2021年5月1日土曜日

【資産公開】政治家の「資産ゼロ」にはウラがある

 専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、政治アナリストの伊藤惇夫さんが、「資産公開」を解説します。


「資産ゼロ」にはウラがある

入閣以来、何かと話題の小泉進次郎環境相だが、2019年10月25日に公開された新閣僚の保有資産額でも注目を浴びることになった。なにしろ、新閣僚15人中トップの約2.9億円だ。もっとも、これはすべて夫人である滝川クリステルさんのもの。小泉氏自身の資産は「ゼロ」だというから、ちょっと驚きだ。「資産公開」は、1984年に中曽根内閣が始めた制度だ。当初は閣僚だけだったが、88年の政界汚職、リクルート事件を契機に、すべての国会議員(家族を含む)が対象になった。新たに入閣した閣僚についてはその都度、公開されている。公開対象は、保有する土地、建物や預貯金、有価証券、クルマ、ゴルフ会員権、貸付金、借入金などだ。ただし、この資産には「抜け穴」もある。預貯金については、当座預金と普通預金は対象外となるからだ。つまり、普通預金がいくらあっても、資産は「ゼロ」。ちなみに、2018年4月に公開された衆院議員465人の資産を見ると、「ゼロ」が70人もいる。


出典=『婦人公論』2019年12月10日号


議員の資産公開にはどんなカラクリが?進次郎氏はゼロ円、妻・クリステルさんは3億円の不思議


資産は2億9001万円 すべてクリステルさんが保有

9月に実施された内閣改造であらたに入閣した閣僚の資産が公開されました。もっとも資産額が多かったのは、小泉進次郎環境相で、金額は2億9001万円でしたが、本人の資産額はゼロとなっており、すべてが妻の滝川クリステルさんが保有するものでした。日本の資産公開はザルだとよく揶揄されますが、元首相の子弟である小泉氏が資産ゼロとなり、政治には直接関係しないクリステルさんの巨額資産が公開されるという状況に違和感を持った人も少なくないでしょう。国会議員は選挙の時や閣僚就任時に自身の保有資産について公開する必要があり、閣僚に就任する際には家族分も公開の対象となります。小泉氏は土地や預貯金、有価証券などの保有資産がゼロでしたが、妻のクリステルさんは、3億円近い資産を保有していました。クリステルさんは長く芸能活動を続けていましたから、このくらいの資産があってもおかしくありませんが、不思議なのが小泉氏です。いくら何でも資産額がゼロというのは不自然ですが、これにはカラクリがあります。


現金や普通預金は公開対象外

日本の資産公開制度では、現金や普通預金は公開の対象外となっており、何億円の資産を持っていても、銀行に普通預金している限りは公開されることはありません。議員の中には、ファミリーの一員に会社を経営させ、そこに資産を集中するといった工夫をしている人も多く、実際は多額の資産を保有しているにもかかわらず、それを見えなくすることは難しいことではありません。安倍首相の資産は1億円強となっていますが、よく知られているように安倍首相夫妻は首相公邸には住まず、渋谷区富ヶ谷の高級マンションから通っています。このマンションは安倍氏の父親である安倍晋太郎元外相の豪邸を建て替えて作られたものです。500平方メートルにもなるという安倍夫妻の部屋は母親の名義になっていますから、資産公開の対象にはなっていません。民主主義が発達している米国では、国会議員はもちろんのこと、一介の公務員も幹部になると資産公開の対象になるなど、公金を扱う人物に対するルールは厳しく設定されています。日本では、公開基準が抜け穴だらけとなっており、罰則規定もありませんから、事実上、資産公開は無意味な状況ですが、この無意味な制度を延々と続けているあたりが、何とも日本的といってよいかもしれません。


2019/11/5(火) 11:41配信