2023年2月19日日曜日

「50代社員は新たな価値を生まない」 日本で起こる”大リストラ嵐”でクビになる社員3種!

 世界で大規模なリストラが報じられている。日本の正社員は「解雇しにくい」ことで知られているが、本当に大丈夫なのだろうか。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が「これからクビになる社員」を3種類解説するーー。

〇今、日本企業では「構造改革」という名のリストラが静かに進行中

世界的な資源価格の高騰が落ち着き、春には物価上昇が一巡すると予測する向きも少なくない。しかし、日本では日本銀行の異次元緩和がどうなるかで財政運営に不安が生じれば、第二の危機が始まると予測する経済学者も少なくない。そうなると、国債が売られて金利が上がり、住宅ローンなどの金利も上がる。国債の借り換えも困難になり、資金が海外に流出し、激しい通貨安とインフレに見舞われかねない。金融引き締めによる物価高騰に直面しているアメリカでは、メタなどの大手IT企業の人員削減に続いて、金融大手のモルガン・スタンレーが1600人規模の削減を実施。ゴールドマン・サックスも3200人の人員削減が報じられている。日本でもいつ大幅なリストラが実施される事態になるかわからない。これまでの歴史を振り返ると、経済不況になる前に第1弾の「構造改革」という名のリストラが実施されている。そのターゲットは言うまでもなく、45歳以上の中高年社員だ。今の日本では、とくに1988年から92年にかけて入社したバブル期入社世代を大量に抱える企業が多い。88年入社組は今年57歳。4年後には定年を迎え再雇用に入る。もちろん会社にとって有用な人材であれば残って働いてもらうが、近年の急速なデジタル経済の進展の影響で、培ったスキルが陳腐化している人、あるいは新しいスキルの修得に意欲的ではない人もいる。

〇どういう中高年がリストラのターゲットになるのか

そうした人を真っ先にリストラしようという企業も多い。2018年に45歳以上を対象に300人のリストラを実施した医療機器メーカーの人事担当役員はこう語っていた。「40代以上の社員が半数を占めるが、4年後には50代以上が30%を占める。会社は新規事業を含めた新しい分野に挑戦していく方針を掲げているが、50歳を過ぎた社員が新しい価値を生み出すとは思えない。今のうちに人口構成を正し、後輩世代に活躍の場を与えるなど新陳代謝を促すことが一つの目的だ。加えてこれまで長く年功型賃金が続いてきたことで、50歳以上は非管理職でも残業代込みで年収900万円を超える社員も多くいる。この状態を続けていけば会社の体力が耐えられなくなるという不安もあった」要約すれば ①中高年社員は概して仕事への意欲が足りない、②社員の人口構成の修正、③コスト削減効果――の3つが45歳以上をターゲットにした理由だ。もちろん人件費が高ければ賃金制度を変更し、中高年を再活性化して戦力化する方法もある。しかし、役員は「すでに実力主義の賃金制度改革を実施しているが、既得権があり、50代の給与を急激に減らすのは困難だ。また、50代の意識改革のための研修も何度かやったが、従来の自分たちのやり方を変えたくない人も多い。会社が変わるというときに、その人たちが逆に抵抗勢力になる可能性もある。それもリストラに踏み切った理由の一つ」と語る。最後の発言は本音だろう。やる気のない中高年社員が増えると抵抗勢力に変わり、会社の舵取りも難しくなる。では中高年の中でもどういう人がリストラのターゲットになるのか。もちろん会社にとっては「貢献度が低く、将来的に成長が見込めない人」ということになる。しかし、具体的にどういう人かとなると曖昧だ。この点、外資系企業の場合は、職務に必要なスキルがない人、求められるパフォーマンスを出せない人であり、具体的には人事評価の下位から20%ないしは30%を切るというのが一般的な基準となっている。ただし、日本企業の人事評価は極めて曖昧であり、それだけで対象者を選別することはない。

〇出向先企業の「返品」が急増中…リストラ最有力候補、3つのタイプとは

ではどんな基準で選別するのか。真っ先に対象となるのが非管理職だ。さらに技術系と事務系の2つでやや異なる。技術系について建設関連会社の人事課長は「会社が必要とする技術やスキルを持ち、若手に指導できる人は残ってもらい、そうでない人が対象になる。また、必要とするスキルの持ち主であっても、他人に教えようとしない一匹狼タイプは対象になりやすい」と語る。また、事務系では以下の3つのタイプは要注意だ。

・同期入社の中で、自分よりも2階層上の役職者がいる。

・同じ仕事を今の立場で10年続けている。

・関連会社に出向している。

40代後半になれば同期のトップは部長に昇進している人もおり、2番手グループの中でも課長になっている。もし2段階下の係長、あるいは課長補佐であれば明らかに出世が遅れている。しかも今後、先頭を走る同期を追い抜くことはできない。課長になる可能性があっても55歳の役職定年制を設けていれば課長止まりで、56歳で一兵卒に転落する。つまり会社に期待されていない人ということになる。同様に2番目の同じ仕事を10年も続けているという人も、職場や会社が何も期待していないことを意味する。もし期待していれば、新規事業部署などに配置し、会社の成長の一翼を担ってほしいと考えるだろう。3番目の出向者も厳しい。重電メーカーの人事課長はこう語る。「親会社の人員調整弁として、これまで関連会社に出向させる慣例が長く続いてきた。しかし本体の事業そのものが国内では伸びない中で、関連会社に出向している社員については、使える社員と使えない社員を線引きし、パフォーマンスの悪い社員がどんどん戻されているのが実状だ。ある会社の社長は『3月末でお返しします』と言ってくる。こちらは『社長、そんなこと言わないでなんとかあと一年はお願いします』と言っても “返品” が増えている。すでに同業他社では希望退職募集でリストラしたところもあるが、うちも時間の問題だ」

〇「リストラは自分たちの世代には関係ない」と思っている30代は甘過ぎる

不況が本格化すると、バブル期入社世代のリストラだけで終わらないだろう。かつてのIT不況や、リーマン・ショック時の金融不況では30代以上もターゲットになった。30代と言えば、入社から10年以上経過し、会社の中では第一線での活躍が期待される世代である。しかしそれだけに将来に期待が持てない不要人材も存在する。具体的にはどういう人か。人事担当者に共通する30代の不要人材候補は、以下の人たちである。

・指示された仕事の内容を忘れやすい。仕事に対する意識が低い。

・行き当たりばったりで計画性がない。最後までやり遂げることが少ない。

・指示された仕事の提出期限や時間を守れないルーズな人。

・同じ仕事でも他の人よりも遅く、しかもケアレスミスが多い。無意味に業務に時間をかける効率の悪い人。

・何年もルーチンワーク(定型的な仕事)をしている人。

・自分から進んで何かをやろうとしない。簡単な仕事だからといって後回しにする。

思い当たる人がいないだろうか。仕事の能力の問題というよりも、仕事に対する姿勢の問題でもある。しかもこうした人たちが管理職に昇進するのは、ポスト不足もあり、かなり難しいだろう。会社としては早く芽を摘み取ってしまいたいリストラ要員でもある。30代でこんな仕事の仕方をしていては、クビを洗って待っているようなものだ。「リストラは自分たちの世代には関係ない」と思っているなら甘い。会社の業績しだいでは、いつターゲットになってもおかしくない。


溝上憲文


2023/1/30(月) 19:05配信