2022年11月23日水曜日

金融庁、ネット不正送金対策強化 銀行業界に要請、偽サイト排除

 インターネットの偽の銀行サイトに個人情報を入力させる「フィッシング」という手口を使った不正送金被害の急増を受け、金融庁が銀行業界に対策強化を要請したことが20日、分かった。各銀行は偽サイトを排除し、ネット上の監視を徹底するなどの取り組みを加速。金融庁は実施状況を確認する方針だ。ネットバンキングの利用者に「不正ログインを検知した」などという、うそのメールやショートメッセージを送りつけ、記載したリンク先にアクセスさせ、本物のサイトと簡単に見分けがつかない偽サイトに誘導。キャッシュカードの暗証番号や、ネットバンキングのパスワードなどを入力させるケースが多い。


共同通信 / 2022年11月20日 16時41分




73%が詐欺メールの要注意ポイントを見逃しテクノロジーに詳しい人でもVisa調査

 テクノロジーに非常に詳しい人でも、詐欺メールなどに気づかないようだ。米Visaが11月16日(現地時間)に発表した調査レポートによると、半数近くが「自分は詐欺に引っかからない自信がある」と回答している一方、73%が要注意ポイントを見逃していた。ほとんどの消費者は、自分自身は十分に警戒できていると自負している一方、90%が友人や家族が詐欺メールの被害にあうのではないかと心配していた。ところが、詐欺メールなのか本物なのかをどこで見分けるかについて聞くと、企業名やロゴなど簡単に偽造できるものを選んだ人が81%にのぼった。「送信元のメールアドレスが有効なものかどうかを確認する」と答えた人は60%にとどまった。また「文章のつづりの正しさを確認する」と答えた人も47%しかいなかった。一方で、暗号資産の利用者は、詐欺かどうかを確認するポイントとして、適切なものを選択した割合が高くなったという。犯罪者がSMS詐欺で使う文言を解析したところ、トラブルやオファーへの反応を促すものが87%と最も多かった。最も巧妙にクリックを誘うメッセージは、「当選しました」「無料で差し上げます」「限定割引」「今すぐ◯◯を」という言葉だ。これに続くのが、問題が発生したとして、受信者に行動を促すものだった。この調査は、米国、カナダ、ブラジル、英国、フランス、ドイツ、オランダ、UAE、スペイン、イタリア、アイルランドの6000人を対象に、9月7日から14日にかけて、インターネット上で行われた。


ITmedia NEWS / 2022年11月18日 16時10分


2022年11月18日金曜日

「ねんきん定期便」を見ればわかる…厚労省がひた隠しにする厚生年金"支払い損"のカラクリ

 ねんきん定期便の「これまでの保険料納付額」には、個人負担分のみが記載されている。会社負担分の記載がないのはなぜか。新著『バカと無知』が話題の作家・橘玲さんは「それは、厚生年金が支払い損であることがバレてしまうからだ。この会社負担分がどこに回されるかというと、国民年金(基礎年金)の赤字の補?だ」という──。

■2065年には現役世代1.3人で高齢者1人を支える…

岸田政権で検討されている相次ぐ負担増への反発から、SNSでは《#自民党に殺される》がトレンド入りしたという。そこでいま、年金制度になにが起きているのかをまとめてみよう。話の前提として、人類史上未曾有(みぞう)の超高齢社会になった日本では、制度を支える現役世代の数がますます減り、「受益者」である高齢者の人数が増えていく。「現役世代(20~64歳)何人で高齢者(65歳以上)を支えるか」では、1950年には12.1人で1人の高齢者の負担を肩代わりしていたのに、2015年は2.3人で1人、2065年には1.3人で1人へと状況は急速に悪化していく(「令和2年版高齢社会白書」)。戦争や内乱、疫病の蔓延がないかぎり人口動態はほぼ変わらないので、これは予測ではなく「確実にやってくる未来」だ。

■コロナ禍で「ごまかせなくなった」

社会保険制度を破綻させず、「サスティナブル(持続可能)」なものにするためには、原理的に2つの方法しかない。「収入を増やす」と「支出を減らす」だ。政府・厚労省はこれまでいろいろとごまかしながら、少しずつこれを進めてきたが、コロナ禍以降、ほころびを取り繕えなくなり、いまやなりふり構わなくなってきた。それが、《#自民党に殺される》という反発の背景にあることをまずは確認しておこう。

■サラリーマンは年金の奴隷

サラリーマンが加入する厚生年金は、とんでもない「ウソ」によって成り立っている。といってもこれは「陰謀論」の類いではなく、年1回送られてくる「ねんきん定期便」を見れば誰でもわかる。そこには、「これまでの保険料納付額」と「これまでの加入実績に応じた年金額」の欄があり、それを比較すると、納付総額を大きく超える年金が受け取れるように思える。だがこれは、あなたが国に収めた年金保険料のうち、個人負担分しか記載されていないからだ。社会保険料の半額は、会社が肩代わりして支払っている。本来であれば、個人負担分と会社負担分を加えた倍の額が、社会保険料の納付総額として記載されるべきだ。

■サラリーマンの年金保険料は半分「詐取」される

ではなぜ、そうしないのか。いうまでもなく、厚生年金が支払い損であることがバレてしまうからだ。これを簡単にいうと、サラリーマンが収めた年金保険料のうち、およそ半分が国によって「詐取」されている。そのお金がどこに回されるかというと、国民年金(基礎年金)の赤字の補?(ほてん)だ。こうした仕組みがわかると、厚労省がなぜ厚生年金の適用拡大に必死になっているか理解できる。これは一般に、「パートなど短時間労働者が国民年金よりも多い年金を受け取れるようになる」と説明されるが、それにともなって保険料の会社負担が増えることはなぜかほとんど言及されない。経営側からすれば、社会保険料は人件費の一部だ。パートが厚生年金に加入すると、会社負担が増えた分だけ人件費予算は減る。この単純な理屈によって、厚生年金の適用拡大は、その会社の(パートではない者を含む)社員全員の賃金を抑制する大きな要因になるだろう。

■会社負担が増え、全員の給料は下がる

国からすれば、厚生年金は会社が保険料を取り立ててくれるおいしい制度だ。それに加えて、消費税の増税は政治的にきわめて困難だが、社会保険料の料率は国会での審議を経ずに厚労省の一存で決めることができる。こうして社会保険料の負担が年々重くなり、会社が賃上げしても社員の手取りは逆に減っていく事態になった。とはいえ、社会保険料の料率をいくらでも上げられるわけではない。そこで目をつけたのが、厚生年金をパートにまで拡大して保険料収入を増やすことだ。ほとんどのサラリーマンは、厚生年金の適用拡大をひとごと(あるいはよいこと)のように思っているだろうが、それは現役世代を犠牲にして、会社の利益を高齢者の年金に「流用」する巧妙な仕掛けだ。これによってさらに会社負担が増え、全員の給料が下がる(上がりにくくなる)ことをちゃんと説明しなければ、公正な報道とはいえないだろう。

■サラリーマンと自営業者は「基礎年金でつながっている」

一般には、サラリーマンが「厚生年金」に、自営業者などが「国民年金」に加入すると思われているが、これは正確ではない。厚生年金には「基礎年金」部分があり、これが国民年金に該当するからだ。厚生年金の基礎年金(いわゆる「1階」)は、国民年金と分離されているわけではなく、ひとつの器(同じ資金プール)に入れられている。その結果、国民年金が赤字になると、自動的に、その分が基礎年金から補?される。厚生年金の会社負担分が国民年金に流用されてもなんの問題にもならないのは、この手品のような仕組みがあるからだ。しかしそれでも、厚生年金の報酬比例部分に手をつけることは許されないとされてきた。基礎年金(1階)と報酬比例部分(2階)は分離されており、報酬に応じて増額された年金を受け取ることはサラリーマンの権利だからだ。

■ついに報酬比例部分まで「盗まれる」…

ところが日経新聞(9月28日付)に「国民年金『5万円台』維持へ 抑制策停止、厚生年金で穴埋め」という記事が出たことで、この前提が揺らいだ。厚労省は、(報酬に比例して)多額の年金保険料を収めてきた一部の高年金受給者の年金を減らし、それを基礎年金に充当することで、「大半の世帯で給付水準が上がる」と説明している。だがいったん報酬比例部分に手をつければ、それはとめどもなく拡大していくのではないか。このようにしてサラリーマンは、厚生年金の会社負担分のうち基礎年金を「詐取」されるだけでなく、報酬比例部分まで「盗まれる」ことになる。ここまで制度が歪(いびつ)になると、もはや正当化は難しい。いまさら積み立て方式に変えられないとすれば、消費税を大幅に引き上げて社会保険の経費に充てるか、雇用形態にかかわらず所得に応じて徴収する「保険税」を新設すべきではないだろうか。

■「保険料支払い期間64歳まで」の衝撃

厚生年金の適用拡大や、報酬比例部分の取り崩し以上に大きな衝撃を与えたのは、国民年金の保険料支払い期間を5年間延長し、64歳までの45年間にするという報道だ。これによって保険料収入が増えるので、将来受け取る年金の水準が下がるのを防ぐ狙いがあるとされる。しかし、ここには大きな問題がある。保険料負担が増える一方で、受給額が減っていくと、どこかの時点で収支が逆転して、「国民年金に加入すると損する」ことになってしまうのだ。そこで、簡単な計算をしてみよう。現在、国民年金の保険料は月額1万6590円(年額19万9080円)で、20歳から59歳までの40年間満額を収めた場合、65歳から終身で月額6万4816円(年額77万7792円)の年金を受け取ることができる。2021年の簡易生命表では、65歳時点の平均余命は男で19.85年(84歳)、女で24.73年(89歳)となっている。この条件が今後も変わらないとするならば、20歳の国民年金加入者は、これから40年で796万3200円を納め、平均的には、男で1553万9171円、女で1923万4796円を受け取ることが期待できる。これを積み立て型投資商品と見なし、運用利回りをEXCELのIRR(内部収益率)関数で計算すると、男が年率2.16%、女が年率2.67%になる。

■ついに維持困難に…

年金受給額は、インフレ率に応じて増えていくように設計されている。物価の上昇を完全にヘッジできるとするならば、国民年金は男で2%、女で2.5%のプレミアムを加えた(国家が支払いを保証した)無リスクのインフレ連動債ということになる。このように、国民年金はけっして損な投資商品ではない。というよりも、この条件であれば、加入しないことで大きな損失を被ることになる。少子高齢化にもかかわらず好条件が維持できたのは、年金制度に多額の税が投入されていることと、サラリーマンが納めた保険料が大規模に「流用」されているからだ。しかしいま、長期にわたってこれを維持することが困難になってきた。

■マクロ経済スライドの減額で生活保護増大可能性も

国民年金の受給額は、人口動態に合わせて、2004年に導入されたマクロ経済スライドによって少しずつ減額されていく。当初、これはインフレ率がプラスのときにしか適用されない(デフレでマクロ経済スライドを実施すると名目での受け取り額が減って政治問題になる)とされたが、もはやそんな悠長なことはいっていられなくなって、2015年からは問答無用で年金が減額されることになった。2019年に行われた財政検証では、これによって約30年後に厚生年金の水準が約2割、国民年金は約3割減るとされた。だがその後、コロナ禍で少子化がさらに加速したことで、年金水準の維持はさらにきびしくなった。年金受給額が現在の7割(月額4万5371円)に減額されたケースで試算すると、平均余命までの受給総額は男で1135万1874円(年利回り1.03%)、女で1346万4357円(年利回り1.60%)まで下がる。だがそれよりも問題なのは、毎月の受け取り額が現在より2万円ちかく減ることで、これでは生活できないひとたちが続出し、大挙して生活保護に移行しかねない(そうなれば当然、生活保護制度は破綻するだろう)。

■「45年間で約900万円納付、年金1100万円受給」に魅力はあるか

64歳までの納付期間延長はこうした事態を避けるためで、仮に受給額2割減に抑えられたとすると、保険料の支払い総額が895万8600円と12.5%増えるかわりに、毎月の受け取り額は月額5万1853円で、なんとか5万円台を維持できる。ただし、積立額(負担)が増えたことで、運用利回りは男で年0.98%、女で年1.52%まで下がる。だが、これで社会保障制度が安定する保証はない。そこで、あり得る可能性のうち(たぶん)最悪のケースとして、保険料納付期間を64歳まで延長しても年金受給額が現在より3割減るとすると、資産運用の利回りは男で年0.57%、女で年1.15%になる。男の場合、45年間で約900万円の保険料を納め、年金として1100万円あまりを受け取ることになるが、20歳の若者がこの計算を見せられて、年金制度に魅力を感じるだろうか。

■69歳まで保険料を納める「残酷な未来」

なお、現行制度のまま年金の受給開始年齢を引き上げていくことも考えられるが、同じように試算すると、68歳の支給開始での年利回りは男で1.71%、女で2.18%、70歳の支給開始では男で1.33%、女で1.85%に下がる。現実的なのは、「厚生年金の適用拡大」「厚生年金の報酬比例部分の取り崩し」「保険料納付期間の延長」「年金の受給開始年齢の引き上げ」「マクロ経済スライドによる受給額減額」のすべての組み合わせになるだろう。いずれは、20歳から69歳まで50年間保険料を納め、70歳から減額された年金を受給する「1億生涯現役社会」が到来すると予想しておこう。

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橘 玲(たちばな・あきら)

作家

2002年、小説『マネーロンダリング』でデビュー。2005年発表の『永遠の旅行者』が山本周五郎賞の候補に。他に『お金持ちになる黄金の羽根の拾い方』『言ってはいけない』『上級国民/下級国民』などベストセラー多数。

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(作家 橘 玲)

プレジデントオンライン / 2022年11月17日 13時15分


2022年11月13日日曜日

倒産件数が増加基調、「危ない企業の共通点」を帝国データバンクが解説

 帝国データバンクが11月9日に発表した2022年10月の全国企業倒産(法的整理かつ負債1000万円以上を対象)は、前年同月(512件)比16.0%増の594件となり、6カ月連続で前年同月を上回った。年上半期とは一転し、年下半期は増加基調に転じている。また、2022年1月~10月の累計件数は5214件となり、前年同期を168件上回っている。2021年の年間倒産件数は6015件で帝国データバンクが全国企業倒産集計の発表を開始した1964年以降、1965年(5690件)、1966年(5919件)に次ぐ歴史的な低水準となったが、増加基調に転じている現状を踏まえると2022年は過去最少を更新する可能性は低いとみられる。そうしたなか、今回は最近の大型倒産や話題性の高い企業の倒産において不適切案件が増えていることや、地域金融機関担当者から聞いたコロナ禍で倒産する企業の共通点について解説する。(帝国データバンク情報統括部阿部成伸)

●コロナ前の大型倒産で続出した 「粉飾」が再び増加の恐れ

近時発生した負債額が大きな倒産や話題性の高い倒産について経緯を調べると、周辺から「粉飾決算」「融通手形」といった言葉が聞こえてくる。振り返るとコロナ前の2019年の倒産動向の大きなポイントは「業歴の長い」「事業規模の大きい」「商品・サービス・店舗名の知名度が高い」の3要素を備えた優良企業において「数十年以上にわたる粉飾」が発覚。倒産に至るケースが続出したことだった。当時は地方銀行を中心とした金融再編が最終局面を迎えていた。それに伴って水面下で融資先の選別、デューデリジェンスが進められ、かつてない深掘りの実態調査が行われた例もあったと聞く。「長年融資取引してきた地場の有力企業の中には、実態は債務超過や不適切会計の疑いがあるなど問題を抱える先もありましたが、歴代の担当者の間では暗黙の了解となっていた」(某地銀支店担当者)というケースもあったようで、長年のしがらみで切るに切れなかった関係を見直そうとする過程でそうした不正が次々と明るみに出たのかもしれない。そして、2020年も同じ状況が続くと予想していたのだが、コロナが発生して状況は一変。金融機関は資金繰りに困った中小企業への融資対応で多忙を極め、既存融資先の定点管理や実態調査を十分に実施できなくなってしまった影響が大きかったのだろうか。不適切会計を理由とした倒産を全く目にしなくなった。それどころか、コロナ関連融資によって倒産件数は激減した。しかし今では、コロナ関連融資は行き渡り、据え置き期間を経て返済が始まる企業が日に日に増えている。つまり、これからについて検討し、話し合っていくタイミングでついに不正が隠し切れなくなり、息絶える企業が増えているとも考えられる。コロナ禍での経験を踏まえると、コロナ禍を境に業績開示しなくなった企業や急に役員が交代した企業、主力取引先が変更した企業、異常な業績伸長を見せている企業などには特に動向を注視する必要があると考える。

●コロナ禍で倒産する会社に 金融機関の新規取引先が多い理由

2019年に年間8354件だった全国企業倒産は、2020年に7809件(前年比6.5%減)、2021年は6015件(同23.0%)にまで減少した。コロナ関連融資をはじめとする中小企業支援策の執行による効果が大きく、コロナがなければ2020年、2021年に淘汰されていたはずの企業までもが延命された結果ともいえよう。しかし、そうしたなかでも倒産は日々発生している。コロナ融資が効かないほど業績が悪化したのか、経営者の士気が下がってしまったのか、主力取引先が倒産したのか、取引を打ち切られてしまったのか…などなど考えても机上の空論だ。そうしたなか、都内の地域金融機関(信用金庫、信用組合)の本部を訪れ、融資の担当者からコロナ禍で倒産する事業者の共通点について尋ねると、これまで知らなかったコロナ融資現場の実態が見えてきた。実際に質問を投げかけると、複数の地域金融機関の担当者から出てきたのは「新規取引先」という言葉だった。「区からの紹介などでこれまで当金庫と取引のない小規模事業者からの申し込みが一定数ありましたが、その中に倒産する事業者が多く見られます」(都内某信金幹部)コロナ融資の執行は全国的に2020年の5月、6月、7月頃に集中。そして多くの事業者は据え置き期間を1年以内に設定した。「1年後にコロナは収束しているだろう」という当時の人々の何となくの心理が影響していたのだろう。しかし、1年たってもコロナは収束しなかった。当然、据え置き期間を終えて返済が始まる事業者の中には、予定通り返済できない先が出始める。そんなとき、日ごろの金融機関とのコミュニケーションがその後の社運を左右することもあるようだ。

「新規先の倒産が目立っています。コロナ前から融資取引をしている事業者の多くは、ゼロゼロ融資、既存融資を問わず返済が厳しくなったら相談に来ますので(リスケジュールなどの)対応が可能です。しかし、ゼロゼロ融資で取引が始まった事業者を見ると事前に何の相談もなくある日突然事業を停止し、弁護士から受任通知が送られてくるケースが多いです」(別の某都内信金担当者)さらに続けて本音を漏らす。「相談してくれれば何とかなった先は多かったと思います…。新規先の倒産が相次ぐ要因は、金融機関との取引経験や情報量に乏しく『困ったら相談する』という発想がないことと考えます。コロナ融資が予定通り返済できない状況になったことを金融機関に知られたら大変だと考えていたのでしょう」(同)それまで融資実績がないような小規模事業者だからこそ、倒産しやすい状況にあったとも解釈できるが、困ったときに相談する発想がないという共通点の指摘は実に的確で納得できる背景だ。平時からの金融機関とのコミュニケーションは、有事の際のスムーズな再建への近道になると中小企業活性化パッケージで強調されたことは記憶に新しく、今後、中小企業が生き残っていくための不可欠なファクターといえる。来年春以降、再びゼロゼロ融資の返済が始まる企業が増加する時期を迎え、同時期における倒産動向を注目する金融機関担当者は多い。実際、帝国データバンクの調査では2022年9月の全国企業倒産件数は583件でそのうち負債5000万円未満の小規模倒産が356件(構成比61.1%)を占めており、小規模事業者ほど倒産リスクは高いことがデータからもわかっている。コロナ融資を受け、相談もなく突然事業を停止する小規模事業者はこれからも増えていくのだろうか。


2022/11/10(木) 6:02配信 diamondonline



「媚び営業」は絶対NG…儲かっていない「ジリ貧中小企業」が業績を改善する方法【公認会計士が解説】

 儲かっていない中小企業はには「粗利率が低い」という共通点があると、KMS経営会計事務所の代表である公認会計士・税理士の川崎晴一郎氏はいいます。今回の記事では、詳しくみていきましょう。

〇儲かっていない中小企業は「粗利率」が低い

失礼を承知で言うと、儲かっていない中小企業の損益計算書を見ると、これでは儲からないですよね、と一目でわかることが多いです。注目すべきは粗利率(売上総利益÷売上高)です。とにかくこれが低い。売上高が大きければまだよいのですが、中小企業なので売上高も大きくありません。売上高が小さく粗利率が低い場合、人件費や広告費といった販管費を賄うための粗利(売上総利益)を稼げないため、営業利益を確保できません。粗利率が低いのは多くの場合、値段設定が低いからです。いわゆるP戦略のミスです。競合他社に勝つためと、値段をあえて低く設定して勝負しようとしている場合はまさにこの状態です。また、競合ひしめく業界に新規参入した場合も、競合による値下げ合戦の結果として粗利率が低い状況からのスタートとなってしまいます。粗利率が低い商品・サービス自体を選択している時点で、その中小企業の負け戦がほとんど確定します。なぜなら、たくさん売れないと赤字になりますし、たくさん売るための仕組みを、儲かっていない段階の中小企業が用意するのは茨の道になるからです。たくさん売るためには人手が必要ですし、その人たちへの教育もしなければなりません。集客のためのマーケティング活動も必須です。設備投資をし、在庫も確保しなければなりません。利益がまだないしょっぱなの段階から、すでに多くの手間とコストがかかります。これにさらなる苦労が重なります。社員が増えれば社員間のトラブルが増えます。売上が増えるまで儲からない期間が続きますので社員の給料を増やせず、忙しい思いばかりをさせた結果、せっかく教育した社員が辞めてしまうこともあります。その上お客様の数が増えるわけですから、お客様のクレーム数が増えます。そして、そんな苦労をした割に、結局思っていたほどたくさん売れなかったりします。よくあるパターンなので身近な会社に思い当たる節はありませんでしょうか。ただでさえ経営資源が少ない中小企業において、たくさん売らなければ儲けられない構造にしてしまっていることは非常にリスキーなのです。たくさん売れなくても地獄、たくさん売るための茨の道も地獄であり、儲かる見込みが著しく低くなってしまいます。もともとたくさん売れる「確証的」な見込みがあったり、建設業や不動産業のように販売単価がとても高ければ、粗利「額」を確保できるのでよいのですが、そうでない限り粗利率は少なくとも50%は確保したいところです。粗利率が低く、そして売上も少ない「ジリ貧」の会社は、まず粗利率の改善を考えましょう。

〇粗利率を上げるには、まず「価格の見直し」から

そのために第一に考えるべきは、価格の見直し(値上げ)です。価格を見直す際は、堂々と「値上げします」といわずとも、値上げと気づかれないようメニューの組み合わせを変えたり、新サービスを導入したり、同じものでも見せ方を変えたりするなどして、しれっと行うことも考えられます。粗利率の改善の視点からは、値上げせずとも原価を下げることでも実現できます。企業努力で製造原価や仕入原価を下げることが第一ですが、低い原価で新しいメニューを構成し、既存の価格帯で売るという方法も考えられます。あるいは、既存のお客様を捨てて新しいお客様にシフトチェンジすることも粗利率向上の施策として有効です。粗利率が低いのは、御社の商品・サービスを提供するお客様の質が悪いからでもあり、「おたくみたいな商品なんてどこにでもあるし、別にそんなにほしくない」と思っている人に、「まあまあそういわずに買ってくださいよ、ほかよりも安くしますので」と、媚びて販売しているようなものなのです。プライドを持って作り出した商品・サービスであれば、もっと高く買ってくれる人はきっといるはずです。世のなかの全員に買ってもらう必要なんてありません。御社の商品・サービスを高く買ってくれる人を想定し、その人たちのニーズにマッチする形に付加価値を乗せて適切に届けることができれば薄利の商売になんてならないはずなのです。中小企業は何をおいても薄利を狙ってはなりませんし、薄利に追い込まれてもダメなのです。粗利率をできるだけ高く設定できるよう、よく考えてみましょう。高粗利率を確保することが、中小企業が儲かるようになるための最重要ポイントです。粗利率を〇%増やすことができたら営業利益がいくら増えるでしょうか。まずはワクワクしながらそんなことを考えてみてください。なお、販売数量を減らさずに粗利率を増やすことができれば最高なのですが、仮に販売数量が減ることになったとしても、営業利益が変わらない水準にキープできるのであれば、販売数量が減ることで省ける手間の分、実質的なプラスとなります。


川崎 晴一郎公認会計士・税理士

KMS経営会計事務所・株式会社KMS代表


幻冬舎ゴールドオンライン / 2022年11月7日 17時15分


2022年11月3日木曜日

112万人分の年金資産を放置、転職・退職時に必要な手続きせず…企業型DC

 企業が掛け金を払い、従業員が運用する企業型確定拠出年金(企業型DC)で、約112万人分の年金資産が放置された状態になっていることが1日、国民年金基金連合会のまとめでわかった。2017年度末から1・5倍になった。総額は昨年度末で約2600億円に上っている。転職時などに必要な手続きをとらなかったためで、運用機会を逃し、老後の資産形成に影響を及ぼす可能性がある。企業型DCの加入者は年々増加しており、全国で約780万人にのぼる。転職などで会社を辞めると加入資格を失う。積み立てた年金資産は、6か月以内に個人型確定拠出年金(iDeCo)などに移す手続きをしなければ、同連合会に自動的に移管され、その後は運用されない。同連合会によると、年金資産が自動的に移管された人は2021年度末で108万3116人おり、公表している17年度末の73万4243人から47%増えた。総額は2587億5200万円で37%増加した。1日に発表された9月末の自動移管者数は112万6145人だった。自動移管された資産は塩漬けにされるだけでなく、移管時に4348円、以後の管理に毎月52円の手数料がかかるため、目減りしていく。受給開始年齢に達しても、そのままでは年金として受け取ることはできない。手数料をかけてiDeCoなどに移す必要がある。移管中は通算加入期間にカウントされず、受給開始が遅れる場合もある。増加している背景には、退職時の忙しさや、制度の理解不足がある。東京都内の女性会社員(41)は昨年8月に転職。半年後に自動移管の通知を受けた。「以前勤めていた会社から説明を受けた記憶はない。知らない間にお金が移され、手数料が引かれるのは釈然としない」と話す。同連合会は毎年1回、対象者に通知を出し、手続きをするよう促している。厚生労働省は「企業が掛け金を負担するため、自分の資産という認識に乏しく、自覚なく放置する人が多い。退職者への説明義務を企業に徹底させるなど、周知を図りたい」としている。ファイナンシャルジャーナリストの竹川美奈子さんは「老後に向けた資産形成が求められる時代に、貴重な年金資産が放置され目減りしてしまうのは問題だ。退職時の移管手続きの簡素化などの対策が求められる」と話す。

◆企業型確定拠出年金(企業型DC)=2001年10月に導入された年金制度の一つ。企業が従業員のために掛け金を支払い、従業員が自らの積立金の運用方法を決める。将来の年金額は運用の結果次第で変わり、原則60歳まで受け取れない。


2022/11/2(水) 5:02配信読売新聞オンライン


2022年11月1日火曜日

周囲から媚びられる独裁者プーチンと同じ…日本のオジイサン社長がその座にしがみつく5つの身勝手な理由

 なぜ、日本企業のトップは権力の座にしがみつくのか。日本の社長の平均年齢は、2009年は59.5歳だったが、2021年は62.77歳。世界的に見ても高齢化が突出し、老害を指摘する声も多い。コミュニケーション戦略研究家の岡本純子さんは「ある程度の地位と名誉と金銭を得たのだから、傍目にはとっとと楽しいセカンドライフを送ればいいのにと思いますが、彼らが何歳になっても辞められない5つ理由がある」という――。

■オジ(イ)サン社長がその地位に恋々としがみつく理由

日本企業の社長の高齢化が進んだことで、最近ますます経営者の老害化の話が耳に入るようになった。権力の座に居座り、一向に後進に道を譲ろうとはしない。そのため世代交代は起こらず、組織が硬直化、企業はどんどんと時代に取り残され、世界の中での“日本”の存在感もどんどん薄れていく……。なぜ、大きな組織のトップに就いたオジ(イ)サンたちはその地位に恋々としがみつくのだろうか。その複合的な理由と深刻な弊害に迫ってみよう。かつてはカリスマ経営者としてたたえられた日本電産の永守重信会長。その話は明快で面白く、人を惹きつける強烈なエネルギーを発していた。しかし、最近は齢78にして、次々とその後継とされる人の首を切り、幹部が大量離職、株価は急落するなど、社内は混乱を極めている、と報じられている。筆者がかつて勤務した読売新聞の渡邉恒雄氏も96歳ながら代表取締役主筆として、今も君臨している。フジサンケイグループ代表の日枝久氏も御年84歳だが、いまだ権勢をふるっていると聞く。もちろんこれまでの功績が否定されるわけでもなく、高齢でも会社組織を改革し前進させる人も少なくない。しかし、トップが権力に執着し、ある種の「恐怖政治」を行うと、結果的に上の言うことに唯々諾々と従う「コバンザメ」のような幹部が増殖することになる。新陳代謝は起きず、風通しが悪くなる。イノベーションは起こるべくもなく、組織はやがて壊死する。そうした事例は日本企業には掃いて捨てるほどある。東京商工リサーチの調べによると、2021年の社長の平均年齢は、調査を開始した2009年以降、最高の62.77歳(前年62.49歳)だった。調査を開始した2009年の59.5歳から毎年、上昇を続け、社長の高齢化傾向が鮮明となっている。

■米国57歳 ドイツ54歳 英国53歳 中国50歳 日本60歳超

英国経済紙「フィナンシャル・タイムズ」のグローバルデータによると、CEO(最高経営責任者)の平均年齢はアメリカでは57歳、ドイツでは54歳、イギリスでは53歳、中国は50歳。日本は世界で唯一の60歳超えとなっており、高齢化が際立っている。日本では海外に比べ、若い経営者による起業が少なく、平均年齢を押し上げている側面もあるが、何より年功序列の弊害の側面はあるだろう。だが最も厄介なのが、いったん権力を握ると、なかなか辞めようとしない経営者が多くいることだ。ある程度の地位と名誉と金銭を得たのであれば、とっとと楽しいセカンドライフを送ってはどうかとも思うが、なぜかそういう発想にはならないらしい。その理由は後で詳述するとして、海外のCEOのリタイアメントライフとはどういったものなのか、アメリカの事例について、少し触れてみよう。米国経営学誌「ハーバードビジネスレビュー」の「CEOのためのリタイアメントガイド」という記事によれば、アメリカのCEOの平均退任年齢は62歳。大企業に当たるフォーチュン500の元CEOのうち、

・4分の1以上はプライベート・エクイティ(未公開株投資)などに携わる

・半数以上が非営利団体でリーダー職に

・3分の2は学校や博物館の理事など、公的機関の役員に

・多くが教鞭をとり、本を書く人もいる

・ほぼ全員が慈善活動をしている

つまり、ほとんどの元CEOがこれまでいた企業を潔く去り、非営利の仕事などに携わって、「経済と社会の幸福に貢献している」のだそうである。日本のエライ人たちは、なぜそこまでして「会社にしがみつく」のだろうか。これには少なくとも次の5つの理由が考えられる。

■① 海外のCEOほど、カネがない

そもそも、海外のCEOの年収は数十億、数百億円がスタンダード。日本では、数千万~多くて数億円程度で、さすがに、これを数年やっただけでは、退職後に、慈善活動に大枚をつぎ込むほどの蓄財はできないだろう。そう考えると、人生100年時代、少しでも稼いでおきたいという気持ちになる人がいてもおかしくない。

■②権力、特権を手放したくない

権力は魔物である。一度手に入れたその力を手放すことに強い抵抗感を覚える人は少なくない。「秘書、自分の部屋、送り迎えの車」という三種の神器に加え、肩書や名刺を失い、「何者でもない人」になることへのおびえ。特に、生涯を一企業に捧げる人が多い日本では、そのセーフティーネットを失う「アイデンティティークライシス」に対する恐怖心は相当なものだろう。

■③権力により、謙虚さを失い、承認欲求が肥大化

権力は腐敗する。そもそも、リーダーにのし上がる人には、「マキャベリアン(個人の野望と利益に固執し、人との関係性より、権力や金を優先する)」「サイコパス」「ナルシシスト」という、心理学では「暗黒の三元素(Dark Triad)」と呼ばれる3つの特質をもった人が多いとされている。最近では、これに「サディズム」が加わった4要素という説もあり、一般人のサイコパスの出現率は1%である一方、エグゼクティブになるとその割合が3~5%になるというデータもあるほどだ。もともとそうした資質を持っていなかったとしても、権力が人を変えてしまうこともよくある。権力の座に居座り続けることで、エゴや承認欲求が肥大化し、傲慢さと行きすぎたプライドや自信ゆえに他者を見下す姿勢へとつながる。また、「つねにこびへつらわれる」という状況下で、「共感力」を失い、ロシアのプーチン大統領のように権力が目的化してしまう。暴君化するリスクは少なくない。

■④「自分は役に立っている」という過信

自分の能力を謙虚に評価する力を失い、自らの知見や能力を過信してしまう。「まだまだ、会社のために貢献し、役に立てる」という誤った認知にはまり、迷惑な「利他意識」を振りかざしている可能性がある。

■⑤仕事以外にやりたいことがない。

案外よくあるのが、このパターンだ。40年あまり、会社に尽くしてきて、トップに上り詰める人は基本、ワーカホリック、仕事一筋だ。趣味はゴルフぐらい。時間ができたとしても、何か打ち込みたいという趣味もなく、そもそも家族を顧みる時間などなかったので、疎まれていたりもする。楽しいリタイアメントライフの絵がなかなか描けないのだ。華麗にリタイアし、セカンドライフをエンジョイしているロールモデルも少なく、退職後の人生に希望を持てない人もいるだろう。こうした複層的な理由が絡み合い、「辞めたくないオジサン」が生まれてしまう。悩ましいのは彼らが高齢だから、能力が低いと必ずしも断言できないことだ。しかし、世界は秒速で状況が変化し、高いITスキルが求められる時代に、「昭和の成功体験」を語り、自らのやり方を結果的に押し付ける経営者が率いる企業に機動性を求めるのは難しい。実際、社長の高齢化と業績悪化の関連性はデータでも如実に表れている。東京商工リサーチによれば、直近決算で減収企業の社長は60代が48.8%、70代以上も48.1%を占めた。高齢社長に業績不振が多い理由として、「長期的なビジョンを描けず、設備投資や経営改善が遅れる」と分析している。これは海外でも同じ傾向だ。アメリカのabcニュースによれば、S&P500企業のうち、47歳以下のCEO23人の株価の19カ月間の平均下落率が2.8%に対し、72歳以上のCEOを擁する6社は、平均21%下落している。「高齢のCEOの中に勝ち組はほとんどいない」というのが、残酷な真実のようだ。このままでは、多くの企業があの世へ道連れにされかねない。年功序列に変わる新たな経営の形の模索や世代交代の促進とともに、長年培ってきたシニア経営者の知見を全く別の分野で活用し、活躍してもらう仕組み作り、さらに、新たなロールモデルの創出をすることが、沈みかけている日本の地位を復活させる鍵なのではないだろうか。


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岡本 純子(おかもと・じゅんこ)

コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師

「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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(コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師 岡本 純子)


プレジデントオンライン/2022年10月26日 11時15分