新聞をよく読んでいると「○○株式会社が自社株買をする」「今年自社株買をした金額が○○円だった」と言う話を聞きますね。自社株買をするメリットデメリットについて書きたいと思います。
〇自社株買いとは
自社株買いとは、企業が自社の株式を市場から買い戻す行為を指します。自社株買いを行うと、市場に出回る株式の数が減少するため、結果的に株価の安定・上昇の可能性が高まります。
○メリット
1、1株当りの純資産額や当期純利益額が増える
「1株当りの純資産額や当期純利益額」は発行済株式数から自己株式の株式数を引いた株式数で計算するため、自社株買をすればするほど1株当りの純資産額や当期純利益額は経営状態が同じであれば増えることになる。
2、株価が高くなる可能性がある
株価とは会社の業績だけでなく流通している株式数等によっても左右される部分があるため、業績が良くて自社株買をすれば株価が上昇する可能性がある(あくまでも可能性)。
3、株主への利益還元
自社株買を行うと前述の通り株式数が減り、株主にとっては1株当たりの利益配分が増えるため、間接的に 株主への利益還元 につながります。
4、財務体質の改善
株式数が減少することで、これまで株主に支払っていた配当金の支払い額も減少します。その結果、企業の財務体質改善という効果が期待できます。
5、敵対的買収リスクの低減
市場から買い戻すことで自社株の持ち株比率を高め、敵対的買収など外部から買い占められるリスク低減への対応策として自社株買いが行われる場合もあります。
6、ストックオプションへの活用
ストックオプションとは、自社株をあらかじめ定めた価格において購入できる権利を指します。このストックオプションで付与するための株式の調達方法として、自社株買いを用いるケースがあります。従業員は自社株を取得することで株主になり、業務をとおして企業価値を高められれば、個人資産を増やすことが可能です。企業への貢献や自身の働くモチベーションの向上にもつながることが考えられます。
7、非上場株式の現金化
非上場企業の場合、株式を保有する個人株主が相続などにおいて株式を現金化したい場合、企業に対して株式の買い戻し請求を行い、現金化するケースがあります。
企業側にとっては株主数が減少するため株主の管理がしやすく、株式の分散化を抑制できるという効果もあります。
○デメリット
1、自社株買をするために株主総会の決議が必要である
自社株買を行うにあたって株主総会が必要になるので会社側にとって手続きが増えることになる。
2、処分可能額以下の金額でなければ自社株買いが出来ない(業績が悪く配当可能額が少なければ自社株買いで切る金額も限られてくる)
3、株価が高いと当初予定していた株式数を自社株買出来ない場合がある
処分可能額(配当限度額)内でなければ自社株買が出来ないため、自社株買をする時に株価が高いと当初期待していた金額の自社株買が出来ても株式数を取得出来ない場合がある。
4、自社株買をするための資金が必要である。
自社株を市場から購入するための資金が必要になってくる。そのための現金預金があればよいのだがなかった場合、銀行等から資金を調達する必要が出てくる。企業の業績がよく投資格付け等がよければ資金調達できるが、調達できなければ自社株買自体出来ないことになる。
5、自己資本比率の低下
自社株買いは、手元のキャッシュ(自己資本)を使って行われるため、自己資本比率(自己資本÷総資本)が低下します。自己資本比率が低下することで財務リスクがあると見なされ、株主や投資家から懸念を持たれる可能性があります。
6、企業の成長を阻害
自社株買いは計画と実行に多くの時間や経営リソースを要します。企業はこれらのリソースを自社株買いに充てることで、他の重要な業務や戦略的な活動に割くことができなくなり、成長を阻害する可能性も考えられます。
7、取得した株式の処分で株価下落の可能性
自社株買いによって取得した自己株式の取扱い方法は、「資産として自社で保有」「売却して処分する」「消却」の3つがあります。
処分した場合、売却資金を獲得できる一方、売却した株式は市場に戻り、発行済株式総数が増える(元に戻る)ため1株当たりの利益は減少します。そのため株価下落の可能性も考えられます。
8、処分・消却には手間とコストがかかる
自社株買いで取得した株式の処分や消却には、手間とコストがかかるというデメリットがあります。企業が自社の株を買い戻したあとは、保有、消却、売却、などが考えられますが、処分する場合には手続きや費用が伴います。消却する場合は株主総会の承認や登記が必要となり、ある程度の時間と手間がかかります。
またストックオプションとして使用する場合(自己株式の処分)には、従業員に対するインセンティブとしての評価や、行使価格設定における慎重な検討が必要になるでしょう。
○その他
自社株買をするのは良いのだが、自社株買した株式をその会社がどのように活用しようとしているのかと言うことも見ておく必要性がある。買取った株式を「消却する予定なのか」「M&Aに活用するのか」「ストックオプション等に利用するのか」と言った方向についても見ておく必要性がある。