2020年9月1日火曜日

「山口組」分裂5年相次ぐ銃撃、抗争激化警戒区域は10府県に

日本最大の暴力団山口組(神戸市灘区)から神戸山口組(同市中央区)が分裂して27日で5年になる。昨年以降、兵庫県内で自動小銃を使った殺人事件が起きるなど抗争は急速に激化。各地の公安委員会が両組織を「特定抗争指定暴力団」に指定し、厳しい規制に乗り出した。神戸山口組にさらなる離脱騒動が浮上し、山口組の優勢が鮮明になっているが、対立の構図は変わらず、抗争の火だねがくすぶり続けている。

■銃弾計23発

尼崎市の繁華街の路面に今も弾痕が残る。昨年11月27日夕、神戸山口組幹部が自動小銃で連射され、死亡した。逮捕された元山口組系組員の男は別の幹部も襲う計画だったという。この年、抗争事件は神戸市で相次いだ。8月、山口組系組員が同市中央区の住宅街で銃撃されて重傷を負い、10月には逆に、神戸山口組系組員2人が同区の路上で射殺された。県内の3事件で撃たれた銃弾は計23発に上る。3年前には、神戸山口組から離脱した絆会(旧・任侠山口組)の組員が同市長田区の路上で射殺され、神戸山口組系組員の男が殺人容疑で指名手配された。いずれも人々が行き交う時間帯に発生した。

■総本部に人けなく

兵庫県公安委員会などは今年1月、暴力団対策法に基づき、両組織を特定抗争指定暴力団にした。神戸、尼崎を含む6府県10市を「警戒区域」に指定。同区域内での組員の集合や事務所の立ち入りを禁じ、活動の封じこめを図る。その区域内にある山口組総本部は毎月、全国から主要幹部が集う組織力の象徴だったが、今は庭木が無造作に伸び、郵便物がたまった状態。神戸・三宮の繁華街では「暴力団組員を見かけない」との声も聞かれ、規制が組の活動に変化をもたらしている。ただ、警戒区域外で事件が起きている。5月に岡山市で、神戸山口組系組員が襲われる銃撃事件があった。その後、警戒区域は10府県16市に拡大。捜査幹部は「今後も事件が起これば、警戒区域の指定範囲は広がる」とみる。

■続く対立の構図

抗争が増えた背景には、資金力や構成員数で上回る山口組の攻勢があるとされる。「神戸山口組勢に対し、説得による組員の引き抜きと、銃撃による圧力という『アメとムチ』を使い分けている」と捜査員。実際、神戸山口組から山口組に移籍する組員は後を絶たない。関係者によると、今年7月から、神戸山口組の結成を主導した中核団体「山健組」(神戸市中央区)が、離脱する動きが表面化。複数の直系団体の脱退や神戸山口組幹部の引退の情報も飛び交う。しかし、山健組、神戸山口組とも「反山口組」の姿勢は崩していない。県警幹部は「神戸山口組の存在を認めていない山口組には、攻勢を緩める理由がない。抗争終結の兆しは見えない」と話す。 【山口組の分裂】2015年8月27日、山健組(神戸市中央区)など一部の直系団体が離脱し、神戸山口組を結成。離脱派は関西の組が多く、山口組組長の出身母体・弘道会(名古屋市)を優遇する組織運営や高額な会費(上納金)に反発したとされる。17年4月には神戸山口組が再分裂して絆会(旧・任侠山口組)が発足し、三つどもえの状態となった。

神戸新聞2020/8/27(木) 6:15配信