2026年9月9日水曜日

証券担保ローンとは?メリット・デメリット、効果的な活用シーンを紹介

 数年前に副業を始めるにあたってネットバンクの口座が必要になって(別にネットバンクの口座がなくても副業はできるのだが、手数料等の都合で便利なので口座開設をした)口座開設を行い、2年位前にネット証券の口座を開設しNISAなどの取引を少しずつ行い始めました。そうすると最近になってネットバンクの方から「証券担保ローンはどうですか」というメールが届くようになったため、証券担保ローンについていろいろ開設したいと思い、書くことにしました。

〇証券担保ローンとは

証券担保ローンは、保有している有価証券(株式、債券、投資信託など)を担保にして資金を借り入れるローンです。担保にした有価証券の時価評価額に応じて、借りられる金額が決まります。証券担保ローンの借入額は、「有価証券の時価評価額の50%?70%」のように一定割合に設定されていることが一般的です。有価証券の時価評価額が下落した場合、追加の担保を要求されたり、返済を求められたりすることがあります。証券担保ローンの担保に利用できる有価証券の種類には、国内上場株式や外国株式、米国国債などがあります。金融機関によって担保として受け入れられる有価証券の種類が異なるため、金融機関のWEBサイトで確認しましょう。

〇証券担保ローンのメリット

証券担保ローンには、以下のようなメリットがあります。

・有価証券を売却せずに資金を調達できる

証券担保ローンは、保有している株式や債券などを売却せず、それを担保として資金を借り入れることができます。有価証券の時価評価額が将来上昇することを期待して保持しながら、現金が必要な際に資金を調達することが可能です。また、証券担保ローンを借り入れている間も、担保にしている有価証券からの配当金や利息・利子、株主優待を引き続き受け取れます。

・有価証券の時価評価額によっては高額の融資が受けられる

カードローンなどの金融商品では、収入によって借りられる金額の上限が決まっている場合があります。しかし証券担保ローンは、有価証券に高い評価額を得られれば、その評価額に応じた融資が受けられます。場合によっては、高額の融資が受けられる可能性があるといえるでしょう。

・柔軟な資金使途に使える

証券担保ローンで借り入れた資金の使い道は原則自由です(一部自社商品の購入等に制限を設けている金融機関があります)。投資資金や生活費、ビジネス資金などさまざまな資金使途に利用できます。ブライダルローンや医療ローンといった目的別ローンは、結婚資金や医療費など特定の資金使途でしか利用できません。しかし、証券担保ローンであれば別の投資や運用に充てることも可能です。

・カードローンと比べて金利が低い

証券担保ローンはカードローンと比べて金利が低い傾向があります。金融機関によって違いはありますが、1?4%台である場合がほとんどのようです。カードローンの場合、金融機関や借入額によって異なりますが、金利が15%前後になることも珍しくありません。証券担保ローンは金利が低い傾向にあるため、支払総額を抑えやすいというメリットがあります。

〇証券担保ローンのデメリット

証券担保ローンには、以下のようなデメリットがある点に注意しましょう

・証券価格が下がると追加担保の差し入れを求められる

証券担保ローンには、担保不足のリスクがあります。担保不足とは、担保にしている有価証券の時価評価額が、融資残高に対して一定の割合を下回る状態のことです。有価証券の時価評価額が下落して担保としての価値が下がると、一部または全部の出金、株式の振替ができなくなる可能性があります。さらに時価評価額が下がった場合は、追加担保の差入れまたは借入額の一部返済が必要です。

・価値が暴落すると強制的に売却され返済に充てられる

担保にしている有価証券の時価評価額が下がり続けると、金融機関が有価証券を強制的に売却してローンの返済に充てることがあります。担保の追加差し入れでは賄えない激しい暴落の場合は、強制的に売却される可能性があるため注意が必要です。強制的に売却された場合、計画していないタイミングで有価証券を売却することになります。証券担保ローンを借り入れる際は、有価証券の時価評価額の変動によって強制売却のリスクがあることを理解したうえで申し込みましょう。

・借入可能額の制約がある

証券担保ローンは高額な融資を受けられる可能性はあるものの、有価証券の種類によっては借入可能額の制約が設けられています。例えば、「この有価証券は何%」のように、あらかじめ有価証券の時価評価額に対する借入可能額の割合が決められている場合があります。条件は金融機関によってさまざまです。有価証券の種類や金融機関が定める条件によっては、十分な資金を借り入れられないかもしれません。証券担保ローンを申し込む前に、金融機関ごとに条件を確認しましょう。

〇証券担保ローンの活用シーン

証券担保ローンの活用術や利用シーンは、個人の資産運用や資金ニーズに応じてさまざまです。ここでは、具体的な活用方法や利用シーンを説明します。

・急な資金ニーズに利用する

突然の出費や緊急の資金ニーズが生じた場合、証券担保ローンを活用すれば有価証券を売却せずにスムーズに現金を調達できます。資産を保持しつつ、必要な資金を得られるのがメリットです所得税や固定資産税、子どもの学費や冠婚葬祭の資金など、まとまった資金が必要となった場合に利用できます。

・追加投資のための資金調達に使う

有望な投資案件や急な株式購入の機会に対応するために、保有している有価証券を担保に資金を調達し、さらに投資を行うという方法です。これにより、手元資金を効率的に活用できます。証券担保ローンを利用して追加資金を調達し、その資金をほかの投資に充てることで投資のレバレッジ効果を高めることができます。

・リスク管理に使う

証券担保ローンは、資産運用におけるリスク管理に使うという方法もあります。有価証券の売却による資産配分の変更を避けたい場合、証券担保ローンを利用して現金を調達し、ほかの資産運用行うことが可能です。有価証券の価格が下落してもすぐに売却したくない場合、証券担保ローンを利用すれば一時的に資金を得られる可能性があります。相場が回復するまで待って運用するのもひとつの方法です。

・税務上の利益確定の繰り延べに使う

証券を売却すると、譲渡益に対して所得税が発生します。しかし、証券担保ローンを利用すれば、資産を売却せずに資金を得ることが可能です。税務上の利益確定を繰り延べできます。

〇証券担保ローンの利用の流れ

ここでは、証券担保ローンを利用する際の一般的な流れを説明します。

1. 金融機関を選ぶ

まずは証券担保ローンを提供している金融機関を選びます。金融機関の条件を比較して、自分に合ったものを選びましょう。

2. 申し込み

借入額や有価証券の詳細を記入した申込書を提出し、必要書類を揃えます。金融機関のWEBサイトで必要な書類を確認しましょう。

3. 審査

金融機関が、有価証券の時価評価額や申込者の返済能力を審査します。

4. 契約

金融機関からの審査結果を待ちます。審査が通れば契約書に署名し、有価証券に担保権を設定します。

5. 資金の受け取り

契約が完了すると、借入金が口座に振り込まれます。

6. 返済

計画に従って返済を進め、完済すると担保が解除されます。

融資が実行されるまでは、数日?1週間ほどかかることが一般的です。

〇証券担保ローンの選び方

証券担保ローンはさまざまな金融機関が提供しているため、「どうやって選ぶべきか」と悩む方もいるかもしれません。ここでは、証券担保ローンの選び方の例を紹介します。

・担保にできる有価証券の種類

証券担保ローンは、金融機関によって担保として受け入れる有価証券の種類が異なります。「自分が保有している有価証券を担保にできるか」を確認するとよいでしょう。株式や債券、投資信託などさまざまな証券を担保にできる金融機関を選ぶと、担保とする対象の選択肢が増えます。

・借入可能額の大きさ

証券担保ローンでは、担保とする有価証券の時価評価額に対する借入可能額の割合が決まっています。一般的な借入可能額の割合は、有価証券の時価評価額の50%~80%です。高い借入可能額の割合を提供する金融機関を選ぶと、必要な資金を効率的に借りられます。証券担保ローンを借り入れる際は、借入可能額の上限額も確認しましょう。証券担保ローンによってさまざまですが、数十万円?数億円まで借りられることが多いです。ローンを借り入れる際は、自分の資金ニーズに合った金額を提供しているかを確認することが大切です。借り入れられる金額が少ない場合は、ほかの金融機関も検討してみましょう。

・金利の低さ

証券担保ローンを借り入れる際は、金利を確認しましょう。複数の金融機関の金利を比較し、できるだけ低い金利で借りられるところを選ぶのがおすすめです。金利の平均はおおよそ1%?4%です。金利が低いほうが、支払総額を抑えやすくなります。

〇証券担保ローン以外での資金調達手段

借り入れの手段には、証券担保ローン以外にもさまざまな手段があります。ローンの種類によって資金使途や特徴が異なるため、自分に合った手段を選ぶことが大切です。

・ビジネスローン

ビジネスローンは、事業者向けに提供されるローンです。事業の運転資金や設備投資などに利用されます。証券担保ローンや不動産担保ローンとは違って、担保が不要であることが一般的です。一方で金利が3?15%程度と高めであるという特徴があります。

・不動産担保ローン

不動産担保ローンは、不動産を担保にして資金を借りるローンです。個人でも法人でも利用でき、不動産の評価額に応じて大きな資金を調達することが可能です。担保があるため、金利は低めに設定されていることが多いです。一般的に資金使途の制限はなく、使い道は自由です。

・カードローン(消費者金融・信販系カードローン等)

カードローンは個人向けの無担保ローンで、借入可能額の範囲内で繰り返し借り入れができる便利なローンです。担保がなく、手軽に利用できる一方で、金利は高めに設定されています。資金使途の制限は設けられていないため、使い道は自由です。


理由は何であれ借金であることには変わりがないので絶対に借りないようにしましょうね。僕自身銀行の預金に対して結構な金額の利息を受け取っています。この受取金利は誰が払っているのかという事についてきっちり考えましょうね。




証券金融会社

 証券金融会社とは、信用取引の決済に必要な資金または株式を金融商品取引所(証券取引所)の正会員等となっている証券会社に貸し付けたり、証券会社が公社債の引受・売買に伴って必要とする短期の保有資金を貸し付けたり、個人・法人に対して有価証券を担保に資金を貸し付けたりすることなどを業務にする会社のことである。

〇根拠法

根拠法は貸金業法ではなく、金融商品取引法156条の24による免許制となっており、資本金1億円以上の株式会社で一定の要件を満たすものが免許を受けることができる。

〇業者

2017年現在、日本証券金融(日証金)のみが現存する。1950年から全国9つの証券取引所所在地にそれぞれ証券金融会社が設立されたが、1955年の証券取引法改正を機に各地の証券金融会社が統合され、日証金、中証金、大証金の3社に集約された。その後、東京証券取引所グループと大阪証券取引所の統合に伴い2013年7月に大阪証券金融(大証金)が日証金に吸収合併された。2017年には中部証券金融(中証金)が自主廃業を決定し、日証金が業務を継承した。


40年間、相続税も所得税も「二重取り」していた…最高裁がNOを突きつけ、160億円を還付させた"国税の盲点"

 相続で得た財産には相続税がかかる。では、その財産を年金として受け取ったら、所得税もかかるのか。この問題が争点となった重要な裁判がある。青山学院大学教授で税法を専門とする木山泰嗣さんの著書『[新版]分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社新書)より、一部を紹介する――。

■給料から引かれる税金はだれの税金なのか

本書では、個人が得た所得に課せられるのが「所得税」で、法人が得た所得に課せられるのが「法人税」だという説明をしてきました。ただし所得税法は、法人が納税義務を負う場合として源泉所得税を定めています。源泉所得税については、法人でも納税義務を負います。これは所得税法に規定があるからでした。といっても法人が負うのはあくまで、従業員などへの支払いの際に源泉所得税を徴収して納める義務です。本来の納税義務は、あくまで法人から給与などの支払いを受けた従業員など(個人)が負っています。法人は従業員などに給料などを支払っただけですので、そもそも法人は何も所得を得ていません。したがって法人が得た所得に対する課税ではないのです。ここに「相続税はどうなんだ?」という視点を入れると、話が少し複雑になります。相続税は、「相続税法」という法律に定められています。単純にいえば、人の死亡(相続)によって、相続人が取得した財産について課税をするのが相続税ということになります。民法には、「相続は、死亡によって開始する」とあり(民法882条)、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定されています(民法896条本文)。そして、相続税法2条1項は、相続税の課税財産の範囲について、次のように定めています。

■遺産じゃないのに課せられるお金

【相続税法2条(相続税の課税財産の範囲)】

第1条の3第1号又は第2号の規定に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する。

「第1条の3第1号……の規定に該当する者」というのは、相続税の納税義務を負う人(相続税の納税義務者)のことで、相続税法1条の3第1号には「相続又は遺贈……により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの」と規定されています。その者は、「個人」です(同号イ及びロの各かっこ書き)。要するに、相続によって(そのときに日本に住所がある)「個人」が得た「財産」に対して、相続税は課されるわけです。もっとも、相続税法には「みなし相続財産」という規定もあります。

民法でいう「相続財産」にはあたらず、相続人の間で遺産分割の対象にはならない財産であっても、相続によって得た財産で「みなし相続財産」とされているものについては、相続税が課されるのです(相続税法3条)。「みなし相続財産」の具体例には、被相続人の死亡により、生命保険契約に基づき、「受取人」である相続人が保険会社から保険金の支払いを受ける場合で、保険料を被相続人が払い込んでいたときなどがあります(相続税法3条1項1号)。

■タダで得た財産に所得税がかからないルール

生命保険金は受取人として指定された者に支払われるもので、民法上の「相続財産」ではなく、遺産分割の対象ではありません。しかし相続税法では、相続によって得た財産ではあるので、保険料を被相続人が負担していた場合、相続税が課税される財産とみなすのです。いずれにしても、相続開始によって個人が得た財産に対しては、「相続税」が課されるわけですが、この話は、何かと重なる気がしないでしょうか。そうです。本書がテーマにしている「所得税」です。所得税は、個人が得た所得に対して課されるもので、相続税は、個人が相続で得た財産に課されるものです。「所得」か「相続で得た財産」か、という違いはありますが、どちらも「個人」が得た所得に対して課されるという点では同じです。また、所得は「あらたに流入した経済的価値」で、その理由や原因は問わないものでした(包括的所得概念)。そうすると、相続開始という利得を得た理由や原因は考慮せず、単にタダで「財産を得た」という点だけでみると、これは所得税が課税の対象にしている「所得」にもあたるはずです。そうすると、相続によって財産を得た相続人には「相続税」が課され、さらに「所得税」も課される、というのが論理的であるはずです。しかし、現実にはそうはなっていません。所得税は課されず、相続税だけが課されるのです。その理由は、所得税法の9条1項17号に非課税規定があるからです。

■税金の二重払いを防ぐための特例

【所得税法9条(非課税所得)】

次に掲げる所得については、所得税を課さない。(略) 一七 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含み、同法第二十一条の三第一項第一号(贈与税の非課税財産)に規定する公益信託から給付を受けた財産に該当するものを除く。

このように、「相続……により取得するもの」(相続財産)および「相続税法……の規定により相続……により取得したものとみなされるもの」(みなし相続財産)については、「所得税を課さない」ことが、所得税法の非課税規定のなかで明らかにされているのです。逆にいえば、この非課税規定が存在しなければ、「相続財産」にも「みなし相続財産」にも、相続税が課されたうえで、さらに所得税も課される、ということになるのです。しかし、それでは、同じ原因によって得た同じ財産に対して2つの税金をかけることになります。これでは「二重に税金が課される」ことになり、納税者に酷(こく)な結果となってしまいます。国民の理解も得られないでしょう。こうして、相続税と所得税の「二重課税」を防止するために、所得税法の9条1項17号は規定されたものだと理解されています。なお、個人が個人から贈与を受けると贈与税が課されますが、これについても所得税の二重課税が起きないよう、この条文は手当てをしています。「個人からの贈与により取得するもの」の部分です。

■実際にあった保険がきっかけの二重課税裁判

この規定の適用をめぐり、2010年(平成22年)に、新聞などのニュースで報道された最高裁判決があります。それは「長崎年金訴訟」「年金二重課税事件」「生保年金事件」などと呼ばれている事件です。この事件の概要は次のとおりです。保険会社が約40年以上前から扱っていた生命保険で、年金の特約がついた商品(年金特約付き生命保険)がありました。被保険者が死亡したときに、受取人は生命保険金(4000万円)を受け取ることができます(ここまでは通常の生命保険と同じです)。それに加えて、特約部分がありました。受取人の選択により、相続が発生した年から毎年230万円というかたちで、10年にわたり年金を保険会社からもらえる特約がついていたのです(「選択により」と書きましたが、年金部分を一括でもらうこともできるプランでした。一括払いの場合は、年金総額2300万円ではなく、予定利率で割り引いた2000万円でした。こちらを選択した場合、4000万円の保険金と2000万円に相続税が課されるだけで、所得税は課されません)。

■40年にわたる国税の勘違いを正した最高裁

これについて、国税当局は、相続開始によって年金を受給できる権利(年金受給権)に対しては(みなし相続財産として)「相続税」が課され(230万円×10年×60%=1380万円部分)、相続が発生した年から毎年もらう年金(毎年230万円)についても、それぞれ雑所得として「所得税」が課されるという考えをとっていました。そして現実に、過去40年にわたり、そのような取扱いがされていたのです(実際には、当時の所得税法207条の規定に基づき、保険会社が年金を支払う際に源泉徴収をしていました)。しかし、最高裁判所は、年金受給権と最初に受け取る年金については、同じ経済的価値に対して「相続税」と「所得税」をダブルで課す「二重課税」にあたると考えました。相続税と所得税の二重課税を排除した所得税法9条1項17号(当時15号)の規定は、「経済的価値」が「同一」といえる場合の二重課税を排除した趣旨だと解釈したためです(最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決・民集64巻5号1277頁)。

■相続した年金に税金をかける問題点

「所得税法9条1項は、その柱書きにおいて『次に掲げる所得については、所得税を課さない。』と規定し、その15号において『相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)』を掲げている。同項柱書きの規定によれば、同号にいう『相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの』とは、相続等により取得し又は取得したものとみなされる財産そのものを指すのではなく、当該財産の取得によりその者に帰属する所得を指すものと解される。そして、当該財産の取得によりその者に帰属する所得とは、当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値にほかならず、これは相続税又は贈与税の課税対象となるものであるから、同号の趣旨は、相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして、同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものであると解される。」原審(げんしん)の福岡高裁は、二重課税かどうかは「法的にみるべきだ」と考え、年金受給権という権利と個別の年金は法的には別のものだから「二重課税ではない」という国(国税当局)の見解を支持しました(福岡高裁平成19年10月25日判決・訟務月報54巻9号2090頁)。

■還付された総額は約160億円

還付された総額は、2012年3月末で約160億円にのぼったと報道されています(2012年6月3日付け毎日新聞)。この判断は、最高裁判所が、法律(所得税法)の解釈を徹底させ、国税当局の取扱いについてNOを突きつけたものとして、話題を呼びました。この記事では、所得税の基本について、実務上の取扱いを解説するものではなく、所得税法という法律の考え方から解説をするスタンスをとっています。そのため、理論的なことや抽象的な概念もでてきますが、それはとても重要なことなのです。なぜかというと、課税実務が「所得税法」に照らして間違っていれば、それは最終的には裁判所で正されるべきものだからです。その点からも、所得税を所得税法という法の枠組みから学ぶことには、大きな意味があるといえます。

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木山 泰嗣(きやま・ひろつぐ)

青山学院大学法学部教授

1974年、神奈川県横浜市生まれ。青山学院大学法学部教授(税法)、同大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻主任。鳥飼総合法律事務所客員弁護士。2011年に『税務訴訟の法律実務』(弘文堂)で、第34回日税研究賞(奨励賞)受賞。主な著書に、『ゼロからわかる日本の所得税制』『弁護士が教える分かりやすい「民法」の授業』、『弁護士が教える分かりやすい「所得税法」の授業』(いずれも光文社新書)など。

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(青山学院大学法学部教授 木山 泰嗣)


プレジデントオンライン / 2026年9月7日 8時15分



2026年8月19日水曜日

住民税の「一律10%」って本当?均等割と所得割の仕組みをすっきり解説

 所得税は所得が増えるほど税率も高くなる「累進課税」が採用されています。一方で、「住民税は一律10%」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。住民税は「所得割」と「均等割」という2つの仕組みで構成されており、所得に応じて負担する部分と、一定額を負担する部分があります。今回は、住民税の基本的な仕組みを分かりやすく解説します。

〇住民税にかかる均等割、所得割とは?

個人住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。所得とは、給与収入から給与所得控除を差し引いた給与所得や、事業収入から必要経費を差し引いた事業所得などを合計した金額をいいます。さらに、社会保険料控除や扶養控除、基礎控除などの所得控除を差し引いた金額が課税所得です。住民税の所得割の税率は課税所得に対して原則10%(都道府県民税4%、市町村民税6%)で、前年の1月1日から12月31日までの所得を基に算定されます。ただし、政令指定都市に住所がある場合は、都道府県民税が2%、市町村民税が8%になります。また、これらの基準を踏まえながらも、各自治体は条例により異なる税率を設定している場合もあるため、詳しくは自分が住んでいる自治体に確認することをお勧めします。よくいわれる「住民税は一律10%」という表現は、所得割の標準税率を指したものです。一方の均等割は、個人住民税が「地域社会の会費」的な性格を持つことを反映した仕組みで、所得にかかわらず定額の負担を求めるものです。均等割の標準的な金額は4000円(都道府県民税が1000円、市町村民税が3000円)とされています。さらに、2024年度から、個人住民税均等割とあわせて、森林環境税(国税)が1000円徴収されています。これは国土の保全、水源の維持、地球温暖化の防止、生物多様性の保全など、森林の整備に必要な費用を確保するためのものです。これにより、均等割と森林環境税をあわせた標準的な負担額は、合計年間5000円となります。ただし、各自治体は自らの判断で税率や税額を決定しているため、自治体によって金額が異なる場合もあります。

〇まとめ

よくいわれる「住民税は一律10%」とは、所得割の標準税率を指しています。住民税には、所得割に加えて、均等割(標準4000円)と森林環境税(1000円)も含まれます。給与明細や住民税決定通知書を見るときは、税額だけでなく内訳にも目を向けてみると、住民税の仕組みをより正確に理解できるでしょう。

文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)

会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。


2026年7月4日土曜日

退職金の運用について

 たまに「退職金ってどう運用したらいいですか」という話を聞くことがあります。この「退職金の運用方法」について個人的意見を書かせてもらいます。これはあくまでも個人的意見と判断してくださいね。

〇退職金だから特別な運用方法があるわけではない

退職金だから特別な運用方法がある訳ではないという事が個人的意見です。「退職金という大金を手にしたから」といって運用に回さなければいけないという事ではない。逆に「退職金ってどう運用したらいいですか」と聞いてくる人は悪い意味でカモになりやすいので気を付けた方がいい。こういう質問をしている人は金融うリテラシーが低い可能性があるので積極的な投資はやめた方がいい。もし住宅ローンを含む借金があるならさっさと払い終えて金利を取られる生活を終了させることをした方がいい。それと退職をしたら給料という定期的な収入がなくなるので生活縮小をすることもしておいた方がいい。当然サブすくなどを解約して無駄な金銭的支出を減らすことも当然だ。

〇自分のメインバンクで運用しない

「自分のメインバンク(給料や退職金の振り込まれる銀行)」で運用することはやめよう。なぜならいつに退職金やボーナスや給料が振り込まれることがすべて筒抜けなので運用はやめた方がいい。

〇退職した翌年に住民税の請求がどかんと来ることを覚えておこう

住民税とは昨年の所得をもとに請求が来るため、退職した翌年に住民税が請求されるのでちゃんと退職金のお金を残しておこう。

〇僕の個人的意見

退職金だからと言って特別な運用法う方がある訳ではない。どのように運用していいのかわからないなら住宅ローンなどの負債を退職金で清算し住民税を払い終わるまで普通預金に入金しておき、その後円建ての定期預金などで運用するという方法をとることがいいのではないか。確かに昔に比べて金利は安いが安全である可能性が高いのでそうしたほうがいい。間違っても銀行や証券会社から勧誘を受けて「手数料等が高い金融商品を買わされないようにする」ことが重要です。外貨預金も手数料や為替レートの兼ね合いであまりお勧めしません。



これ、会社にだまされた? 求人では「ボーナス5カ月分」だったのに夏ボーナスが「2カ月分」しかないワケ

 転職やキャリアに関する悩みや疑問に、ひとつ上を目指す人の転職サイト『type』編集長の三ツ橋りさが回答します。今回のテーマは「ボーナスの支給額」についてです。

(質問)

求人に「ボーナス5カ月分」とあったのに、夏は2カ月分しか支給されませんでした。会社にだまされたのでしょうか?

(回答)

求人情報で見ていた条件と、実際に支給された金額に大きな開きがあると、裏切られたような気持ちになりますよね。ですが、一概に会社がうそをついたとは言い切れない、賞与特有の複雑な仕組みが背景にあるかもしれません。まずは現状を冷静に整理し、これからの向き合い方を一緒に考えていきましょう。詳しくは以下で解説します。

〇求人票に書かれた「○カ月分」の仕組み

求人票に「賞与5カ月分」と記載されていると、「1回の支給で基本給の5カ月分がもらえる」と誤解してしまうケースは少なくありません。しかし、多くの企業において、この表記は「年間(夏と冬など)の合計支給実績」を指しています。つまり、夏に2カ月分、冬に3カ月分を支給して、トータルで5カ月分になるという設計です。そのため、今回の「夏が2カ月分だった」という状況は、冬に残りが出れば求人票の記載通りになる可能性があり、これだけで会社にだまされたと決めつけるのは少し早いかもしれません。また、転職して間もない時期のボーナスには「在籍期間の壁」も存在します。賞与には通常、成果を評価するための査定期間が設けられており、その期間に在籍していなかった場合は支給対象外になったり、あるいは「寸志(ボーナスの代わりとして支給される、数万円程度の一時金)」として数万円程度の支給にとどまったりすることもあります。初年度は満額にならないことが多いという賞与の仕組みを知っておくだけでも、会社に対する見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。

〇求人票の「ボーナス○カ月分」をうのみにしない! 入社後のギャップを防ぐ正しい見極め方

入社後に「思っていたのと違う」という事態を避けるためには、求人票に書かれた数字だけでなく、その背景にある表現を丁寧に確認することが重要です。

▼1. 「実績」か「基準」かを確認する

まず注目すべきは、提示されている数字が「前年度の実績」であるか、それとも「一律の基準」であるかという点です。賞与が「前年度実績」に基づいている場合、それは企業の業績に応じて変動する可能性があることを意味します。業績が悪化すれば支給月数が減少することもあるため、求人票の数字はあくまで過去の参考値であり、今後の支給を確約するものではないと理解しておく必要があります。

▼2. 算出の「ベースとなる金額」を把握する

次に、「○カ月分」という計算の元になる金額が何かを確認しましょう。一般的には諸手当を除いた「基本給」がベースとなりますが、まれに「総支給額」を基準とする企業も存在します。基本給が低く設定されている職場では、たとえ「5カ月分」という高い月数が記載されていても、実際の受取額が期待を下回る可能性があります。表記された数字の裏にある、給与の内訳まで読み解くことが、納得感のある転職へとつながります。

〇今の会社との関係を壊さずに確認する方法とは?

もし今の会社で「やはり計算が合わない」「査定のルールに納得がいかない」と感じる場合は、感情的に不満をぶつけるのではなく、まずは会社の制度を正しく理解するためのコミュニケーションを心掛けましょう。事前に「今後の目標や評価についてご相談したいです」と伝えて、1on1など落ち着いて話せる場を用意するのがスマートです。面談の場では、まずは支給されたボーナスへの感謝を述べた上で、「今後の目標設定のためにルールを知っておきたい」という前向きなスタンスを示すことで、上司も「会社の仕組み」として冷静に説明しやすくなります。

上司への切り出し方(例):

「今後の目標設定のために賞与の仕組みを正しく理解しておきたいです。求人票に記載されていた年間実績と、今回の支給額のバランスについて、どのような算出ルールになっているか教えていただけますでしょうか?」

仕組みについて説明してもらった後は、「次回に向けて私はどのような成果や役割を求められていますか?」とアドバイスを仰ぐのがベストです。制度の確認だけでなく、評価向上への意欲を示すことで、上司に前向きな印象を与えられるでしょう。

〇次の転職で後悔しない! 入社前に確認すべきチェックリスト

もし、今後のキャリアの中で転職を検討することがあれば、入社を決める前の「意思決定の段階」で賞与についての確認を行いましょう。求人票の文字情報だけに頼らず、以下の項目を確認しましょう。

▼その1:内定時の書類(労働条件通知書)をチェックする

内定通知書や労働条件通知書を受け取る段階で、賞与の具体的な算出基準(基本給ベースなのかなど)や、過去の平均支給実績についての詳細な記載があるかを確認しましょう。「賞与あり」とだけ書かれている場合は、その詳しい内容を人事担当者に確認することをおすすめします。

■確認すべきチェックポイント:

・賞与の算出基準が「基本給」になっているか(手当は除外されているか)

・書面に賞与の計算方法や過去の平均支給月数が明記されているか

・「賞与あり」の具体的な条件や上限額などの記載があるか

▼その2:入社1年目の「支給対象期間」を確認する

特に賞与の金額やタイミングを重視する場合は、入社を決める前に「査定期間」と「支給時期」のズレを考慮したルールを確認しておくことが重要です。入社直後は満額支給の対象外になるケースが多いため、以下の点を確認してみましょう。

■確認すべきチェックポイント:

・初年度の夏・冬は、査定期間の兼ね合いから支給対象になるか

・中途入社者向けに、在籍期間に応じた日割りや月割りでの計算ルールはあるか

・支給対象外の場合、代わりとなる「寸志」などの一時金制度はあるか

▼その3:面接やエージェント経由で「角を立てずに逆質問」する

面接の場で直接「ボーナスはいくらもらえますか?」と聞くと、給与ばかりを気にしている印象を与えてしまうリスクがあります。その場合は、聞き方を工夫するか、転職エージェントを挟んで確認してもらうのがスマートです。

角を立てない逆質問の例:「御社で早期に貢献できるよう努めていきたいと考えております。中途入社者の方々の、初年度の評価期間や賞与の仕組みについて、目安となるルールがございましたらご教示いただけますでしょうか」

〇納得のいくキャリアを築くために

ボーナスは単なる給料の一部ではなく、あなたの日々の努力や成果が正しく評価された証しでもあります。だからこそ、そこに疑問や不満を抱えたままにせず、会社の仕組みを正しく知ること、そして上司と前向きな対話を重ねることが大切です。もし、今の職場でどうしても納得のいく解決が難しいと感じたり、自分の努力が正当に評価されないと感じたりした時には、次の転職活動で事前の確認対策を徹底し、ミスマッチのない環境を選ぶことも選択肢になります。納得感を持って自分らしく働けるキャリアを、一緒に1歩ずつ目指していきましょう。



2026年6月14日日曜日

見落とすと17万円の損…税理士が「絶対捨てないで」と警告する「6月に届く細長い紙」と、確認すべき「項目」

 手取りを増やすにはどうすればいいか。税理士の板倉京さんは「毎年、税制控除の見落としで、数万円、人によっては数十万円、余計な税金を払っている人がいる。大切なのは使える控除をきちんと使い、見落としをなくすこと。まずは年に一度、6月に届く“通知書”を確認することから始めてほしい」という――。

〇年に一度届く、税金の「答え合わせ」

毎年6月頃、会社から渡される細長い紙、ちゃんと見たことありますか?「給与所得等に係る市民税・県民税・森林環境税特別徴収税額の決定通知書」

自営業者や個人で住民税を納めている人には、自宅に「市民税・県民税・森林環境税税額決定納税通知書」などの名称で届きます。長い名前に、いろいろな数字が細かく並んだ通知書。中身を見ないで放置、という人が多いのではないでしょうか。これは、今年の住民税の計算結果を伝えてくれるもの。お住まいの自治体から「今年の住民税はこう計算したんですけど、いいですよね」という確認なのです。住民税は基本的には、年末調整や確定申告で出した内容をもとに計算されます。出し忘れた控除は、税金の計算に反映されません。毎年、ふるさと納税・扶養控除・医療費控除などの見落としで、数万円、人によっては数十万円、余計な税金を払っている人がいます。この通知書は、控除に漏れがないかなどを思い出す、年に一度の「答え合わせ表」です。でもこの通知書、どこをどう見たらいいのか、わかりにくい。見るのが面倒な気持ちも分かります。とはいえ、ちょっとチェックすることで、税金が戻ってくる可能性があるなら、確認しておいた方がいいと思うのです。そこで、今回はこの通知書をチェックする方法やその効果、間違っていた時のリカバリーの方法などについて、お伝えしていきたいと思います。

〇30秒で分かる、いますぐ通知書を確認すべき人

以下のいずれかに当てはまった人は、通知書を手元に置いて、この先を読んでください。

・去年ふるさと納税をして、医療費控除などで確定申告もした

・大学生の子どもがいる、または子どもがアルバイトをしている

・「収入が103万円を超えたら扶養は無理」と思っている

・去年、親が亡くなった

・年金暮らしの親や、遺族年金を受け取る母に仕送りをしている

・住宅ローン控除を受けている

もちろん、これ以外にも控除等の漏れが気になる人は、しっかりチェックしてください。

1.ふるさと納税

ワンストップ特例が「自動的に無効」になる人がいる

最初に確認したいのが、ふるさと納税です。会社員のAさん(年収800万円)は前年、控除上限額の範囲内と考えて12万円のふるさと納税をしました。寄付先は5自治体以内。ワンストップ特例も申請済み。「これで手続きは完了」と思っていました。ところがその年は、家族の医療費の自己負担額が大きく、医療費控除を受けるために確定申告をしました。ここに落とし穴があります。ワンストップ特例は、確定申告をしない人のための仕組み。医療費控除などで確定申告をすると、ワンストップ特例は自動的に無効になるのです。ふるさと納税の控除を受けるためには、確定申告書に、改めてふるさと納税の寄附金控除を書く必要があります。Aさんは「ワンストップを出してあるから大丈夫」と思い込み、確定申告書にそれを書かなかった。結果、Aさんの住民税には、ふるさと納税が反映されなかった――このケースは、実務でもしばしば見かけます。ふるさと納税は、控除上限額の範囲内なら実質負担は原則2000円です。手続き漏れで控除が反映されなければ、その年にした寄付額のほぼ全額分を取り戻し損ねることになる。Aさんでいえば、12万円から2000円を引いた11万8000円分、税金が高くなってしまうということ。

〇どこをチェックすればいいのか

確認方法は、通知書の「税額控除額」や「寄附金税額控除額」、摘要欄を見てください。自治体によって表示は異なりますが、ふるさと納税をしたのに寄附金控除らしき記載がない、前年より住民税が思ったほど軽くなっていない、という場合は黄信号です。確定申告をした人は、所得税の寄附金控除による軽減分と、住民税の寄附金税額控除を合わせて、寄付額から原則2000円を差し引いた程度の控除になっているかを確認してみてください。ただし、医療費控除や住宅ローン控除など他の控除もある場合、通知書だけでは判断しにくいこともあります。分からない場合は、お住まいの自治体(市区町村)に確認してみてください。

2.扶養控除

・年収の壁は103万円→123万円に

もうひとつ気を付けたいのが、扶養控除です。

Bさんは50代の会社員。大学生の子どもがいます。子どもは去年アルバイトを頑張り、収入は120万円でした。Bさんは「103万円を超えたから、もう扶養には入れられない」と思い、年末調整で子どもを扶養に入れませんでした。でも、実はこの大学生のお子さんは、Bさんの扶養控除の対象にできた可能性があるのです。令和8年度の住民税(所得税は令和7年分)から、扶養に入れる年収の壁が103万円から123万円に引き上げられました。給与収入だけなら123万円以下まで、扶養控除の対象だったのです。19歳以上23歳未満の子は、要件を満たせば「特定扶養親族」として、控除額は所得税63万円、住民税45万円を受けることができます。所得税率20%の人なら、所得税だけで12万6000円。住民税の4万5000円と合わせて、約17万円も税負担が変わる可能性があるのです。さらに、子の収入が123万円を超え188万円以下でも、新設された「特定親族特別控除」により、収入に応じて段階的な控除を受けられる可能性があります。「うちの子はバイトでかなり稼いでいるから」と、最初からあきらめるのはもったいないのです。

・「配偶者控除」も変わっている

なお、配偶者控除・配偶者特別控除も、令和8年度の住民税(所得税は令和7年分)から確認すべきラインが変わっています。配偶者の給与収入が123万円以下なら配偶者控除、123万円超201万6000円未満なら配偶者特別控除の対象になりうるので、「103万円を超えたから無理」と思い込まないこと。ただし、納税者本人の合計所得金額が1000万円(給与収入だけなら、おおむね1195万円)を超える場合は対象外です。これ以外にも、前年と家族構成が変わっていないのに住民税が急に高くなっている、扶養人数が想定と違う――こういった場合もお住まいの自治体に確認をしてみましょう。

3.老親の扶養控除

・年金暮らしの親も、扶養に入れられる

「うちの親は年金をもらっているから、扶養は無理」「同居していないから入れられない」。そう思い込んでいる人は少なくありません。でも、年金をもらっていても、同居していなくても、要件を満たせば親を税金上の扶養にできます。扶養に入れることができるのは、「生計を一にする」親族。別居していても、生活費や療養費を継続的に送っていれば扶養に入れることはできます。税金の扶養には、仕送り額の決まりもありません。そして、子の扶養と同じく、令和8年度の住民税(所得税は令和7年分)から、親を扶養に入れられるラインも上がりました。65歳以上で年金以外に所得がない親なら、年金収入168万円以下(改正前は158万円以下)までが扶養の対象となります。(65歳未満の親なら、年金収入118万円以下)。年金がある場合でも、遺族年金の場合は非課税なので、扶養の判定に使う合計所得金額に含めません。母の収入が遺族年金だけ、あるいは遺族年金のほかは少額の老齢年金だけ、という場合、生計を一にしていれば扶養控除の対象にすることが可能です。

・年の途中で亡くなったら要注意

さらに見落とされやすいのが、年の途中で親が亡くなった年です。通常なら年金額が多くて扶養に入れられない親も、年の途中で亡くなれば、その年に受け取る年金は亡くなるまでの分だけになります。扶養に当たるかどうかは、亡くなった時点の状況で判断するので、その年に受け取った年金が少なく、所得が要件に収まれば、亡くなった親を扶養控除の対象にすることが可能なのです。親の扶養控除額は小さくありません。70歳以上の親なら老人扶養親族として、別居でも所得税48万円・住民税38万円、同居老親等に該当すれば所得税58万円・住民税45万円の控除になります。所得税率20%の人なら、所得税と住民税を合わせて、別居の親で約13万4000円、同居なら約16万1000円の節税が可能というわけ。すでに納めた税金があれば、その分を取り戻せる。さらに親の医療費を負担していれば、その分を医療費控除に加えることができます。親が亡くなった年は、相続や葬儀などの手続きに追われ、気持ちにも時間にも余裕がなく、扶養控除まで気が回らないという人も多いと思います。だからこそ、後からでも確認してほしいと思います。最初から「年金があるから無理」「別居だから無理」と決めつけず、わからなければ自治体や税務署に聞いてみることをおすすめします。

・通知書で見るべき「4つの項目」

ここからは、通知書の見方です。細かい数字をすべて理解する必要はありません。見るべきは、次の4カ所です。ひとつ目は寄附金税額控除額。ふるさと納税が反映されているか。とくに医療費控除などで確定申告をした人は要注意です。ふたつ目は扶養の人数と扶養控除額。子ども、配偶者、年金暮らしの親、遺族年金を受給している母など、対象になりうる家族がいる人は必ず見てください。3つ目は所得控除の欄。医療費控除、生命保険料控除、iDeCoの掛金(小規模企業共済等掛金控除)などが入っているか。4つ目は住宅ローン控除の反映。所得税から引ききれなかった分は、住民税からも一定額まで差し引かれます。判断に迷ったら、前年の源泉徴収票や確定申告書の控えと見比べてみましょう。控除額が大きく違う、あるはずの控除が見当たらない、住民税が急に上がった――どれかに当てはまれば、要確認です。

・取り戻せる期間の目安は、5年以内

漏れや誤りを見つけたら、期限内であれば、取り戻せる可能性があります。手続きは状況で分かれます。年末調整しかしていない会社員が控除漏れに気づいたら、自分で「還付申告(確定申告)」を税務署にします。すでに確定申告をしている人が控除を入れ忘れていたら、「更正の請求」です。いずれも税務署で行い、所得税が直れば、その内容は自治体にも連携されて住民税にも反映されます。住民税だけの問題に見える場合や、判断に迷う場合は、お住まいの自治体に相談してください。取り戻せる期間の目安は、5年以内です。漏れや誤りを見つけたら、早めに手続きを確認しましょう。

・最強の「裏技」は、控除を落とさないこと

手取りを増やすというと、特別な節税テクニックを探したくなります。でも実際は、使える控除をきちんと使うことが、いちばん確実な節税対策です。ふるさと納税を申告し忘れた。大学生の子を扶養に書き忘れた。亡くなった親や別居の親の扶養を、最初からあきらめていた。どれも知っているか、チェックしているかの違いで、数十万円単位の税金の違いになることもあります。だから、6月に届く住民税決定通知書を、ただのお知らせとして放置しないで、しっかりチェックしていただきたい。数分のチェックで、税金を取り戻せるならすごくオトクだと思いませんか。


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板倉 京(いたくら・みやこ) 税理士、マネージャーナリスト 保険会社・財産コンサルティング会社、税理士法人等で税理士業務に携わる。開業独立している女性税理士の組織、ウーマン・タックス代表。テレビ出演や全国での講演、書籍の執筆などの活動も多数。著書に『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)、『定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)など。

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2026年6月11日木曜日

退職金制度について詳しく知らない人が増えているのでは?

 先日ネット上のニュースを見ていて明らかに「退職金制度について詳しく知らない人が増えているのでは?」と思う記事が出ていましたので紹介します。

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若手歓迎も中高年は猛反発!「退職金廃止」に動く企業の本音と、いまだ転職者を冷遇する制度の時代錯誤

退職一時金制度を縮小・廃止する動きが、日本企業で広がりつつあります。たとえば、王子ホールディングス(HD)は今春、中途採用も含めて2026年春以降に入社する従業員(一部の高卒採用を除く)の退職一時金を廃止すると決めました。一時金の廃止分は給与に上乗せします。生涯年収は、新旧制度でほぼ変わりません。また、既存従業員の退職一時金制度は存続します。したがって、会社にとっても従業員にとっても、即座に大きな影響があるわけではありません。それに対し、即座に大きな影響があるのが、伊藤忠商事の化学品子会社タキロンシーアイです。同社は、4月に退職一時金を廃止しました。一時金の廃止分は給与と存続する確定拠出年金に上乗せします。王子HDとの違いは、国内従業員約1200人すべてを対象に実施することです。また、退職一時金制度の廃止には踏み込んでいなくても、支給額を減額したり、前倒し支給で足元の支給を充実させようという動きが他社で広がっています。SMBC日興証券は、採用サイトの初任給に「退職金前払給3.7万円を含む」と明記しています。

■制度の普及は1950年代後半から

なぜ、ここにきて退職一時金を縮小・廃止する動きが広まっているのでしょうか。退職一時金制度が日本で導入されたのは、1872年(明治5年)、工部省鉄道寮(現JR)が最初とされています。そして、同制度が民間企業に普及したのは、1950年代後半以降です。当時、人手不足が深刻化しており、せっかく採用し、訓練した人材に長期勤続してもらうことが、企業の課題でした。企業は、従業員の勤続年数が一定以上(たとえば30年)に達すると支給額が急増するという制度設計をしました。これによって従業員は、1社に長期勤続することが有利になりました。退職一時金制度は、年功序列賃金と併せて、長期雇用を特徴とする日本的経営を形作ったのです。

しかし拡大の一途だった退職一時金制度が、2000年代に入って転機を迎えました。日立製作所・NEC・富士通などが退職一時金を縮小し、確定拠出年金に振り向けました。これは当時、会計基準の変更で退職給付債務が財務諸表に計上されるようになり、リスク要因である退職給付債務の削減が急務になったためです。その後、企業では中途採用のニーズが高まりました。新卒採用?長期雇用を前提とする退職一時金制度は中途採用の足かせになることから、多くの企業が退職一時金を縮小するようになりました。この流れを決定的にしたのが、昨今の新人採用難です。激化する採用競争を勝ち抜くには、初任給を引き上げる必要があります。賃金の総額をなかなか増やせない状況で初任給引き上げの原資を確保するために、各社が退職一時金の減額を打ち出しました。

■新人・若手は制度廃止に肯定的だが…

これまで退職一時金制度を縮小・廃止した企業は、たいてい「退職一時金の減少分を給与や確定拠出年金の引き上げに回している。従業員に不利益は及ばない」と説明しています。従業員全体では、おそらくその通りでしょう。ただ、給与などへの配分を新人・若手に厚く、中高年に薄くすることで、世代間で利益・不利益が出ているのではないでしょうか。この疑問について、退職一時金制度を縮小・廃止した企業の従業員にヒアリングをしました。予想通り、世代間で受け止め方の違いがありました。中高年は、会社の措置に落胆し、会社に対し憤っていました。「中高年を狙い撃ちする措置で、落胆しています。組合も会社の言いなりで、何のために存在しているのか、と思います」(機械・50代)「以前はこんなドラスティックなことをする会社ではありませんでした。従業員の幸福なんて眼中にないようで、やるせない気持ちです」(精密・40代)一方、若手・中堅には、否定的な意見はなく、歓迎する意見が多く聞かれました。「(退職一時金廃止の)説明会に参加して、会社を変えようという会社側の熱意が感じられました」(化学・20代)「数十年先の退職金よりも今の手取りを増やそうというのは、合理的な取り組みだと思います」(ゲーム・30代)

もっとも、世代を問わずに多かったのは、退職一時金制度への理解やそもそもの関心が低く、「判断できない」「わからない」という意見でした。「当社の退職一時金制度は複雑で、理解できていません。制度改正も何やら複雑で、従業員にとってプラスなのかマイナスなのか、判断できません」(金融・40代)「退職金って30年後、40年後の話で、正直なところ関心ありません」(電機・20代)

■世代間の対立を煽らない配慮が必要

では、今後はどうなるのでしょうか。大手企業の人事部門関係者にヒアリングしたところ、退職一時金制度を縮小・廃止したいという声が数多く聞かれました。「これまで退職一時金は聖域でしたが、縮小・廃止に向けてようやく組合と協議に入ることになりました」(不動産)「すでに退職一時金を減額していますが、廃止に踏み込めないものか、部内で検討しています」(エネルギー)今後も中途採用は増加するでしょう。新卒採用難が解消される見込みはありません。とすれば、退職一時金の縮小・廃止という動きが加速することは間違いなさそうです。その際、従業員、とくに不利益を受けやすい中高年に対し、人事部門は慎重に対応する必要があるという見解がありました。「退職一時金の一方的な引き下げは、労働条件の不利益変更に該当するでしょう。退職給付はただでさえ難解なので、引き下げを進めるにあたり、組合としっかり協議し、従業員に丁寧な説明をし、理解を得ようと思います」(輸送機)「退職一時金だけでなく、このところ給与・福利厚生など新人・若手に有利、中高年に不利な制度改正が続いています。『世の中のトレンドだ』という一言で済ませるのではなく、世代間の対立を煽らないよう配慮する必要があります」(商社)

■退職金税制の見直しが急務

最後に、国に退職金税制の改正を改めて要望したいと思います。現在、退職一時金には退職所得控除があり、次のような計算式になっています。

・勤続20年以下:40万円 × 勤続年数

・勤続20年超:800万円+70万円 ×(勤続年数-20年)

例えば、AさんとBさんが30年間働いた場合、Aさん:30年連続勤務 → 控除額1500万円(800万円+70万円×「30年-20年」)

Bさん:20年勤務、転職して10年勤務 → 控除額1200万円(800万円+400万円)となり、同じ30年間働いても、転職したBさんは転職しないAさんよりも控除額が小さくなります。税制によって、Aさんのような長期勤続者を優遇、Bさんのような転職者を冷遇しているわけです。政府は経済界の要望を受けて、23年から「労働移動(転職)の促進」「成長産業への人材移動」を政策課題に掲げました。そして「長期勤続者だけを税制で優遇する仕組みは、転職をためらわせる要因になっている」とし、「骨太の方針」に退職金税制の見直しを明記しました。ところが、それから3年経っても税制改正は行われておらず、長期勤続者を優遇、転職者を冷遇する仕組みが続いています。長く日本の長期雇用を支えてきた退職一時金の見直しは、いわば働き方改革の総仕上げ。企業・組合・政府が協力し、知恵を出し合い、新しい日本の働き方を作っていきたいものです。


日沖 健 :経営コンサルタント2026/6/8(月) 7:00配信



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退職金は通常の給与とは異なり、「退職所得控除」という優遇措置があるため、税負担を大きく抑制することが可能です。退職金制度を廃止すると、企業は退職金という後払い用の賃金を積み立てる必要がなくなるので、積み立てに回していた賃金を現時点の給与に上乗せすることが可能になる。従業員にとっては、目先の賃金が増えるというメリットが期待できるが、「退職所得控除」という優遇措置がなくなるため、退職金制度がある場合に比べて生涯の税負担が重くなってしまうというデメリットがあることには注意が必要だろう。退職金がなくなると退職金で「住宅ローンを全額返済しよう」「大きな買い物をしよう」という考え方を持っている人にとっても困るのではないでしょうか。それに退職金制度をなくせば社会保険料負担も増えてしまうことについて知らない人が増えていることも事実だと思います。もう1度税金や社会保障制度の仕組みについてちゃんと勉強しなおした方がいい人が増えているのではないでしょうか。


2026年5月24日日曜日

新NISA・つみたて投資枠で〈債券ファンド〉解禁も…「正直、いまはオススメできない」納得の理由【FPが「債券投資の注意点」を解説】

 2026年4月の税制改正により、新NISAのつみたて投資枠で「債券ファンド」の運用が可能となりました。株価暴落時のクッション役として期待される債券ですが、特有のリスクを抱えていることはご存じでしょうか。YouTubeチャンネル登録者数40万人超の人気FP鳥海翔氏が、債券投資の基本と、新NISAの非課税枠で債券を買うことの合理性を検証します。

〇NISA制度改正で「債券ファンド」解禁

2026年4月1日、NISA制度が大きく改正されました。つみたて投資枠でこれまで対象外だった「債券ファンド」が、ついに投資対象に加わったのです。資産形成の段階では「株式100%」で運用する方法が主流ですが、60代以降、資産を取り崩す段階に入ると「株式だけの値動きは不安だ」と感じる人も多いでしょう。そのため、選択肢が増えることは喜ばしいことです。しかし……はたして、NISAという「貴重な非課税枠」を使ってまで債券を運用すべきなのでしょうか。今回は、特に「安定運用」や「資産の取り崩し」を意識している人に向けて、債券投資のメリットと、見落とされがちなデメリットを整理していきます。

〇「ローリスク・ローリターン」な債券投資の意外な罠

まず、債券という商品の性質をおさらいしましょう。株式が企業の業績によって価格が大きく変動する「ハイリスク・ハイリターン」な商品であるのに対し、債券は「ローリスク・ローリターン」の代表格です。債券は、国や企業にお金を貸し、その見返りに利息を受け取る仕組みです。基本的には発行体(企業など)が倒産しない限り、満期まで保有すれば投資した元本と利息が約束されており、極めて予測可能性が高い商品といえます。

〇債券は「物価上昇」に勝てない

一般的に「株と債券は逆の動きをする」といわれます。株が下がったときに債券が値上がりし、株が上がったときに債券が値下がりするため、両方持っていることで資産全体の値動きを安定させる効果があります。そのため、「ポートフォリオには債券も分散して組み入れるべきだ」という意見も少なくありません。しかし、債券には「物価上昇(インフレ)に極めて弱い」という、明確なデメリットがあるのです。物価が上がると、政府は景気を冷やすために金利を上げます。金利が上がれば、新しく発行される債券の利回りは高くなります。しかし、過去に「低い金利で発行された債券」を持ち続けている人はどうなるでしょうか。たとえば、物価上昇率2%のときに利回り2%の債券を購入し、その後物価上昇率が3%に上がったとします。この場合、保有している債券の利回りは2%のままですから、実質的な価値の下落です。さらに、その低い利回りの債券を売ろうとしても、より高い利回りの新発債が出回っている状況では、価格を大きく下げ、利回りを高めなければ買い手は現れません。つまり、物価が上がり金利も上がる局面では、債券を持ち続けても損、売っても元本割れという「打つ手なし」の状態に陥るリスクがあるのです。

〇では「債券ファンド」はどうか?

今回、新NISAで買えるようになるのは「債券」ではなく「債券ファンド」です。ファンドはさまざまな時期に発行された債券の詰め合わせであるため、生の債券よりは利回りが平均化されますが、金利上昇による価格下落の影響は避けられません。インフレが長引くなか世界的な金利上昇が警戒されている現在の相場環境を鑑みると、「いまはオススメできない」というのが正直なところです。またここで、NISA制度の本来の目的を考えてみましょう。NISAは「利益にかかる税金をゼロにする」制度です。そもそも利回りが低く、大きな利益が期待しにくい債券を、生涯1,800万円という限られた非課税枠に放り込むことは、本当に効率的でしょうか。債券ファンドは特定口座(課税口座)でも購入可能です。せっかくの非課税メリットを最大限に活かすのであれば、より高いリターンが期待できる株式に枠を使い、債券は枠外で持つという考え方もあります。

〇NISAで債券ファンドを「検討すべき人・避けるべき人」の特徴

もちろん、すべての人にとってオススメできないわけではありません。次のような人には検討の余地があります。

・すでに取り崩し可能な十分な資産(生活費10~20年分など)がある

・資産を増やす必要性よりも、精神的な安定(評価損に耐えられない)を優先したい

一方、これから資産を大きく育てたい段階にある人や、なんとなく「分散投資=債券」というイメージだけで選ぼうとしている人は、避けたほうが無難でしょう。投資スタイルに「正解」はありません。したがって、債券に潜むインフレリスクを正しく理解したうえで、自身のライフプランにとって本当に必要なのかを「あなた自身の基準」で判断することが大切です。


鳥海翔

株式会社Challenger代表取締役

FP(ファイナンシャル・プランナー)/投資家


THE GOLD ONLINE


2026年5月19日火曜日

サムライ債、ショーグン債ってなに?

 サムライ債やショーグン債という言葉を聞いたことがありませんか。今回はその説明をします。

〇サムライ債とは

サムライ債(サムライさい、Samurai bond)は外国債券(外債)の一種であり、日本に居住していない海外の発行体(国際機関、外国政府・政府関係機関、外国民間企業)が、日本国内市場で募集(公募)・発行する円建て債券。日本を連想する言葉として「サムライ」の名があてられており、正式には円建外債という(※ただしより厳密には、広義の円建外債には、サムライ債には含まれない、例えば中国企業が米国内で募集するような債券も含むため、1対1の関係ではない)。発行時に日本円で払い込み、利払い・償還金も日本円で支払われるのが一般的だが、利払いを外貨にするエイバース・デュアル債、償還金を外貨にする順デュアル債などもある。日本法を準拠法とし、金融商品取引法に則って開示書類を作成し、原則として債券管理会社を設置する。

・概要

サムライ債の発行者側から見た利点としては、日本市場の規模の大きさからして巨額の資金を比較的低利で調達できる点、資金調達手段を多様化できる点があるが、欠点として日本市場特有の流動性の低さなどがある。日本国内の投資家側から見た利点としては、円建てであることから為替リスクが無い点、日本国債や日本企業の社債に比べて金利が高い点があるが、欠点として発行主体が海外にあるため信用リスクを評価しづらい点がある。最初のサムライ債は、1970年12月にアジア開発銀行が発行した60億円の債券であり、その背景には国際収支の黒字拡大と外貨準備の急増があった。当初は国際機関や政府機関などの公的機関によるストレートボンドのみだったが、1979年からは民間企業による起債が始まり、1996年には発行体の格付規制が撤廃されて途上国からの起債が活発化するなど、発行体や商品性の多様化が進んでいる。2001年にはアルゼンチン政府が起債したサムライ債が事実上デフォルトとなり、リスクの高さが改めて浮き彫りになった。

〇ショーグン債とは

海外の発行体(政府、企業、国際機関など)が日本国内で募集・発行する外貨建て債券のこと。正式には「東京外貨建て債」と呼ばれており、元本の払込み、利払い、償還などは全て外貨建てで行われます。当然為替差損益が発生するというリスクがあります。



2026年4月24日金曜日

不動産投資って怖いよ。

不動産投資の知識がないままに悪い業者に引っかかると、ローン組んで買ったのにいきなり3000万円一括請求の末路。自分でサインをしたら「知らなかった」では済まされないから、情弱のまま手を出した瞬間に人生が崩壊する世界。僕自身は不動産投資をやっていませんがブログでも不動産投資について書いていこうと思います。
@kazubonka

不動産投資って怖いよ。 不動産投資の知識がないままに悪い業者に引っかかると、ローン組んで買ったのにいきなり3000万円一括請求の末路。自分でサインをしたら「知らなかった」では済まされないから、情弱のまま手を出した瞬間に人生が崩壊する世界。

♬ オリジナル楽曲 - kazubonka

2026年3月17日火曜日

整理銘柄、監理銘柄って何?

 よく株式投資欄を見ていて整理銘柄、監理銘柄という言葉が出てきますが解説します。

〇整理銘柄

証券取引所が定めている上場廃止基準に該当し、上場廃止が決定された銘柄のことです。 東京証券取引所では、2008年1月15日より「整理ポスト」という表現の使用をやめ、「整理銘柄への指定」としています。上場有価証券の上場廃止が決定された場合、原則として、1ヵ月間「整理銘柄」に指定し、その事実を投資家に周知させ、投資者が整理銘柄の売買を行うことができるようにしています。


〇監理銘柄

上場銘柄が上場廃止基準に該当するおそれがある場合に、投資家にその事実を周知するため、証券取引所により指定された銘柄のことです。


〇特設注意市場銘柄

有価証券報告書等の虚偽記載、不適正意見や、上場契約違反等の上場廃止基準に抵触するおそれがあったものの、金融商品取引所による審査の結果、影響が重大とは言えないとして、上場廃止には至らなかった銘柄のうち、内部の管理体制等の改善が必要で、継続的に投資家に注意喚起するために取引所が指定している銘柄のことを特設注意市場銘柄と言います。これに指定された銘柄は、「特設注意市場」に置いて、通常銘柄とは区別されて売買取引が行われます。



NISAのメリットデメリット

 〇NISAってどんな制度なの?

NISA(ニーサ)とは、少額からの投資を行う人のため2014年からスタートした「少額投資非課税制度」のことで、購入した金融商品(株式・投資信託など)から得られる利益がまるまる非課税になる制度です。


〇NISAのメリット

メリット①投資で得られた運用利益が一生涯非課税

本来、株式や投資信託などの金融商品に投資した場合、これらを売却して出た利益に対して約20%は税金でもっていかれてしまうのですが、NISA口座で投資した場合、税金がかからないため利益をまるまる受け取ることができます。

メリット②金融庁の基準を満たした商品に投資できる

NISAのつみたて投資枠で購入できる商品は、金融庁の定める基準を満たした商品のみです。いずれも「長期・積立・分散投資」に適した、低コストの商品が揃っています。

世の中で購入できる投資信託は6,000本以上もありますが、品数が絞り込まれているので、投資初心者でも選びやすいのがメリットです。

メリット③少額から気軽に資産運用ができる

少額から投資を始められるのもNISAの魅力の一つです。金融機関によっても変わりますが毎月100円から投資できる商品も沢山あります。

1,000円、1万円など、生活に負担をかけない範囲で長期的に資産形成を目指すことができます。


〇NISAのデメリット

デメリット①選べる金融商品が限定されている

NISA口座では株式や投資信託など、一定の条件を満たす商品しか購入できず、一般の証券口座と比べて選択肢が狭くなるため、自由に商品を選びたい人には制約と感じられることがあります。

デメリット②NISA口座は一人一口座、一つの金融機関でしか開設できない

お得なNISA口座ですが、開設できるのは一人につき一つの口座までである点には注意が必要です。

また、一つの金融機関でしか開設ができないため、複数の金融機関でNISA制度を使用するということはできない点に気を付けましょう。

デメリット③元本割れの可能性もある

前提の話となりますが、NISAで購入できる商品は投資信託、ETF、株式などになります。iDeCoのように定期預金などを選択することはできないため、NISAを利用する際には元本割れの可能性があることを認識しておく必要があるでしょう。

デメリット④NISA口座は損益通算や繰越控除ができない

一般的に、複数の口座で投資信託等の商品を購入して運用を行っている場合、利益から損失を差し引くことで、税金がかかる所得を減らすことが可能です。これを損益通算と言います。しかし、NISA口座で運用している分は他の特定口座や一般口座での運用分と損益通算することができません。従って、他の口座と損益通算をしようとして、NISA口座での運用資産を慌てて売却してしまわないように注意が必要です。また、損益通算を行ってもなお、損失がでてしまうという結果になった場合には、その損失を翌年以降最長3年間にわたって繰り越して利益と相殺することができる、繰越控除というものがあります。

デメリット⑤年間の投資上限がある

NISAの投資上限の総額は1,800万円であり、年間に投資できる金額の上限も決まっています。最大で、つみたて投資枠と成長投資枠を両枠合わせて年間360万円までが一年間で投資できる金額の上限となります。従って、手元に例えば500万円があるとして、それを今すぐNISAで運用したいと思っても、500万円を一括で投資することはできません。360万円と140万円に分けて2年間かけて投資を行うなど、年間上限額を超える場合には、何年かに分割をして投資を行う必要があります。

デメリット⑥債権を購入できない

購入した金融商品(株式・投資信託など)から得られる利益がまるまる非課税なので債権から得られる利益(利息)は非課税にはできません。

デメリット⑦配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」とする必要がある

配当金の受け取り方法には「株式数比例配分方式」「一括振込方式(登録配当金受領口座方式)」「配当金領収証方式」「個別銘柄指定方式」があります。

株式数比例配分方式:各証券会社にお預けの株式などの数量に応じて、配当金をお客様の証券口座で受け取る方法です。

一括振込方式(登録配当金受領口座方式):保有する全ての株式などの配当金を一つの銀行口座で受け取る方法です。

配当金領収証方式:発行会社から郵送される配当金受領証を、ゆうちょ銀行などの窓口まで持参し、配当金を受け取る方法です。

個別銘柄指定方式:ご指定の銀行口座などで配当金を受け取る方法です(銘柄ごとのお手続きが必要です)。

株式の配当金を非課税にするためには「株式数比例配分方式」にしないとだめなんです。これに指定するとNISA口座を持っていない証券会社の株式も全て「株式数比例配分方式」で受け取ることになります。配当金を銀行で受け取りたい場合は一括振込方式(登録配当金受領口座方式)にしておき、NISAでは投資信託を購入するようにすればよいと思います。





2026年2月11日水曜日

確定申告書提出しました。

 確定申告書提出しました。

「会社経営の行き詰まり→社長の破産」を回避可能に…2026年施行予定「早期事業再生法」の概要

 会社経営には波があり、いつも順風満帆というわけにはいきません。しかし「いよいよダメ」という局面になったとき、経営者自身の破産は避けられないのでしょうか? ここでは、会社倒産と代表個人の債務整理の関係のほか、2026年施行予定の「早期事業再生法」の概要を見ていきましょう。司法書士の加陽麻里布氏が解説します。

〇手遅れになる前に会社を立て直す…「早期事業再生法」とは?

会社経営において、資金繰りや業績の悪化といった「経営の行き詰まり」は決して珍しいものではありません。そのようななか、多くの経営者が恐怖を感じるのが、「会社が倒産したら、自分(代表・社長)も破産しなければならないのか?」という点です。2026年に施行が予定されている「早期事業再生法」は、こうした「手遅れになる前段階」で会社を立て直す、新たな制度として注目されています。この新制度を起点に、会社倒産と代表個人の債務整理の関係について、順を追って見ていきましょう。

(1)制度の概要

早期事業再生法(仮称)は、経営が悪化し始めた比較的早い段階で、会社の事業再生を図ることを目的とした新しい法制度です。従来の民事再生や破産と比べると、

●まだ債務超過や支払不能に至っていない段階

●事業自体には再生可能性がある段階

での利用を想定している点に特徴があります。

(2)施行が検討されている背景

この制度が検討されている背景には、次のような事情があります。

●民事再生は「遅すぎる」ケースが多い

●破産に至る前に、選択肢が事実上なくなっている

●経営者が「倒産=破産」と考え、早期相談をためらう

結果として、本来は立て直せたはずの企業が、破産以外の選択肢を失ってしまうという問題が指摘されてきました。

(3)民事再生・破産との違い

早期事業再生法は、あくまで「再生」を前提とした制度です。

●破産:清算が目的(事業は終了)

●民事再生:法的再生だが、開始時点で相当程度悪化していることが多い

●早期事業再生法:悪化初期での再生を想定

という位置づけになると考えられています。

〇早期事業再生法は「使える段階かどうか」の見極めが超重要

次のような状況にある場合は「早期事業再生法」の利用をお勧めすることができます。

○ 一時的な資金繰り悪化にとどまっている

○ 事業モデル自体は成立している

○ 金融機関との関係が完全には壊れていない

○ 経営者が早期に相談できている

次のような状況にある場合は「早期事業再生法」の利用はお勧めできません。

× すでに支払不能に陥っている

× 長期間の粉飾・資金流用がある

× 主要な取引先・金融機関との信頼関係が崩壊している

× 事業自体に継続性がない

この制度は万能ではなく、「使える段階かどうか」の見極めが非常に重要になります。

〇「早期事業再生法を使えない場合」の立て直し手段

早期事業再生法が使えない場合でも、直ちに破産しかないわけではありません。次のように、会社の状況に応じた選択肢があります。

●私的整理(リスケジュール・任意交渉)

●事業譲渡による再編

●第二会社方式

●民事再生

重要なのは、「どの手続が使えるか」よりも「いつ相談したか」です。

〇「立て直しが難しい場合」の対処方法(倒産手続)

事業の継続が現実的でない場合には、会社としての倒産手続を選択することも、経営判断のひとつです。

●破産手続

●特別清算(条件が整う場合)

倒産は「失敗」ではなく、法的に整理して次へ進むための手段でもあります。

会社が倒産した場合、代表(社長)も債務整理が必要か?

多くの経営者にとって「会社が倒産した場合、代表(社長)も債務整理が必要か」という点が、最大の関心事だといえます。代表の債務整理が必要になるケースと、そうはならないケースをそれぞれ見ていきます。

(1)代表の債務整理が「必要になるケース」

●金融機関借入に個人保証をしている

●代表個人名義の借入がある

●会社債務を個人で肩代わりしている

日本の中小企業では、代表者の個人保証が付いているケースが多いため、会社倒産と同時に、代表個人の債務整理が必要になることは珍しくありません。会社が融資を受ける際は、基本的に代表者が連帯保証人となるケースが多いです。この場合、会社の債務整理を行っても、代表個人の連帯保証債務はなくなりません。

会社の破産となると連帯保証額も巨額となるため、基本的には代表も自己破産または個人再生で債務整理を行うことになる場合が大半です。

(2)代表の債務整理が「不要なケース」

次のような場合は、会社が倒産しても、代表個人は破産せずにすむ可能性があります。

●個人保証が付いていない

●代表個人の借入がない

●会社と個人の資産・債務が明確に分離されている

つまり、会社の借金に対して、代表が責任を負っていないというケースです。連帯保証もないため、代表個人が債務整理を行う必要はない状況となります。

〇事前対策…会社倒産時、「自分の資産」まで失わないために

重要なのが、問題が起こる前の「事前対策」です。

●個人保証の内容を把握しておく

●会社と個人の資金を明確に分ける

●安易な追加保証・連帯保証を避ける

●早期に専門家へ相談する

倒産時に慌てて動いても、選択肢はほとんど残っていません。資産を守れるかどうかは、「倒産前の行動でほぼ決まる」ということを、覚えておきましょう。

〇「倒産」「破産」以外の選択肢を持てる可能性

早期事業再生法は、「倒産か、破産か」という二択しかなかった状況を変える可能性を持つ制度です。しかし、どの制度を使うにしても、早期の判断と専門家への相談がなければ意味を持ちません。会社が苦しいときこそ、「会社の問題」と「自分個人の問題」を切り分けて考えることが、経営者自身を守る第一歩になります。


THE GOLD ONLINE 2026/2/11


2026年1月24日土曜日

経営不振でも不祥事でもない…あえて「上場廃止」を選ぶ日本企業が続出している裏事情

 2025年、東証で上場廃止する企業は100社を超え、過去最多を記録した。中央大学の近廣昌志准教授は「上場企業としての優位性が薄れ始めている。アクティビスト(物言う株主)の拡大や配当性向のプレッシャーから、上場廃止を目論む企業は今後も増えるだろう」という――。

〇投資家が「上場廃止」に注目する理由

上場廃止は、多くの場合、市場価格より高く買い取られるなど「上場廃止利得」が得られるため、次はどの企業が上場を廃止するのか、これを見極め予測することは株式投機のひとつの戦略だ。2025年の上場廃止企業の割合は、東証プライム上場会社数1599社のうち45社で約2.8%、東証スタンダード1568社のうち59社で約3.8%、東証グロース613社のうち21社で約3.4%と、実数も割合も増加している。上場廃止の理由を見ると、TOB(株式公開買付け)が圧倒的に多く、買収・合併とMBO(経営陣による自社買収)が続く。この増加傾向は2026年以降も続くとみられる。上場企業であることは、良い人材を採用するうえで最も重要な要件のひとつで、これまで上場コストや上場維持コストをかけてでもそのステータスを維持しようとする企業が多かった。しかし、ここへきて流れが変わろうとしている。

〇上場時点で「乗っ取り」リスクが生まれる

「証券市場は企業の資金調達のためにある」という教科書的な解釈を信じている人は少なくないだろう。しかしIPO(新規株式公開)で新たに上場企業になる場合であっても、必ずしも資金調達を目的としているとは言えない。IPOは、創業者やベンチャーキャピタル等のEXIT戦略としての意味合いが大きく、創業者が保有する株式の一部を一般に売却するだけなら資本金を増やすことにはならない。それを「ダイレクトリスティング」と呼ぶ。上場企業になるためには、証券取引所の定める基準を満たし、IRに関わる費用がかさんでしまい、そもそも会社のことを色々と公開しなければならなくなる。それよりも何よりTOB等で買収される可能性に怯えることになる。2025年末には、小林製薬の筆頭株主が香港系の投資ファンド「オアシス・マネジメント」になり大きな話題になった。このファンドは市場でじわじわと小林製薬の株式を買い増していたのだ。これを批判する意見も見られるが、上場している以上、文句を言うのはお門違いだ。

〇「狙われやすい企業」の4つの共通点

経営陣が株式を買い占めて非上場化を目指すMBOのためには、上がりすぎた自社の株価下落はチャンスになる。一方で、時価総額が大きいと、買収する側も障壁が高くなり買収される蓋然性は低くなる。そもそも、どのような上場企業がTOBのターゲットになりやすいのかという観点から、4点ほど紹介したい。第1に、1株当たりの利益に対して株価が比較的低い、時価総額が小さい企業だ。業績自体は悪くないのに同業種よりも株価が低迷していると、当然のこととしてTOBでも狙われやすい。だからこそ、経営陣はMBOを真剣に検討するのだ。第2に、ファミリー色の強い企業だ。特にオーナーによる企業統治が鮮明な企業も、上場を維持して同意なき買収に巻き込まれるより、MBOを選択するインセンティブは大きい。さらに高配当の企業は、利益を創業家に還元しており、配当に回すより新事業に振り向けたほうが長期的に企業価値は高まると考えられる。むしろ事業拡大ができていない企業は狙われやすいともいえる。

〇投資ファンドにとって魅力的に映るもの

第3に内部留保の多い企業にも注目が必要だ。内部留保とは経営上の概念で、財務諸表で言えば利益剰余金を指す。内部留保が大きいからと言って、流動性資産(現金・預金)が大きいとは限らないが、本業に直接関係のない資産を売却して配当に回せる余地が大きいとも言えることから、TOBを仕掛けられる余地も大きい。第4に本業以外に関わる資産が大きい企業だ。これはアクティビストにとって、とても魅力的に映る。典型的な事例は、本業の事業とは別に、保有不動産からの収益が大きい企業だ。株価にとってROA(総資産利益率)を上げることは最も重要な観点で、同じ利益ならバランスシートが小さいスリムな企業のほうが株式市場の評価は高くなる。保有する不動産をことごとく売却して得られる流動資産を配当に回すことは、株価を上昇させる手っ取り早い方法だ。

〇非上場でも立派な企業はたくさんある

上場企業であるかどうかは、今でも就職活動中に学生にとって大きな基準であることに違いはない。親が安心するから、生涯年収が良いから、企業年金があるから等、学生たちは関心のある業種や企業風土よりも「上場企業であるか」を重視してきた。これこそが上場企業が上場を維持する最大の理由といっても過言ではない。一方で、新卒や転職の際の就職希望先に対する判断も多様化してきており、むしろ非上場企業の「穴場」や、すぐに成長機会を与えてくれる企業、年功序列ではなく実力が年収に直結する企業を選ぶ学生が増えてきていることも確かだ。筆者は大学のゼミ生に『四季報・未上場会社版』(東洋経済新報社)を見せて、世の中には非上場でも産業の基幹をなす立派な企業の存在を伝えている。未上場企業が持っている上場企業にない魅力を知ってほしいからだ。

〇上場のメリットよりデメリットが目立つように

上場企業を英語で“Listed Company”や“Public Company”という。Listedは言葉通り証券取引所のリストに挙げられるという意味で理解しやすいが、Publicについては「公共」と訳すものではない。Publicとは、対価さえ支払えば誰でもアクセスできる、つまり株式を購入すれば誰でも株主になれる会社という意味だ。だからこそ、四半期ごとの決算を公開する必要に迫られる。長年にわたり新規株式発行による増資を行っていない上場企業が、より多くの自社の情報を公開しなければならず、手間も費用もかかるのに、上場を維持し続けているのは、優秀な人材を確保するためだ。しかし、就活生や転職希望者の基準が変わりつつある今、企業にとって上場し続けるインセンティブもじわじわ低下している。未上場・非上場で社員の年収が高い企業が増えると、上場企業というブランド価値が薄れる一方、買収される可能性という「恐怖」が目立ち始める。だからこそ、MBOで上場廃止を狙う企業が今後も増えていくと予想される。これはTOBやアクティビストの介入を避けるためでもある。

〇「物言う株主」は企業にとって悪者なのか

アクティビストから口出しされる企業側からすると、短期的な株価上昇が求められ、創業者の理念や歴史などを軽視されると良い気はしないはずだ。だがアクティビストをはじめとする投資ファンドは、株価を上昇させたうえで彼らもEXITすることが目的なのだ。支配ではなく株価上昇が目的であれば、既存株主である創業家にとっても悪いことばかりだけではない。アクティビストが関わり、投資ファンドによる株式保有が増えると、その企業の株価が上昇しやすいことは,証券市場や企業統治の研究分野ではよく知られている。株価が上昇することと、企業業績が改善することとは必ずしも同義ではないものの、低迷するよりは、ROA上昇など根拠を伴う好調な株価のほうが歓迎すべきだろう。もちろんアクティビストが「物言う株主」だからといっても、株価が上がり続ける保証はない。ひとつ注意が必要なことは、アクティビストが有する株式を、時の市場価格を下回る価格で次のファンドに売り渡すこともあるという落とし穴だ。先述したアクティビストとしての投資ファンド「オアシス・マネジメント」は、昇降機メーカー、フジテックの株式を取得し、2020年1月の株価約1740円から2025年1月には6100円へと、3.5倍に大きく株価を上昇させた。その後、市場で6200円だったフジテックの株式を、2025年7月になんと1株5700円で売却すると発表した。オアシスとしては確実に次のファンドに売却するために「値引き」したことになる。

〇「外圧」に耐え続ける上場企業は偉い

上場を維持する企業は、それでも社会的に偉い。証券市場が十分に機能するためには、優良企業が上場した状態にいなければならない。企業が利益を出せるのはもちろん優秀な財やサービスを提供できる能力がある証左であるが、もう一つ、「配当」という利益を社会にパブリックに分配する仕組みは忘れてはならない側面だ。年金の運用も、だいぶ社会に浸透した投資信託も、株式市場のおかげで成り立っている。カラフルで妙なピンバッチを胸につけて連帯感を得るより、社会の中で利益を出し、そしてその利益が広く株主の配当となる、それこそが根本的な上場企業、そして証券市場の社会的責任というわけだ。

「物言う株主」を排除するために非上場を選ぶのか、「外圧」によって現状の課題を克服するのか――。資本主義がもっと効率的になることは社会的に歓迎されることではないか。

---------- 近廣 昌志(ちかひろ・まさし) 中央大学准教授 1978年広島県生まれ。中央大学商学部金融学科卒業。中央大学大学院商学研究科博士後期課程修了、博士(金融学)。愛媛大学准教授を経て2022年より現職。専門分野は貨幣金融論・貨幣供給理論。主な出版物に『60分でわかる金利 超入門』(監修)技術評論社 2025年、「通貨と銀行」(『入門銀行論』2023年、有斐閣、第2章の一部所収)、「管理通貨制と中央銀行」(『新版 現代金融論』2016年、有斐閣、第5章所収)他。ピアノという楽器が好きで、自身のYouTubeチャネル「ちかひろピアノ」を開設している。 

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2026年1月14日水曜日

「役立つ資格」「人気のある資格」には気をつけろ

 よく新聞や雑誌を見ていると「就職や転職に役立つ資格」「人気のある資格」という記事が掲載されているケースがある。はっきり言ってこういう記事に書かれていることを鵜呑みにするのはやめた方がいいですよ。というよりもこういう記事の内容を真に受けると悲惨な目に合うケースが多いという事実がある。

先日ネットニュースに次のような記事が出ていたので引用する。

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就職・転職に役立つ資格ランキング「FP」「宅建士」を抑えた、6年連続の1位は?

学びのメディア「日本の資格・検定」を運営する、CBTソリューションズ(東京都千代田区)は12月17日、「就職・転職に役立つ資格・検定ランキング」を発表した。1位は「日商簿記検定」、2位は「宅地建物取引士」、3位は「ファイナンシャル・プランニング技能検定/ファイナンシャル・プランナー」だった。調査は、818件の有効回答を基に就職・転職での評価実感、キャリア形成への貢献度、専門性の証明力などを総合的に評価した。

1位の「日商簿記検定」は、2021年から6年連続でトップとなった。企業の財務情報を正確に読み解き、お金の流れを理解する力は、どの職種でも重視される点が評価された。回答者からは「数字の仕組みを理解したことで面接での受け答えに説得力が出て、選考の通過率が上がった」(20代女性)などの声が寄せられた。

スキルアップを目的に学習を始める人が世代を超えて増えているほか、CBT方式(ネット試験)の導入により受験日程の選択肢が広がったことで、以前より受験しやすい環境が整っていることが要因と考えられる。

2位は「宅地建物取引士(宅建士)」で、不動産関連の法律や税務、建築知識を体系的に習得できるため、業界経験の有無にかかわらず実務において強みになる点が人気を集めた。回答者からは「不動産業で必須級の資格で、求人も多く転職に強いと感じ取得した」(30代男性)という意見が挙がった。電子契約やオンライン相談の普及により、従来の対面業務に加えてデジタルを活用した取引支援が求められていることから、宅建士の活躍の場はより拡大している。

3位には「ファイナンシャル・プランニング技能検定/ファイナンシャル・プランナー」がランクイン。暮らしに関わるお金の知識を体系的に学べる資格として、多くのビジネスパーソンから支持された。

回答者からは「金融や保険の基礎が身に付き、知識の証明にもなるので転職時に強みとなった」(20代女性)という意見があった。

●4位以下は?

4位以下は「TOEIC Listening&Reading Test」「マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)」「実用英語技能検定(英検)」「ITパスポート試験(iパス)」「社会保険労務士(社労士)」「自動車運転免許」「税理士」と続いた。CBTソリューションズは「ビジネスの共通言語となる基礎スキルが依然として強く、キャリアチェンジを支える専門資格のほか、デジタル・IT基礎資格の重要度が上昇している」とコメントしている。調査は818人を対象にインターネットで実施した。期間は10月15日~11月17日。


ITmedia ビジネスオンライン / 2025年12月31日 8時10分


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はっきり言っておこう。「有利な資格」「人気のある資格」というものは比較的「取得しやすい資格」が多いのが実情ですね。それも取得しやすいが役に立たない資格も少なからずありますね。

「マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)」「ファイナンシャル・プランニング技能検定/ファイナンシャル・プランナー」「ITパスポート試験(iパス)」は取得しやすくて役に立たない資格として有名ですね。「マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)」に関してですが今現在パソコンの初歩的な機能が使えるのが当たり前です。ワードエクセルの基本操作ができるのは当たり前です。資格を持っているかではなく「実際にどんな機能が使えるのか」「どういう作業をしたことがあるのか」ということが重要なんです。この資格を取得しましたと書くと自信がないから取得したものと思われる可能性が高いです。「ITパスポート試験(iパス)」に関しては一応国家試験ですが、情報処理技術者試験の中で一番簡単なのでIT系の会社では余評価されません。学生でかつ新卒の時であれば少々評価することもあるのかもしれませんが、余自慢できる資格ではありません。「ファイナンシャル・プランニング技能検定/ファイナンシャル・プランナー」も国家試験ですが3級2級は評価されません。1級を持っていれば一応かっこつけにはなりますが滅茶苦茶評価されるということはないです。よくAFPやCFPを取得した方がいいかということを聞く人がいますが、自分の財布で取りに行くことはやめましょう。金融機関であれば会社が受講費用や取得費用を支払ってくれる場合があるので会社のお金で取得する場合であればまだ理解できますけどね。間違っても学生や無職の人が自分の財布で取得しに行くことはやめましょうね。僕自身ファイナンシャル・プランニング技能検定1級を取得しているからはっきり言いますが自分の財布でAFP、CFPを取得した人を見ると余程自分に自信がないんだなと思ってしまいますね。日商簿記に関しては2級以上であればまあましですが3級であれば履歴書に書けません。それに日商簿記2級は商業高校の生徒でも取得しています。そういうレベルの試験なので転職に役立つかどうかは知りません。日商簿記1級であればある程度の評価はしてもらえますが、2級レベルは評価されません。職業訓練校等で事務系の講座を受講して日商簿記2級以上に合格できなければもう事務的な仕事は向いていないと思っていいと思います。日商簿記2級以上に合格できなければ税金に関することも理解することが出来ません。ですので日商簿記に関しては2級以上という書き方をしておくのが親切ですね。