2026年5月24日日曜日

新NISA・つみたて投資枠で〈債券ファンド〉解禁も…「正直、いまはオススメできない」納得の理由【FPが「債券投資の注意点」を解説】

 2026年4月の税制改正により、新NISAのつみたて投資枠で「債券ファンド」の運用が可能となりました。株価暴落時のクッション役として期待される債券ですが、特有のリスクを抱えていることはご存じでしょうか。YouTubeチャンネル登録者数40万人超の人気FP鳥海翔氏が、債券投資の基本と、新NISAの非課税枠で債券を買うことの合理性を検証します。

〇NISA制度改正で「債券ファンド」解禁

2026年4月1日、NISA制度が大きく改正されました。つみたて投資枠でこれまで対象外だった「債券ファンド」が、ついに投資対象に加わったのです。資産形成の段階では「株式100%」で運用する方法が主流ですが、60代以降、資産を取り崩す段階に入ると「株式だけの値動きは不安だ」と感じる人も多いでしょう。そのため、選択肢が増えることは喜ばしいことです。しかし……はたして、NISAという「貴重な非課税枠」を使ってまで債券を運用すべきなのでしょうか。今回は、特に「安定運用」や「資産の取り崩し」を意識している人に向けて、債券投資のメリットと、見落とされがちなデメリットを整理していきます。

〇「ローリスク・ローリターン」な債券投資の意外な罠

まず、債券という商品の性質をおさらいしましょう。株式が企業の業績によって価格が大きく変動する「ハイリスク・ハイリターン」な商品であるのに対し、債券は「ローリスク・ローリターン」の代表格です。債券は、国や企業にお金を貸し、その見返りに利息を受け取る仕組みです。基本的には発行体(企業など)が倒産しない限り、満期まで保有すれば投資した元本と利息が約束されており、極めて予測可能性が高い商品といえます。

〇債券は「物価上昇」に勝てない

一般的に「株と債券は逆の動きをする」といわれます。株が下がったときに債券が値上がりし、株が上がったときに債券が値下がりするため、両方持っていることで資産全体の値動きを安定させる効果があります。そのため、「ポートフォリオには債券も分散して組み入れるべきだ」という意見も少なくありません。しかし、債券には「物価上昇(インフレ)に極めて弱い」という、明確なデメリットがあるのです。物価が上がると、政府は景気を冷やすために金利を上げます。金利が上がれば、新しく発行される債券の利回りは高くなります。しかし、過去に「低い金利で発行された債券」を持ち続けている人はどうなるでしょうか。たとえば、物価上昇率2%のときに利回り2%の債券を購入し、その後物価上昇率が3%に上がったとします。この場合、保有している債券の利回りは2%のままですから、実質的な価値の下落です。さらに、その低い利回りの債券を売ろうとしても、より高い利回りの新発債が出回っている状況では、価格を大きく下げ、利回りを高めなければ買い手は現れません。つまり、物価が上がり金利も上がる局面では、債券を持ち続けても損、売っても元本割れという「打つ手なし」の状態に陥るリスクがあるのです。

〇では「債券ファンド」はどうか?

今回、新NISAで買えるようになるのは「債券」ではなく「債券ファンド」です。ファンドはさまざまな時期に発行された債券の詰め合わせであるため、生の債券よりは利回りが平均化されますが、金利上昇による価格下落の影響は避けられません。インフレが長引くなか世界的な金利上昇が警戒されている現在の相場環境を鑑みると、「いまはオススメできない」というのが正直なところです。またここで、NISA制度の本来の目的を考えてみましょう。NISAは「利益にかかる税金をゼロにする」制度です。そもそも利回りが低く、大きな利益が期待しにくい債券を、生涯1,800万円という限られた非課税枠に放り込むことは、本当に効率的でしょうか。債券ファンドは特定口座(課税口座)でも購入可能です。せっかくの非課税メリットを最大限に活かすのであれば、より高いリターンが期待できる株式に枠を使い、債券は枠外で持つという考え方もあります。

〇NISAで債券ファンドを「検討すべき人・避けるべき人」の特徴

もちろん、すべての人にとってオススメできないわけではありません。次のような人には検討の余地があります。

・すでに取り崩し可能な十分な資産(生活費10~20年分など)がある

・資産を増やす必要性よりも、精神的な安定(評価損に耐えられない)を優先したい

一方、これから資産を大きく育てたい段階にある人や、なんとなく「分散投資=債券」というイメージだけで選ぼうとしている人は、避けたほうが無難でしょう。投資スタイルに「正解」はありません。したがって、債券に潜むインフレリスクを正しく理解したうえで、自身のライフプランにとって本当に必要なのかを「あなた自身の基準」で判断することが大切です。


鳥海翔

株式会社Challenger代表取締役

FP(ファイナンシャル・プランナー)/投資家


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