2021年4月23日金曜日

神戸山口組、暴力団指定から5年抗争続くも勢力減退

 国内最大の指定暴力団「山口組」から分裂した「神戸山口組」(いずれも神戸市)が指定暴力団となってから15日で5年。この間、山口組との抗争状態が続き昨年1月、ともに特定抗争団体に指定された。その後も抗争事件は相次いでいるが、神戸山口組側は襲撃されるケースが目立つ上、主要団体の離脱もあり「劣勢に立たされている」(捜査幹部)のが実情だ。最近になって抗争終結に向けた動きもささやかれるが、情勢は不透明で警察当局は警戒を続けている。神戸山口組は平成27年8月、組織運営に不満を持ったとされる井上邦雄組長らが、山口組から離脱して結成。翌28年4月15日、兵庫県公安委員会が暴力団対策法に基づく指定暴力団に指定した。両組織間では分裂直後から抗争とみられる事件が相次ぎ、銃器を使用した殺傷事件も発生。昨年1月に特定抗争団体に指定され、活動が厳しく制限された後も同様の事件は続いている。山口組側が神戸山口組の幹部を襲撃する事件が多いが、最近になって表面化しているのは神戸山口組の最高幹部らを狙う動きだ。兵庫県尼崎市で昨年11月、神戸山口組系組長ら2人が山口組系組員2人に拳銃で撃たれ重傷を負った事件では、山口組側の2人が事前に井上組長の自宅も下見していたことが判明。襲撃の機会をうかがっていたとみられる。令和元年11月に同市の市街地で、神戸山口組系組長を自動小銃で殺害し、殺人罪などに問われている別の元山口組系組員の男は今年2月の公判で、井上組長らの殺害を考え関係先の下見をしたが、警備が厳重で断念したと明らかにした。こうした動きについて捜査幹部は「山口組側には、トップを狙うことで一気に抗争を終わらせる狙いがあるのでは」と分析。実行犯が最高幹部を狙っていたと明かすことで、神戸山口組側への圧力を強める狙いがあるとの見方もある。警察庁によると、神戸山口組の組員数は分裂直後の平成27年末時点では約2800人いたが、そこから減少の一途をたどり、令和2年末には約1200人に。有力組織の離脱も相次いでいるとされる。一方の山口組側も、取り締まりの強化や社会の暴力団排除機運の高まりなどで勢力は減退。分裂直後の平成27年末時点では約6千人だったが、昨年末には約3800人となった。特定抗争団体への指定に加え、新型コロナウイルスの影響でシノギ(資金獲得活動)が苦しいのは両組織に共通している。こうした事情もあり、水面下では他の指定暴力団が仲裁に入り、抗争の終結に向けた動きが始まったとの情報もある。だが、別の捜査幹部は「中心だった幹部らも相次いで神戸山口組を離れ、内部が一体ではなく情勢は流動的な面もある」と指摘。「そうした状況が新たな事件につながる恐れもあり、市民の安全を最優先に警戒を続ける必要がある」と話している。


2021/4/15(木) 18:48 産経新聞