コロナ禍による自粛生活が長引く中、自宅にいる時間を利用して、資格取得の勉強や趣味のための通信講座に勤しむ人が増えている。さらには、必要とされる資格や人気の講座が、これまでと変わってきているという。せっかく時間とお金をかけるなら役立つ資格や知識を身につけたいもの──。最新の“資格事情”を探る。
◆稼げる資格は取る前に仕事の想定を
「資格取得はあくまでも手段です。どれを取るべきか考える際に大切なのは、何がしたいのか、目的を明確にすることです」と話すのは、キャリアカウンセラーの藤井佐和子さんだ。主な目的としては、資格を武器にして就職・転職をすることや、いまの勤務先で収入を上げることだ。あるいは、生活や子育て、人間関係などの問題を解決し、プライベートをより充実させたい、などがあげられる。こうした目的によって、選ぶ資格や心構えも変わってくる、というわけだ。「資格を取得することで仕事につなげたい場合は、未経験でもすぐに就職できるほど、その資格の需要が高いかどうか、住んでいる地域の求人情報などをリサーチする必要があります」(藤井さん)せっかく資格を取っても、実際に働いてみると、自分には向いていないと気づいて、使いこなせないケースも多い。そうならないよう、資格を取る前に、実際に働いている人の話を聞いたり、現場を体験して、取得後の仕事内容を想定しておくことも大切だ。たとえば、コロナ禍でも需要が高かった仕事の1つに、一般用医薬品を売る「登録販売者」があるが、これを取る前に、ドラッグストアなどでレジ打ちのパートをしておくと、資格取得後にどんな仕事ができて、いくら時給が上がるかなど、イメージがしやすくなり、就職にも有利になる。
◆これから役立つのはIT系の資格
では、アフターコロナにおいて、仕事に直結すると注目されている資格には何があるのか。「ずばり、IT系の資格です。ワードやエクセルなど、ある程度パソコンを使い慣れている人ならまず、プログラミングなどITの基礎知識を証明できる『基本情報技術者試験』に合格すると、就職に有利になります」と、資格取得アドバイザーの中村一樹さんが分析する。ウェブサイトの制作やデザインをするウェブデザイナーや、インターネットショップの立ち上げに役立つ「ネットショップ検定」なども注目度が上がっているという。「ウェブ業界は現状、男性が多いので、女性目線での提案ができるという点でも、今後必要とされると思います」(中村さん)
女性の取得者がまだ少ないうちに取っておいた方が、就職で有利になりそうだ。
◆生活に役立つ資格を仕事に生かす選択肢も
一方、日々の生活を充実させるために資格を取るのもアリだ。特に最近は、自粛中のおうち時間をより充実させたいと、野菜ソムリエなどの料理系の資格や、整理収納アドバイザーなど家事力向上のための資格の人気が高まっているという。好きなこと、得意なことに関する知識が深まるうえ、すぐに普段の生活に役立つという、実用性の高さも人気の所以だ。「しかも、こうした資格で収入を得て活躍している人もいます。たとえばYouTubeやブログ、インスタグラムなどのSNSで自分の技術や知識を発信して、ファンを獲得していく。それが著書出版などにつながり、有名になれば教室を開いたり、講演会を開くことも可能になります」(藤井さん)資格を利用して就職するより難易度は高いといえるが、不可能ではない。こういった仕事なら定年もなく、自分のペースで何才まででも働ける。5年後、10年後、どんな自分になりたいのかをイメージすることで、必要な資格が見えてくるはずだ。
◆800以上の資格を持つ中村さんが勉強法を伝授!
資格取得には、少なからず、勉強に時間をかける必要がある。とはいっても、家事や育児、仕事と、多忙な主婦が勉強時間を確保するのは難しい。だが、公認会計士などをはじめ、800以上の資格に合格してきた前出の中村さんは、「わざわざ時間をつくる必要はない」と言う。「資格の種類にもよりますが、ほとんどの勉強は暗記がメインになります。新たな知識を覚えようとしても時間が経つと忘れてしまうため、何度も反復する必要があります。ですから、まとまった時間をつくるよりも、移動中や病院などでの待ち時間、入浴中やトイレ中など、空き時間こそ暗記タイムにピッタリ。勉強をしようと身構えるのではなく、常に繰り返し暗記をする癖をつけておいた方が効率的です」(中村さん)覚えるべき項目を読み上げて録音し、その音声を運転中や料理中に聴きながら作業するのもおすすめだという。集中力は長く続かない。5分、10分単位で集中する機会を何度もつくるのがいいようだ。
◆「残念な資格事典」前は人気だったけど最近少し低迷気味…
コロナ禍でエステやネイルなどの美容業界の需要が減った影響で、美容系資格が低迷気味になるなど、誰もが知る資格にも逆風が吹いている。そこで、最近人気が落ちつつある資格の現状を紹介しよう。
■医療事務:コロナ禍とAI化で、短期的にも長期的にも需要減
「医療機関の受付業務や患者対応、診療報酬請求事務などを行うにあたり、持っていると就職しやすいといわれてきましたが、コロナ禍で医療機関に行く患者が減り、人員も縮小傾向に。将来的にも、AI化されて先細る可能性があります」(中村さん)
■弁護士:高収入の代名詞もいまは昔…
「取得は難しいものの、高収入が期待できる国家資格と思われてきましたが、持ってさえいれば仕事が来るというわけではありません。特に昨今、仕事がある人とない人の二極化傾向に」(中村さん)。取得後の研鑽と人徳がものをいうようだ。
■薬剤師:6年かけて資格を取っても、飽和状態で仕事がない
医師の処方せんに基づいて薬を調剤できる国家資格。現在は飽和状態で就職先を探すのが難しいという。「薬学部に6年間通って受験資格を得ますが、そのための時間と学費に見合った報酬が得られるかというと、厳しいのが現状です」(中村さん)。
■ウエディングプランナー:コロナ禍で活躍の場がさらに激減
結婚式や披露宴をプロデュースするために、持っていると箔がつく民間資格で、華やかなイメージに憧れる人も多かった。しかし、いまは結婚式をやらないか、自分たちで企画する形式が主流となったうえ、コロナ禍で式の中止が相次ぎ、需要が激減。
取材・文/桜田容子
※女性セブン2021年4月29日号
マネーポストWEB / 2021年4月20日 16時0分