投資家から集めた資金をひとまとめにして、専門家が運用をする投資信託。投資信託は運用対象や分配方法などによってさまざまな種類に分けられます。その中の一つに「MMF」という商品があることはご存知でしょうか。本記事ではMMFの特徴や投資するメリット・デメリット、一般的な投資信託との違いなどを詳しく解説します。どの金融商品に投資すべきか迷っている方は参考にしてみてください。
〇MMFとは?
MMFは外国投資信託の一種で、一般的な投資信託と比べると安全性の高い商品とされています。外貨預金やMRFとの違いなども含めて、まずは特徴を把握しておきましょう。
・MMFとは?
MMF(マネー・マーケット・ファンド)とは、高い格付けの短期金融商品によって運用される投資信託のことです。米ドル・ユーロ・オーストラリアドル・カナダドルなどの外貨で運用されるため「外貨建てMMF」と呼ばれることも多くなっています。日本円で運用されるMMFは「マネー・マネジメント・ファンド」と呼ばれており、投資対象は似ているものの、外貨建てMMFとは別の商品です。日銀のマイナス金利が導入され、元本割れのリスクが出てきたため、運用難に陥ったMMFの繰り上げ償還が相次いだことから、現在円建てのMMFを買付することはできません。そのため、本記事では「外貨建てMMF」について解説します。MMFの主な投資対象は公社債やCP(コマーシャルペーパー)、CD(譲渡性預金証書)などです。なお、CPとは、企業が1年未満の短期で資金調達するための無担保の約束手形のことを指し、CDは、第三者に譲渡可能な自由金利の大口定期預金のことを指します。MMFは基本的に株式を投資対象に含んでいない点が特徴であり、一般的な投資信託よりも安全性を重視した商品といえるでしょう。ただし、ほかの投資信託同様に、元本保証があるわけではなく運用実績によって利回りが変化する点には注意が必要です。また、売買手数料はかからないケースが多くなっています(為替手数料はかかります)。
〇MMFと外貨預金の違い
MMFと外貨預金は「外貨で投資する」という点は共通しているものの、MMFは外国投資信託の一種であるため、特徴には以下のように違いがあります。
・MMF
利回り:運用成果によって変動する。外貨預金よりも高い傾向あり
元本保証の有無:元本保証なし
換金性:いつでも解約可能
倒産時の資産管理:証券会社の資産と分別管理されるため、倒産時でも資産は保護される
為替手数料:外貨預金よりも低めに設定されていることが多い
・外貨預金
利回り:日々変動する
元本保証の有無:外貨ベースで元本保証あり(為替差損益はある)
換金性:いつでも払出し可能
倒産時の資産管理:預金保険制度の対象外のため、資産は保護されない
為替手数料:MMFよりも高めに設定されていることが多い
〇MMFとMRFの違い
MMFと同じような公社債投資信託として、「MRF」と呼ばれる商品があります。MRFは「マネー・リザーブ・ファンド」の頭文字を取ったものでMMFと基本的に投資対象は同じです。しかし、MMFは総合口座を開設した後に都度購入する必要があるのに対して、MRFは総合口座への入金を済ませると自動的に運用されるといった違いがあります。また、MRFのほうがMMFより短期(残存期間の短い)かつ信用リスクを抑えた債券やCP、CDなどで運用されているといった点も違いです。証券会社の中には、株式や投資信託などを購入するときにMRFを自動的に売却して買付代金に充当し、逆に売却したときは売却代金で自動的にMRFを購入するといった、いわば「投資資金の置き場所」として活用できるところもあります。
・MMF
名称:Money Market Fund
投資先:国外
買い付けの有無:自己の判断による買い付け
手数料の負担:あり(会社により解約手数料や為替手数料が発生)
・MRF
名称:Money Reserve Fund
投資先:国内・国外
買い付けの有無:自動で運用される
手数料の負担:なし
〇MMFと一般的な投資信託との違い
MMFは流動性を確保しつつ安定した収益を追求する金融商品です。そのため、短期の国債や地方債、社債などを投資対象とし、最低1,000?1万円程度から1円単位で購入・売却できるようになっています。ただし、外貨で運用されるため、為替の動きが損益に影響する可能性があります。一方、一般的な投資信託は株・債券・不動産など、銘柄によって投資対象が異なるため、リスク・リターンは銘柄によって大きな違いがあります。また、最低購入額はファンドごとに基準価額は違いますが一般的に1口1万円前後からで、投資対象によって日本円で運用するものと外貨で運用するものに分かれているのも特徴です。
〇MMFのメリットとデメリット
MMFにはほかの金融商品と同様に、メリットとデメリットがあります。投資すべきか判断する際の材料にしてください。
・MMFのメリット
MMFは株式と比べて価格変動のリスクが低い公社債などで運用されているため、大きなリターンを得ることは難しいものの、安定したリターンを期待できます。また、投資信託の分配金は元本に再投資されるため、利息が利息を生み出す「複利効果」を得やすくなる点もメリットです。外貨預金は元本に対してのみ利息が発生する「単利」で運用される商品が少なくないため、外貨預金よりもMMFの方が利回りは高くなる傾向があります。さらにMMFを円高のときに購入し、円安になってから売却すれば為替差益を狙うことも可能です。例えば1ドル=140円のときに140万円分(1万ドル分)MMFを購入したとしましょう。これを、1ドル=150円のときに売却すれば、1万ドル×150円=150万円になり、差額の10万円が利益となります。そのほかに、いつでも解約できる点もMMFのメリットといえるでしょう。
・MMFのデメリット
MMFは投資信託の一種であるため、元本が保証されている商品ではありません。例えば市場金利が上昇すると、ファンドに組み込まれている債券の価格が下落して、MMFの価格が下落する可能性があります。また、円安時にMMFを購入し、その後円高が進んでから売却した場合には、為替差損を被るリスクもあるでしょう。あるいは、ファンドに組み込まれている公社債の発行体が財政難に直面し、債務不履行に陥るリスクも考えられます。比較的リスクの低い商品とはいわれているものの、損失を出す可能性が全くないわけではありません。