ごとに条件を確認しましょう。

〇証券担保ローンの活用シーン

証券担保ローンの活用術や利用シーンは、個人の資産運用や資金ニーズに応じてさまざまです。ここでは、具体的な活用方法や利用シーンを説明します。

・急な資金ニーズに利用する

突然の出費や緊急の資金ニーズが生じた場合、証券担保ローンを活用すれば有価証券を売却せずにスムーズに現金を調達できます。資産を保持しつつ、必要な資金を得られるのがメリットです所得税や固定資産税、子どもの学費や冠婚葬祭の資金など、まとまった資金が必要となった場合に利用できます。

・追加投資のための資金調達に使う

有望な投資案件や急な株式購入の機会に対応するために、保有している有価証券を担保に資金を調達し、さらに投資を行うという方法です。これにより、手元資金を効率的に活用できます。証券担保ローンを利用して追加資金を調達し、その資金をほかの投資に充てることで投資のレバレッジ効果を高めることができます。

・リスク管理に使う

証券担保ローンは、資産運用におけるリスク管理に使うという方法もあります。有価証券の売却による資産配分の変更を避けたい場合、証券担保ローンを利用して現金を調達し、ほかの資産運用行うことが可能です。有価証券の価格が下落してもすぐに売却したくない場合、証券担保ローンを利用すれば一時的に資金を得られる可能性があります。相場が回復するまで待って運用するのもひとつの方法です。

・税務上の利益確定の繰り延べに使う

証券を売却すると、譲渡益に対して所得税が発生します。しかし、証券担保ローンを利用すれば、資産を売却せずに資金を得ることが可能です。税務上の利益確定を繰り延べできます。

〇証券担保ローンの利用の流れ

ここでは、証券担保ローンを利用する際の一般的な流れを説明します。

1. 金融機関を選ぶ

まずは証券担保ローンを提供している金融機関を選びます。金融機関の条件を比較して、自分に合ったものを選びましょう。

2. 申し込み

借入額や有価証券の詳細を記入した申込書を提出し、必要書類を揃えます。金融機関のWEBサイトで必要な書類を確認しましょう。

3. 審査

金融機関が、有価証券の時価評価額や申込者の返済能力を審査します。

4. 契約

金融機関からの審査結果を待ちます。審査が通れば契約書に署名し、有価証券に担保権を設定します。

5. 資金の受け取り

契約が完了すると、借入金が口座に振り込まれます。

6. 返済

計画に従って返済を進め、完済すると担保が解除されます。

融資が実行されるまでは、数日?1週間ほどかかることが一般的です。

〇証券担保ローンの選び方

証券担保ローンはさまざまな金融機関が提供しているため、「どうやって選ぶべきか」と悩む方もいるかもしれません。ここでは、証券担保ローンの選び方の例を紹介します。

・担保にできる有価証券の種類

証券担保ローンは、金融機関によって担保として受け入れる有価証券の種類が異なります。「自分が保有している有価証券を担保にできるか」を確認するとよいでしょう。株式や債券、投資信託などさまざまな証券を担保にできる金融機関を選ぶと、担保とする対象の選択肢が増えます。

・借入可能額の大きさ

証券担保ローンでは、担保とする有価証券の時価評価額に対する借入可能額の割合が決まっています。一般的な借入可能額の割合は、有価証券の時価評価額の50%~80%です。高い借入可能額の割合を提供する金融機関を選ぶと、必要な資金を効率的に借りられます。証券担保ローンを借り入れる際は、借入可能額の上限額も確認しましょう。証券担保ローンによってさまざまですが、数十万円?数億円まで借りられることが多いです。ローンを借り入れる際は、自分の資金ニーズに合った金額を提供しているかを確認することが大切です。借り入れられる金額が少ない場合は、ほかの金融機関も検討してみましょう。

・金利の低さ

証券担保ローンを借り入れる際は、金利を確認しましょう。複数の金融機関の金利を比較し、できるだけ低い金利で借りられるところを選ぶのがおすすめです。金利の平均はおおよそ1%?4%です。金利が低いほうが、支払総額を抑えやすくなります。

〇証券担保ローン以外での資金調達手段

借り入れの手段には、証券担保ローン以外にもさまざまな手段があります。ローンの種類によって資金使途や特徴が異なるため、自分に合った手段を選ぶことが大切です。

・ビジネスローン

ビジネスローンは、事業者向けに提供されるローンです。事業の運転資金や設備投資などに利用されます。証券担保ローンや不動産担保ローンとは違って、担保が不要であることが一般的です。一方で金利が3?15%程度と高めであるという特徴があります。

・不動産担保ローン

不動産担保ローンは、不動産を担保にして資金を借りるローンです。個人でも法人でも利用でき、不動産の評価額に応じて大きな資金を調達することが可能です。担保があるため、金利は低めに設定されていることが多いです。一般的に資金使途の制限はなく、使い道は自由です。

・カードローン(消費者金融・信販系カードローン等)

カードローンは個人向けの無担保ローンで、借入可能額の範囲内で繰り返し借り入れができる便利なローンです。担保がなく、手軽に利用できる一方で、金利は高めに設定されています。資金使途の制限は設けられていないため、使い道は自由です。


理由は何であれ借金であることには変わりがないので絶対に借りないようにしましょうね。僕自身銀行の預金に対して結構な金額の利息を受け取っています。この受取金利は誰が払っているのかという事についてきっちり考えましょうね。




証券金融会社

 証券金融会社とは、信用取引の決済に必要な資金または株式を金融商品取引所(証券取引所)の正会員等となっている証券会社に貸し付けたり、証券会社が公社債の引受・売買に伴って必要とする短期の保有資金を貸し付けたり、個人・法人に対して有価証券を担保に資金を貸し付けたりすることなどを業務にする会社のことである。

〇根拠法

根拠法は貸金業法ではなく、金融商品取引法156条の24による免許制となっており、資本金1億円以上の株式会社で一定の要件を満たすものが免許を受けることができる。

〇業者

2017年現在、日本証券金融(日証金)のみが現存する。1950年から全国9つの証券取引所所在地にそれぞれ証券金融会社が設立されたが、1955年の証券取引法改正を機に各地の証券金融会社が統合され、日証金、中証金、大証金の3社に集約された。その後、東京証券取引所グループと大阪証券取引所の統合に伴い2013年7月に大阪証券金融(大証金)が日証金に吸収合併された。2017年には中部証券金融(中証金)が自主廃業を決定し、日証金が業務を継承した。


40年間、相続税も所得税も「二重取り」していた…最高裁がNOを突きつけ、160億円を還付させた"国税の盲点"

 相続で得た財産には相続税がかかる。では、その財産を年金として受け取ったら、所得税もかかるのか。この問題が争点となった重要な裁判がある。青山学院大学教授で税法を専門とする木山泰嗣さんの著書『[新版]分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社新書)より、一部を紹介する――。

■給料から引かれる税金はだれの税金なのか

本書では、個人が得た所得に課せられるのが「所得税」で、法人が得た所得に課せられるのが「法人税」だという説明をしてきました。ただし所得税法は、法人が納税義務を負う場合として源泉所得税を定めています。源泉所得税については、法人でも納税義務を負います。これは所得税法に規定があるからでした。といっても法人が負うのはあくまで、従業員などへの支払いの際に源泉所得税を徴収して納める義務です。本来の納税義務は、あくまで法人から給与などの支払いを受けた従業員など(個人)が負っています。法人は従業員などに給料などを支払っただけですので、そもそも法人は何も所得を得ていません。したがって法人が得た所得に対する課税ではないのです。ここに「相続税はどうなんだ?」という視点を入れると、話が少し複雑になります。相続税は、「相続税法」という法律に定められています。単純にいえば、人の死亡(相続)によって、相続人が取得した財産について課税をするのが相続税ということになります。民法には、「相続は、死亡によって開始する」とあり(民法882条)、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定されています(民法896条本文)。そして、相続税法2条1項は、相続税の課税財産の範囲について、次のように定めています。

■遺産じゃないのに課せられるお金

【相続税法2条(相続税の課税財産の範囲)】

第1条の3第1号又は第2号の規定に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する。

「第1条の3第1号……の規定に該当する者」というのは、相続税の納税義務を負う人(相続税の納税義務者)のことで、相続税法1条の3第1号には「相続又は遺贈……により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの」と規定されています。その者は、「個人」です(同号イ及びロの各かっこ書き)。要するに、相続によって(そのときに日本に住所がある)「個人」が得た「財産」に対して、相続税は課されるわけです。もっとも、相続税法には「みなし相続財産」という規定もあります。

民法でいう「相続財産」にはあたらず、相続人の間で遺産分割の対象にはならない財産であっても、相続によって得た財産で「みなし相続財産」とされているものについては、相続税が課されるのです(相続税法3条)。「みなし相続財産」の具体例には、被相続人の死亡により、生命保険契約に基づき、「受取人」である相続人が保険会社から保険金の支払いを受ける場合で、保険料を被相続人が払い込んでいたときなどがあります(相続税法3条1項1号)。

■タダで得た財産に所得税がかからないルール

生命保険金は受取人として指定された者に支払われるもので、民法上の「相続財産」ではなく、遺産分割の対象ではありません。しかし相続税法では、相続によって得た財産ではあるので、保険料を被相続人が負担していた場合、相続税が課税される財産とみなすのです。いずれにしても、相続開始によって個人が得た財産に対しては、「相続税」が課されるわけですが、この話は、何かと重なる気がしないでしょうか。そうです。本書がテーマにしている「所得税」です。所得税は、個人が得た所得に対して課されるもので、相続税は、個人が相続で得た財産に課されるものです。「所得」か「相続で得た財産」か、という違いはありますが、どちらも「個人」が得た所得に対して課されるという点では同じです。また、所得は「あらたに流入した経済的価値」で、その理由や原因は問わないものでした(包括的所得概念)。そうすると、相続開始という利得を得た理由や原因は考慮せず、単にタダで「財産を得た」という点だけでみると、これは所得税が課税の対象にしている「所得」にもあたるはずです。そうすると、相続によって財産を得た相続人には「相続税」が課され、さらに「所得税」も課される、というのが論理的であるはずです。しかし、現実にはそうはなっていません。所得税は課されず、相続税だけが課されるのです。その理由は、所得税法の9条1項17号に非課税規定があるからです。

■税金の二重払いを防ぐための特例

【所得税法9条(非課税所得)】

次に掲げる所得については、所得税を課さない。(略) 一七 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含み、同法第二十一条の三第一項第一号(贈与税の非課税財産)に規定する公益信託から給付を受けた財産に該当するものを除く。

このように、「相続……により取得するもの」(相続財産)および「相続税法……の規定により相続……により取得したものとみなされるもの」(みなし相続財産)については、「所得税を課さない」ことが、所得税法の非課税規定のなかで明らかにされているのです。逆にいえば、この非課税規定が存在しなければ、「相続財産」にも「みなし相続財産」にも、相続税が課されたうえで、さらに所得税も課される、ということになるのです。しかし、それでは、同じ原因によって得た同じ財産に対して2つの税金をかけることになります。これでは「二重に税金が課される」ことになり、納税者に酷(こく)な結果となってしまいます。国民の理解も得られないでしょう。こうして、相続税と所得税の「二重課税」を防止するために、所得税法の9条1項17号は規定されたものだと理解されています。なお、個人が個人から贈与を受けると贈与税が課されますが、これについても所得税の二重課税が起きないよう、この条文は手当てをしています。「個人からの贈与により取得するもの」の部分です。

■実際にあった保険がきっかけの二重課税裁判

この規定の適用をめぐり、2010年(平成22年)に、新聞などのニュースで報道された最高裁判決があります。それは「長崎年金訴訟」「年金二重課税事件」「生保年金事件」などと呼ばれている事件です。この事件の概要は次のとおりです。保険会社が約40年以上前から扱っていた生命保険で、年金の特約がついた商品(年金特約付き生命保険)がありました。被保険者が死亡したときに、受取人は生命保険金(4000万円)を受け取ることができます(ここまでは通常の生命保険と同じです)。それに加えて、特約部分がありました。受取人の選択により、相続が発生した年から毎年230万円というかたちで、10年にわたり年金を保険会社からもらえる特約がついていたのです(「選択により」と書きましたが、年金部分を一括でもらうこともできるプランでした。一括払いの場合は、年金総額2300万円ではなく、予定利率で割り引いた2000万円でした。こちらを選択した場合、4000万円の保険金と2000万円に相続税が課されるだけで、所得税は課されません)。

■40年にわたる国税の勘違いを正した最高裁

これについて、国税当局は、相続開始によって年金を受給できる権利(年金受給権)に対しては(みなし相続財産として)「相続税」が課され(230万円×10年×60%=1380万円部分)、相続が発生した年から毎年もらう年金(毎年230万円)についても、それぞれ雑所得として「所得税」が課されるという考えをとっていました。そして現実に、過去40年にわたり、そのような取扱いがされていたのです(実際には、当時の所得税法207条の規定に基づき、保険会社が年金を支払う際に源泉徴収をしていました)。しかし、最高裁判所は、年金受給権と最初に受け取る年金については、同じ経済的価値に対して「相続税」と「所得税」をダブルで課す「二重課税」にあたると考えました。相続税と所得税の二重課税を排除した所得税法9条1項17号(当時15号)の規定は、「経済的価値」が「同一」といえる場合の二重課税を排除した趣旨だと解釈したためです(最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決・民集64巻5号1277頁)。

■相続した年金に税金をかける問題点

「所得税法9条1項は、その柱書きにおいて『次に掲げる所得については、所得税を課さない。』と規定し、その15号において『相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)』を掲げている。同項柱書きの規定によれば、同号にいう『相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの』とは、相続等により取得し又は取得したものとみなされる財産そのものを指すのではなく、当該財産の取得によりその者に帰属する所得を指すものと解される。そして、当該財産の取得によりその者に帰属する所得とは、当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値にほかならず、これは相続税又は贈与税の課税対象となるものであるから、同号の趣旨は、相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして、同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものであると解される。」原審(げんしん)の福岡高裁は、二重課税かどうかは「法的にみるべきだ」と考え、年金受給権という権利と個別の年金は法的には別のものだから「二重課税ではない」という国(国税当局)の見解を支持しました(福岡高裁平成19年10月25日判決・訟務月報54巻9号2090頁)。

■還付された総額は約160億円

還付された総額は、2012年3月末で約160億円にのぼったと報道されています(2012年6月3日付け毎日新聞)。この判断は、最高裁判所が、法律(所得税法)の解釈を徹底させ、国税当局の取扱いについてNOを突きつけたものとして、話題を呼びました。この記事では、所得税の基本について、実務上の取扱いを解説するものではなく、所得税法という法律の考え方から解説をするスタンスをとっています。そのため、理論的なことや抽象的な概念もでてきますが、それはとても重要なことなのです。なぜかというと、課税実務が「所得税法」に照らして間違っていれば、それは最終的には裁判所で正されるべきものだからです。その点からも、所得税を所得税法という法の枠組みから学ぶことには、大きな意味があるといえます。

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木山 泰嗣(きやま・ひろつぐ)

青山学院大学法学部教授

1974年、神奈川県横浜市生まれ。青山学院大学法学部教授(税法)、同大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻主任。鳥飼総合法律事務所客員弁護士。2011年に『税務訴訟の法律実務』(弘文堂)で、第34回日税研究賞(奨励賞)受賞。主な著書に、『ゼロからわかる日本の所得税制』『弁護士が教える分かりやすい「民法」の授業』、『弁護士が教える分かりやすい「所得税法」の授業』(いずれも光文社新書)など。

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(青山学院大学法学部教授 木山 泰嗣)


プレジデントオンライン / 2026年9月7日 8時15分



2026年8月19日水曜日

住民税の「一律10%」って本当?均等割と所得割の仕組みをすっきり解説

 所得税は所得が増えるほど税率も高くなる「累進課税」が採用されています。一方で、「住民税は一律10%」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。住民税は「所得割」と「均等割」という2つの仕組みで構成されており、所得に応じて負担する部分と、一定額を負担する部分があります。今回は、住民税の基本的な仕組みを分かりやすく解説します。

〇住民税にかかる均等割、所得割とは?

個人住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。所得とは、給与収入から給与所得控除を差し引いた給与所得や、事業収入から必要経費を差し引いた事業所得などを合計した金額をいいます。さらに、社会保険料控除や扶養控除、基礎控除などの所得控除を差し引いた金額が課税所得です。住民税の所得割の税率は課税所得に対して原則10%(都道府県民税4%、市町村民税6%)で、前年の1月1日から12月31日までの所得を基に算定されます。ただし、政令指定都市に住所がある場合は、都道府県民税が2%、市町村民税が8%になります。また、これらの基準を踏まえながらも、各自治体は条例により異なる税率を設定している場合もあるため、詳しくは自分が住んでいる自治体に確認することをお勧めします。よくいわれる「住民税は一律10%」という表現は、所得割の標準税率を指したものです。一方の均等割は、個人住民税が「地域社会の会費」的な性格を持つことを反映した仕組みで、所得にかかわらず定額の負担を求めるものです。均等割の標準的な金額は4000円(都道府県民税が1000円、市町村民税が3000円)とされています。さらに、2024年度から、個人住民税均等割とあわせて、森林環境税(国税)が1000円徴収されています。これは国土の保全、水源の維持、地球温暖化の防止、生物多様性の保全など、森林の整備に必要な費用を確保するためのものです。これにより、均等割と森林環境税をあわせた標準的な負担額は、合計年間5000円となります。ただし、各自治体は自らの判断で税率や税額を決定しているため、自治体によって金額が異なる場合もあります。

〇まとめ

よくいわれる「住民税は一律10%」とは、所得割の標準税率を指しています。住民税には、所得割に加えて、均等割(標準4000円)と森林環境税(1000円)も含まれます。給与明細や住民税決定通知書を見るときは、税額だけでなく内訳にも目を向けてみると、住民税の仕組みをより正確に理解できるでしょう。

文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)

会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。


2026年7月4日土曜日

退職金の運用について

 たまに「退職金ってどう運用したらいいですか」という話を聞くことがあります。この「退職金の運用方法」について個人的意見を書かせてもらいます。これはあくまでも個人的意見と判断してくださいね。

〇退職金だから特別な運用方法があるわけではない

退職金だから特別な運用方法がある訳ではないという事が個人的意見です。「退職金という大金を手にしたから」といって運用に回さなければいけないという事ではない。逆に「退職金ってどう運用したらいいですか」と聞いてくる人は悪い意味でカモになりやすいので気を付けた方がいい。こういう質問をしている人は金融うリテラシーが低い可能性があるので積極的な投資はやめた方がいい。もし住宅ローンを含む借金があるならさっさと払い終えて金利を取られる生活を終了させることをした方がいい。それと退職をしたら給料という定期的な収入がなくなるので生活縮小をすることもしておいた方がいい。当然サブすくなどを解約して無駄な金銭的支出を減らすことも当然だ。

〇自分のメインバンクで運用しない

「自分のメインバンク(給料や退職金の振り込まれる銀行)」で運用することはやめよう。なぜならいつに退職金やボーナスや給料が振り込まれることがすべて筒抜けなので運用はやめた方がいい。

〇退職した翌年に住民税の請求がどかんと来ることを覚えておこう

住民税とは昨年の所得をもとに請求が来るため、退職した翌年に住民税が請求されるのでちゃんと退職金のお金を残しておこう。

〇僕の個人的意見

退職金だからと言って特別な運用法う方がある訳ではない。どのように運用していいのかわからないなら住宅ローンなどの負債を退職金で清算し住民税を払い終わるまで普通預金に入金しておき、その後円建ての定期預金などで運用するという方法をとることがいいのではないか。確かに昔に比べて金利は安いが安全である可能性が高いのでそうしたほうがいい。間違っても銀行や証券会社から勧誘を受けて「手数料等が高い金融商品を買わされないようにする」ことが重要です。外貨預金も手数料や為替レートの兼ね合いであまりお勧めしません。



これ、会社にだまされた? 求人では「ボーナス5カ月分」だったのに夏ボーナスが「2カ月分」しかないワケ

 転職やキャリアに関する悩みや疑問に、ひとつ上を目指す人の転職サイト『type』編集長の三ツ橋りさが回答します。今回のテーマは「ボーナスの支給額」についてです。

(質問)

求人に「ボーナス5カ月分」とあったのに、夏は2カ月分しか支給されませんでした。会社にだまされたのでしょうか?

(回答)

求人情報で見ていた条件と、実際に支給された金額に大きな開きがあると、裏切られたような気持ちになりますよね。ですが、一概に会社がうそをついたとは言い切れない、賞与特有の複雑な仕組みが背景にあるかもしれません。まずは現状を冷静に整理し、これからの向き合い方を一緒に考えていきましょう。詳しくは以下で解説します。

〇求人票に書かれた「○カ月分」の仕組み

求人票に「賞与5カ月分」と記載されていると、「1回の支給で基本給の5カ月分がもらえる」と誤解してしまうケースは少なくありません。しかし、多くの企業において、この表記は「年間(夏と冬など)の合計支給実績」を指しています。つまり、夏に2カ月分、冬に3カ月分を支給して、トータルで5カ月分になるという設計です。そのため、今回の「夏が2カ月分だった」という状況は、冬に残りが出れば求人票の記載通りになる可能性があり、これだけで会社にだまされたと決めつけるのは少し早いかもしれません。また、転職して間もない時期のボーナスには「在籍期間の壁」も存在します。賞与には通常、成果を評価するための査定期間が設けられており、その期間に在籍していなかった場合は支給対象外になったり、あるいは「寸志(ボーナスの代わりとして支給される、数万円程度の一時金)」として数万円程度の支給にとどまったりすることもあります。初年度は満額にならないことが多いという賞与の仕組みを知っておくだけでも、会社に対する見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。

〇求人票の「ボーナス○カ月分」をうのみにしない! 入社後のギャップを防ぐ正しい見極め方

入社後に「思っていたのと違う」という事態を避けるためには、求人票に書かれた数字だけでなく、その背景にある表現を丁寧に確認することが重要です。

▼1. 「実績」か「基準」かを確認する

まず注目すべきは、提示されている数字が「前年度の実績」であるか、それとも「一律の基準」であるかという点です。賞与が「前年度実績」に基づいている場合、それは企業の業績に応じて変動する可能性があることを意味します。業績が悪化すれば支給月数が減少することもあるため、求人票の数字はあくまで過去の参考値であり、今後の支給を確約するものではないと理解しておく必要があります。

▼2. 算出の「ベースとなる金額」を把握する

次に、「○カ月分」という計算の元になる金額が何かを確認しましょう。一般的には諸手当を除いた「基本給」がベースとなりますが、まれに「総支給額」を基準とする企業も存在します。基本給が低く設定されている職場では、たとえ「5カ月分」という高い月数が記載されていても、実際の受取額が期待を下回る可能性があります。表記された数字の裏にある、給与の内訳まで読み解くことが、納得感のある転職へとつながります。

〇今の会社との関係を壊さずに確認する方法とは?

もし今の会社で「やはり計算が合わない」「査定のルールに納得がいかない」と感じる場合は、感情的に不満をぶつけるのではなく、まずは会社の制度を正しく理解するためのコミュニケーションを心掛けましょう。事前に「今後の目標や評価についてご相談したいです」と伝えて、1on1など落ち着いて話せる場を用意するのがスマートです。面談の場では、まずは支給されたボーナスへの感謝を述べた上で、「今後の目標設定のためにルールを知っておきたい」という前向きなスタンスを示すことで、上司も「会社の仕組み」として冷静に説明しやすくなります。

上司への切り出し方(例):

「今後の目標設定のために賞与の仕組みを正しく理解しておきたいです。求人票に記載されていた年間実績と、今回の支給額のバランスについて、どのような算出ルールになっているか教えていただけますでしょうか?」

仕組みについて説明してもらった後は、「次回に向けて私はどのような成果や役割を求められていますか?」とアドバイスを仰ぐのがベストです。制度の確認だけでなく、評価向上への意欲を示すことで、上司に前向きな印象を与えられるでしょう。

〇次の転職で後悔しない! 入社前に確認すべきチェックリスト

もし、今後のキャリアの中で転職を検討することがあれば、入社を決める前の「意思決定の段階」で賞与についての確認を行いましょう。求人票の文字情報だけに頼らず、以下の項目を確認しましょう。

▼その1:内定時の書類(労働条件通知書)をチェックする

内定通知書や労働条件通知書を受け取る段階で、賞与の具体的な算出基準(基本給ベースなのかなど)や、過去の平均支給実績についての詳細な記載があるかを確認しましょう。「賞与あり」とだけ書かれている場合は、その詳しい内容を人事担当者に確認することをおすすめします。

■確認すべきチェックポイント:

・賞与の算出基準が「基本給」になっているか(手当は除外されているか)

・書面に賞与の計算方法や過去の平均支給月数が明記されているか

・「賞与あり」の具体的な条件や上限額などの記載があるか

▼その2:入社1年目の「支給対象期間」を確認する

特に賞与の金額やタイミングを重視する場合は、入社を決める前に「査定期間」と「支給時期」のズレを考慮したルールを確認しておくことが重要です。入社直後は満額支給の対象外になるケースが多いため、以下の点を確認してみましょう。

■確認すべきチェックポイント:

・初年度の夏・冬は、査定期間の兼ね合いから支給対象になるか

・中途入社者向けに、在籍期間に応じた日割りや月割りでの計算ルールはあるか

・支給対象外の場合、代わりとなる「寸志」などの一時金制度はあるか

▼その3:面接やエージェント経由で「角を立てずに逆質問」する

面接の場で直接「ボーナスはいくらもらえますか?」と聞くと、給与ばかりを気にしている印象を与えてしまうリスクがあります。その場合は、聞き方を工夫するか、転職エージェントを挟んで確認してもらうのがスマートです。

角を立てない逆質問の例:「御社で早期に貢献できるよう努めていきたいと考えております。中途入社者の方々の、初年度の評価期間や賞与の仕組みについて、目安となるルールがございましたらご教示いただけますでしょうか」

〇納得のいくキャリアを築くために

ボーナスは単なる給料の一部ではなく、あなたの日々の努力や成果が正しく評価された証しでもあります。だからこそ、そこに疑問や不満を抱えたままにせず、会社の仕組みを正しく知ること、そして上司と前向きな対話を重ねることが大切です。もし、今の職場でどうしても納得のいく解決が難しいと感じたり、自分の努力が正当に評価されないと感じたりした時には、次の転職活動で事前の確認対策を徹底し、ミスマッチのない環境を選ぶことも選択肢になります。納得感を持って自分らしく働けるキャリアを、一緒に1歩ずつ目指していきましょう。