2022年8月6日土曜日

知らないと怖い「税金と確定申告」の常識。その支出は経費にならないかも

 ミュージシャン、Youtuber、ライター……クリエイターとして、創作を楽しく、長く続けるためには、知っておくべきお金、ビジネスモデル、マナー、法律や契約のことが多々あります。クリエイターパートナー事業を展開する「しろしinc.」CEOの山田邦明さんは、弁護士としても、会社の代表としても、多くのクリエイターたちと仕事をしてきました。そんな山田さんが創作活動を続けていくために必須のスキルなどをまとめた著書『クリエイター1年目のビジネススキル図鑑』(KADOKAWA)が5月に発売になりました。今回は同書から、「税金の基本的な考え方」「確定申告( 青色、白色)」について一部抜粋します。

◆税金ってどんな種類があるの?

雇用契約による給与の場合、何らの手続きなく自動で税金を引かれて処理されます(天引きといいます)。そのため、会社に勤めている人は、税金を意識することが少ないと言えます。一方でクリエイターとして活動していく中で、給与以外の収入を得るようになると途端に税金が常に頭をちらつくようになります。そこで、まずはクリエイターとしておさえておくべき代表的な4つの税金の概観を見てみましょう。

【所得税】

1年間の所得に対して課される税金。所得によって税率が変化する。

【住民税】

自分の住む都道府県や市町村によって課される税金。

【個人事業税】

個人事業主の事業内容に応じて課される税金。

【消費税】

商品などを販売するときに課される税金。

◆税金はいつどうやって払えばいいの?

給与から税金の天引きがなされない場合、それぞれの税金によって支払いタイミングが異なります。支払い方法と合わせるとこちらの一覧になります。

【所得税】

2月16日~3月15日の間に確定申告を行い、納税する。

【住民税】

6月頃に届く納税通知書を受け取り、書類記載の期限までに納税する。

【個人事業税】

8月頃に届く納税通知書を受け取り、書類記載の期限までに納税する。

【消費税】

(対象者は)3月末日までに確定申告を行い、納税する。

「住民税」と「個人事業税」は、それぞれ届く納税通知書に記載されている金額を銀行等の金融機関で納税します。一方で、「所得税」と「消費税」は確定申告を自ら行い、その後納税することになります。「税金」は急に何か書類が届いて、お金が出ていく、と思っていると不安になるのですが、大きく4つの税金があって、それぞれ支払時期が決まっていると分かっていれば過度に怖がる必要はありません。また、給与の場合と比べて過度に損をしているということもありませんので、安心してください。

◆恐れることはない「確定申告」の常識

クリエイターが絶対に避けて通れないのが「確定申告」です。この確定申告の時期が近づくとSNSなどでは、クリエイターの悲鳴が多く聞こえますが、適切に理解しておけば、あまり恐れることはありません。ここでは確定申告についての理解を深めて、自分のやりやすい形を探していきましょう!確定申告とは、一般的に所得税の確定申告のこと。1年間の所得(売上から経費を差し引いた利益)をとりまとめ、所得にかかる税金を計算して確定させ、国(税務署)に納めるべき税額を報告(申告)する手続きのことをいいます。1年に1回、1月1日から12月31日の「所得」と「納める税額」を計算し、原則として、その翌年の2月16日から3月15日の間に税務署に報告・納税します。確定申告をしなかった場合、「納める税金に最高税率20%の無申告加算税がかかる」「納める税金に最高税率14.6%の延滞税がかかる」「青色申告特別控除の枠が、最大65万円から最大10万円に減額される」のようなリスクがあります。

◆私は確定申告すべき?しなくても大丈夫?

確定申告の対象者は、課税所得がプラスの方です。つまり、確定申告の対象かどうかは、

①売上の確定

②経費の確定

③各種控除の確定

を行い、課税所得を確定することで判断できます。売上については分かりやすいと思いますので、ここからは、「経費」と「各種控除」について見ていきましょう。

※ただし、課税所得がマイナスであったとしても、確定申告をすることは可能です。それによるメリットもあるので、気になる方はインターネットで「赤字 確定申告」などと調べてみてください。

◆経費なるかは「売り上げにつながるか」

経費とは、事業を行うために使用した費用のこと。つまり、その支出が経費になるかならないかの判断基準は、「売上につながるかどうか」です。そのため、同じ支出でも、事業内容によって経費になるかどうかが変わってくることがあり、それがクリエイターの混乱を招いているといえます。たとえば、「漫画」を購入した場合を例にしてみましょう。漫画家にとって他の人の漫画を研究することが自身の漫画の創作に活きるというのであれば、その漫画の購入代金は経費になります。一方で、完全に趣味で好きな漫画を買っている場合には、経費にすることはできません。このように、自身の事業の売上につながるか否かで分別し、経費を考えていきます。一般的には、このようにまとめることができます。

◆経費になるもの、ならないものとは?

【経費になるもの】

・事務所の家賃や光熱費等(自宅が事務所の場合は自宅の家賃や光熱費の一部を経費にすることができる)

・仕事に必要(常識の範囲内で「仕事に必要」と説明できればOK)な機材

・クライアントとの交際費

・仕事に必要な交通費

・仕事に必要な書籍や資料…など

【経費にならないもの】

・プライベートで使うもの

・住民税や所得税

・友人や家族との飲食費

・使っていない原材料

・在庫の商品…など

レシートや領収書。個人事業主になる前は、ただのゴミだと思っていたものが、金券に見え始めます。レシートや領収書をもらったら、しっかりと保存しておきましょう。飲み会や結婚式なども、あくまで売上につながる必要がありますが、経費にすることが可能です。あらゆる自分のお金を使う場面を、一度「経費になるか?」の観点で洗い直してみることをおすすめします。

◆寄付金、扶養…各種控除って何?

各種控除の中には所得控除というものがあります。代表的なものには、本人や家族などの1年間の医療費が一定金額を超えた場合に受けられる「医療費控除」、社会保険料を払っていると受けられる「社会保険料控除」、生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料などを払っていると受けられる「生命保険料控除」。ふるさと納税を行うと受けられる「寄付金控除」、扶養家族がいる場合に受けられる「扶養控除」、合計所得金額が2,500万円以下の場合に誰でも受けられる「基礎控除」などがあります。これに加えて、青色確定申告をする場合には、「青色申告特別控除」などもあります(より詳しくは国税庁Webサイトで確認してみてください)。改めてまとめると「売上」を確定し、「経費」「各種控除」を引いてプラスになる人は確定申告が必要、マイナスの人は確定申告が不要、となります。なお、青色申告で「売上」ー「経費」がマイナスの際にも、来年以降に繰り越せる場合があるので、申告したほうがよい場合もあります。

<TEXT/しろしinc.CEO 山田邦明>

【山田邦明】

クリエイターパートナー事業を展開する「しろしinc.」CEO。岡山県津山市出身。京都大学法科大学院を卒業後、スタートアップ向け法律事務所で弁護士として活動。知的財産や資金調達に関する契約業務などに従事。 その後エンターテインメント会社アカツキに初期からジョイン。管理部門の立ち上げ、IPO業務の主担当として、上場に貢献


bizSPA!フレッシュ / 2022年7月19日 8時46分


欧米景気後退で日本人がさらに「貧しく」なる根拠 ほかの国より世界情勢の影響を受けやすい理由

 金利上昇とウクライナ侵攻によってアメリカとヨーロッパが景気後退に陥った場合、日本はうまくやれるだろうか。歴史を手がかりとするのなら、「やれない」というのが筆者の答えだ。それはすべて欧米の景気後退(起きればの話だが)の深刻さ次第である。というのも、歴史上の記録から見れば、日本経済は、他国発の景気後退をはじめとする経済的ショックに対して、甚大な反応を起こしやすいということがわかる。

○日本人の生活水準は継続的に低下

もし歴史が繰り返されるのなら、このことは2つの好ましくない結果をもたらし、長期的に尾を引くだろう。第一には後述するように、大部分の日本人が生活水準の継続的な低下を経験することである。それは大多数の労働者の実質賃金の低下や高齢者1人当たりの社会保障支出の削減といった形をとる。第二は、アジアにおける日本の影響力が低下し続け、中国に対抗する力が弱まることである。2021年版「アジア・パワー・インデックス」が報告するところによれば、すべての分野において、日本のパワーは「初めて大国とみなされる閾値である40ポイントを下回り、高パフォーマンスの中堅国として考えられている」と報告している。アジア内の経済関係(貿易、投資、技術的リーダーシップといった「経済的相互依存関係を通じて影響力とレバレッジを行使する能力」)に関しては、日本のスコアは、インデックス算出を開始した2018年の56点から、2021年の40点に落ちた。これに対し、中国のスコアは96点から99点に上昇した。日本は自由貿易協定や安全保障問題での協力、軍事力の強化などを通じて影響力を高めようと努力しているが、日本の経済的重要性の相対的な低下を克服するには十分ではない。他国がより迅速に影響力と交流関係を拡大する中で、日本はつねに後れをとっている。例えば、2021年のアジア太平洋25カ国の輸出品に占める日本の割合はわずか9%であるのに対し、中国の割合は33%に増加している。この趨勢に加えて、他の観点でも同様の傾向がみられた結果、貿易に関する日本のスコアは2018年の37点から2021年の25点に急落した。地域投資については、2018年の日本のスコアは79対83と中国に近いものだったが、2021年には56対97と大きく引き離されている。要するに、日本の経済的弱点は、生活水準のみならず、国家安全保障に対する脅威でもあるのだ。

○世界的なショックでより大きな打撃を受ける日本

概観すれば、世界的、国内的なショックが発生した場合、日本経済は他の富裕国と比べてより大きな打撃を受け、その被害はより長期間持続することがわかる。2008?2009年の世界的な金融危機を考えてみよう。日本の金融システムは、この災いを引き起こした不正行為にほとんど関与していなかった。しかし、2007?2009年には、日本のGDPは5.6%低下した。これは、OECD(経済協力開発機構)に加盟している富裕国23カ国の中で21番目に大きな落ち込みを見せた。OECD全体のGDP低下率は、その半分未満の2.5%にすぎない。その次には、新型コロナウイルス感染症が流行した。日本は他の富裕国に比べて患者数も死亡者数もはるかに少なかったにもかかわらず、それに伴う封じ込め対策と、サプライチェーンにおけるボトルネックによって、経済的にはるかに大きな打撃を受けた。さらに悪いことに、新型コロナは2019年の消費税引き上げによる負担と重なった。その結果、2022年1?3月期の日本の1人当たり実質GDPは、3年前の2019年春と比べ、いまだに2.6%低い水準にある。一方、他のOECD諸国では、同期間のGDPは2%上昇した。スペインを除けば、日本のパフォーマンスはOECDの中で最悪だった。実際、2度の消費税増税(2014年と2019年)と新型コロナの流行の結果、2022年1?3月期の日本の実質GDPは、ほぼ9年前になる2013年と比較して2%しか増えていない。個人消費は2013年に比べて3.4%減少している。

○なぜ日本はこれほど脆弱なのか

他国では比較的軽度で一時的な影響しか及ぼさないショックが、なぜ日本ではこれほどの被害をもたらすのだろうか。その理由は、近代的な成長理論の大原則に日本が抵触していることにある。1960年代から、経済学者の間では、市場経済がマクロ経済の不安定化を回避するためには、その成長は「均衡」をとらなければならない、すなわち、GDP、個人の所得、消費、投資が長期的には、大まかには同一のペースで成長しなければならない、ということが知られていた。失われた数十年の間に、個人所得はGDPの成長に後れをとるようになり、その状況は時間とともに悪化している。このような不均衡は他の富裕国でも見られるが、日本ではより深刻である。言い換えれば、GDPの成長が鈍化しただけでなく、その成長の果実が賃金、年金、預金金利などを通じて国民に行き渡る量が少なくなっているのである。1995年から2018年まで、1人当たり実質GDPの成長率は総計17%であり、OECDの中で2番目に低い成長率だった。日本は小幅な成長を遂げたものの、今や人口の3分の1近くを占める高齢者の可処分所得の中央値は11%もの大幅な暴落を記録した。現役世代については可処分所得の中央値が2%落ち込んだが、これは主に実質賃金上昇の停滞によるものである。この結果、2種類の不安定性が生じた。第一は、日本が、消費を促進し、慢性的な不況を回避するために、数十年にわたる巨額の財政赤字と、ゼロに近い低金利に頼ってきたことである。第二は、こうした財政・金融政策を実施してもなお、経済は経済ショックに対する耐性を失ってきた。一言で言えば、家計所得の低迷がGDPにブーメランのように返ってきて、日本の成長率を下げているのである。その詳細を見てみよう。

○政府予算によって賄われる個人消費

「失われた20年」の間に民間部門の所得が伸び悩んだため、政府からの現金給付に対する家計支出の依存度はますます大きくなった。1980?1992年当時、家計所得の増加分の85%は、賃金、自営業収入、家賃、配当、利息、個人年金、保険年金など民間部門の所得の増加によるものだった。社会保障やその他の社会扶助など、政府による現金給付の増加によるものは、わずか15%であった。その後、大きな反転があった。1992年以降、民間部門における所得向上は蝸牛の歩みにまで減速した。30年近くもの間、達成された伸び率はわずか4%、実質(物価調整後)年率で言えば0.1%しかなかったのである。一方、大幅な財政赤字で賄われた政府の現金給付は、2倍以上に増加した。その結果、家計所得の伸びの4分の3近く(72%)が政府の現金収入によるものとなった。民間所得の増加が寄与したのは28%にすぎない。政府の赤字支出がなければ、個人消費ははるかに弱く、したがって、GDPもさらに悪化していただろう。したがって、2008?2009年の不況以来、社会扶助の伸びが著しく減速したことは、将来の重要な前兆である。1992?2008年に政府の現金給付は年間3.2%増加したが、2008年以降は1.7%と増加ペースが半減している。この減速が続くか、さらに悪化すれば、消費を適度なペースで伸ばし続けるには、民間所得の大幅な回復が必要となる。もう1つ、見落とされがちな要因がある。家計は消費を維持するために、貯蓄をほとんどしなくなり、日々の暮らしに追われるようになった。1980年代前半、家計の貯蓄率は可処分所得(税引後)の約16%であった。日本人は貯蓄する文化があるという神話が生まれるほどである。ところが、貯蓄率は1980年代後半にやや縮小し、その後、失われた数十年の間に急落。2013?2015年にはマイナスにまで落ち込み、2016?2019年には平均1.3%という低水準にとどまっている。

○潜在成長率を下回る経済

こうしたことが原因で、日本経済は経済的なショックを吸収する能力が低下している。通常の景気循環では、経済の実質GDPは潜在GDPと呼ばれる水準の上下を行き来する。潜在GDPとは、雇用が比較的完全に近く、物理的な生産能力が相対的にフルに近い水準で発揮された場合に達成されるGDPの水準である。したがって、潜在成長率とは、経済が持続的に成長しうるペースのことである(経済が潜在成長率を大きく上回ったペースで成長しようとすれば、たとえわずかな期間であっても、インフレやサプライチェーンの問題など、さまざまな金融的・物理的ストレスを引き起こすことになる)。景気後退が生じると、消費者と企業の双方に累積需要が蓄積される。一時的な財政・金融刺激策によって景気後退からの回復が促進されると、この累積需要が解放され、経済はフル稼働に戻り、その勢いによって以前の稼働力をわずかに上回る。ここで重要なのは、このようなサイクルを通じて経済が平均的に潜在成長率近くの水準を推移し続けることである。しかし、日本では、景気が打撃を受けると家計の手持ち資金が不足し、回復後も活発な消費を再開することができない。また、消費者の購買力が弱いため、企業は設備投資を控えてしまう。その結果、財政・金融面での景気刺激策による早期回復の効果は弱まっている。過去30年間、日本のGDP成長率は平均して潜在成長率を1.2%下回ってきた。その結果、1人当たりのGDPは年率0.6%増という蝸牛の歩みさながらのペースで推移してきた。要するに、日本には2つの問題がある。第一は、生産性の伸び悩みにより、潜在成長率が低下していること。第二は、その潜在成長率すら達成できないことである。

○マクロ経済の不安定性をさらに加速させる円安

急激な円安は日本におけるマクロ経済の不安定性をさらに悪化させている。円安は輸入品の円価を上昇させ、したがって、消費者の購買力のさらなる低下を招いている。消費者支出の40%近くは、エネルギー、食料、衣料、履物など、輸入品が占めている。消費税増税を差し引いても、これらの品目は2012年から16%値上がりしている。一方、個人消費の残りの60%を占める品目の物価は、同期間にわずか1.5%しか上昇していない。つまり、2012年以降の消費者物価指数(税引)の上昇分の93%は、輸入への依存度が高い品目によってもたらされているのである。そして、2021年初からの上昇の100%は、こういった輸入に大きく頼った品目によるものだ。連邦準備制度理事会(FRB)が用いるコアインフレの指標(食料とエネルギーを除いたすべての品目)を基準にすると、2021年1月以降のインフレ率はゼロである。日本は、円安によって日本の家計から石油、食料、衣料などの海外生産者に所得が移転する「悪いインフレ」に見舞われているのだ。これはOPECによる石油価格の上昇と同程度に有害である。同時にこれは、日本の家計から日本の多国籍大企業に所得が移転していくことにもなる。円安が続くかどうか、またいくらまで進むかは誰にもはっきりとはわからないが、年末には1ドル140?150円になると見るトレーダーは増えている(本稿執筆時点では139円台)。そうなれば、消費者の購買力の足をさらに引っ張ることになる。

○アベノミクスから脱却できなそうな日本

読者は、ここでの主張が、岸田文雄首相がロンドン演説で宣言した内容と似ていることにお気づきだろう。首相は「これまで賃金の伸びは限られてきた。それが消費を抑制し、ひいては経済全体の成長を妨げている。日本は生産性を高め、生産性とともに賃金が上昇するようにしなければならない」と述べた。さらに、岸田首相はアベノミクスの特徴である「トリクルダウン理論の失敗を覆す」ことを誓った(故・安倍晋三元首相を名指しで批判することはなかったが)。安倍元首相は、円安が企業収益を上げ、インフレ率を上げると主張した。その結果、企業は賃金を上げ、新規設備への投資を拡大し、消費とGDPを向上させることになる。しかし、現実には、企業収益は急増したものの、そこからトリクルダウンした(滴り落ちた)のは微々たるものだった。それどころか、所得が下位所得層から上位所得層に転移するトリクルアップが起きた。残念ながら、岸田首相は、正しい診断を下しながら必要な薬を出さない医者のようだ。代わりに彼が提供するのは、美辞麗句を並べたプラシーボ(偽薬)だけだ。


リチャード・カッツ:東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)


東洋経済オンライン / 2022年7月20日 8時0分


富田裕樹元池田市長の言い訳

 【サウナ市長と呼ばれて/第1回】元池田市長「なぜ私は市長控室に家庭用サウナを持ち込んだのか」

空前のサウナブームの到来で、全国のサウナ施設はどこも満員御礼。「サウナー」と称されるサウナ愛好家たちが“ととのい”という名の悦楽を求めて行列をなす一方、サウナがきっかけで身を崩した男がいる。彼の名は冨田裕樹(45)。2019年4月に大阪府池田市長選挙に出馬し当選するも、市役所内の市長控室に家庭用サウナを持ち込んだことが問題視され、百条委員会を設置されるまでに発展。パワハラ疑惑なども噴出し、2021年7月で辞職に追い込まれた男である。あの騒動から1年。「サウナ市長」と呼ばれた冨田氏は妻と子を大阪に残し、単身で東京にいた。彼はいま何を思い、あの騒動と結末をどう飲み込んだのか。元サウナ市長の知られざる苦悩の日々を追った──【全3回の第1回】。

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そもそも、あの騒動が明るみに出たのは冨田氏が池田市長に就任して一年半後のこと。2020年10月に配信された『市役所に勝手に住み着いた大阪「池田市長」家庭用サウナも持ち込んだ証拠動画』というネット記事からだった。「私が市長に着任したときから、完全にアウェイの風が吹いていました。前の市長は市議を20年、市長を20年やっていて、役人も部下もみんなファミリー意識が強く、多くのコネや既得権益が存在するといった完全なるムラ社会でした。そのため、私を蹴落とすためにさまざまな嫌がらせを受けてきたので、そのたびにデイフェンスして跳ね除けながらなんとか公務を遂行してきました。家庭用サウナやパワハラ疑惑が報じられたときは、『マスコミに売ったか』、『いよいよここまで来たか』という感じでしたね。家庭用サウナを市長控室に持ち込んだ理由は2点。ひとつは、学生時代にアメフトをやっていたため首のヘルニアになり過去に4回も手術しているのですが、実は公務中にも頸椎に痺れが出始めまして。サウナの中で首をけん引したり、体を温めることで体調管理をする必要があったから、家庭用サウナを市長控室に設置して昼休みにだけ使わせてもらうことにしました。そしてもうひとつは、旧体制から執拗な嫌がらせを受け続けていたため、いずれ家族にも危害を加えられるのでは……と考えるようになりまして。私に危害が及ぶのはまだいいとして、それが家族に及んだら悔やんでも悔やみきれません。そのため妻と子供には別の家に引っ越してもらい、私だけ小さな部屋で暮らし始めたのです。これまで使っていた家庭用サウナを単身用の新居に持ち込むことはスペース的に難しかったため、秘書とも話し合いながら、『体調管理もあるし、一時的に置かせてもらってもいいかな』ということで、家庭用サウナを市役所に移送することにしたんです。落ち着いたら広い部屋に引っ越しをして、そこにサウナを移送するつもりでした」(冨田氏、以下同)

しかし、折しも空前のサウナブーム。「公務中にととのっているのか?」との市民からの鋭いツッコミが広まり、冨田氏は窮地に立たされることに。すぐさまサウナ利用時の電気代を返還したが、その額が合計690円という破格の安さだったことがさらなる注目を集めた。サウナーの間では「ちょっ! 家庭用サウナはこんなにも電気料金が安いの?」と話題になり、冨田氏が使用していた家庭用サウナ『ナチュラルスパ コンパクト』は実際に売り上げがアップしたという。「電気料金は市役所のものですので、返還するのは当然です。家庭用サウナを持ち込んで実際に使用したのが30日。使用時間も含めて関西電力の計算式と照らし合わせて、誠実に使用料金を出させていただきました。後遺障害の症状緩和という理由があったにせよ、やはり公人たるもの、公私混同と誤解を招くようなことはやってはいけないと深く反省しております」冨田氏への糾弾は家庭用サウナだけにとどまらず、「自転車型トレーニング器具やストレッチ器具を市長室に持ち込んだ」「市長室でキャンプ用の鍋でラーメンを調理し、芋を湯がいた」などといった行為が百条委員会やマスコミによって報じられ、「市長室をレジャー感覚でカスタマイズしている」疑惑が浮上。「箸、食品、ダンベル、なわとび、ネクタイ、キャンプ用鍋、ガスボンベ、バーナー、鍋セット、ジューサー……」と冨田氏が市役所内に持ち込んだとされる私物を百条委員会の担当者が淡々と列挙するシーンは連日のように報道され、「市長室を私物化するサウナ市長」というイメージが大きく拡散された。加えて、「職員にタオルや鍋を洗わせた」とも報じられ、職員に対する恫喝や叱責とも取れる録音データの存在が明らかになり、パワハラ疑惑までもが広く報じられたのだ。「パワハラなんて一度もしたことありませんし、すべて冤罪です。あの録音データは卑劣な政治家と電話で激しくやり合ったときの音声を録音されたもので、職員に対してのものではありません。トレーニング器具やストレッチ器具に関してはサウナと同様、体調管理のために私物を持ち込んだだけです。また、市長室内でラーメンを調理して食べたことは一度もありません。先日、知り合いに『あの当時、市長室に七輪を置いてたってほんま?』と聞かれてがく然としましたが、マスコミ報道の影響でそんなふうに誤解されている方がたくさんおられるかもしれませんね。私物で市長室をカスタマイズして遊んでいたわけでもないですし、バーベキューセットを常備して友達を呼んで宴会していたわけでもない。すべては万全な状態で公務をするために必要だった、それだけなんです。ただ、早朝から働きづめで昼ご飯を取る時間もないほどでしたので、鍋で卵をゆでて食べたことは何度かあります……あっ、すいません! 芋は一度だけ湯がいたことがあります。支援団体の方が市長室にこられて『これ食べたら元気になるんで食べてください』と芋をいただいたので、ゆで卵をつくるときに一緒に湯がいていただいたんです。『タオルを職員に洗わせた』という点に関しても、秘書課の職員が『庁舎にある洗濯機で一緒に洗うだけなんでやっときますよ』と善意で言ってくれたのでお願いしたのですが、噂が広まって最終的には『冨田が女性職員に無理やり汚いタオルを洗わせたことで、その女性職員が心療内科に通院するようになった』という話に脚色されて、百条委員会で詰問されることになりまして。その女性職員はぜんぶ否定してくれたんですが、メディアでは『冨田が女性職員に無理やりタオルを洗わせて心療内科に通うようになった』と僕に詰問しているシーンだけが繰り返し流されたため、そのようなイメージになってしまったんでしょうね」さまざまな疑惑をなんとか晴らそうとしていた冨田氏だったが、2021年4月、第11回の百条委員会が開催され、「不信任決議が相当」とする報告書案が全会一致で可決。同月、冨田氏は「けじめと責任を取る」として市長を辞職すると表明した。そして2021年7月30日、サウナ室のような暑い夏の日に、彼は一市民に戻ることになった──。(第2回につづく)

取材・文/田辺健二 撮影/渡辺利博 NEWSポストセブン / 2022年7月23日 7時15分


【サウナ市長と呼ばれて/第2回】送った履歴書400枚、家はゲストハウス、45才の元市長、苦難の「再就職戦線」

働く男たちがサウナで疲れを癒す一方、サウナで身を崩した男がいる。彼の名は冨田裕樹(45)。大阪府池田市長時代に市長控室に家庭用サウナを持ち込んだことが問題視され、百条委員会が設置されるまでに発展。パワハラ疑惑なども噴出し、2021年7月で辞職に追い込まれた男である。第1回では彼が「サウナ市長」と呼ばれるまでの顛末を追ったが、市長を辞してから彼がどのような生活を送っているのかはまったく報じられていない。彼はいま何を思い、前代未聞のサウナ騒動とどう向き合っているのか。女性セブンWEB取材班が、元サウナ市長の知られざる苦悩の日々を追った──。

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2021年7月30日、「けじめと責任を取る」として市長を辞職した冨田氏。8月29日には出直し市長選挙に再出馬し、炎天下の路上で「潔白」の意味を込めた白いシャツをまとい必死に選挙活動を繰り広げたが、候補者4人中最下位で落選。家庭用サウナを市長控室に持ち込んだことで前代未聞の騒動を生んでしまった男は、さまざまな疑惑を払拭できないまま、市長のイスを完全に失ったのだった。「頸椎の後遺障害の症状緩和のためとはいえ、家庭用サウナやトレーニング器具を持ち込んだことは事実ですし、公人として公私混同と誤解を招くようなことをしたのは今も反省しております。このような騒動を起こしたけじめと責任を取るという意味で辞職を決めたのですが、パワハラ疑惑をはじめとする“でっちあげ”の数々は最後まで否定し続けました。市民の皆さんにもさまざまな誤解を招いてしまったため、その誤解を解き疑惑を払拭するために再出馬したのですが、無所属で出直し選挙だったということもあり、個人の力とはこれほど小さいものなのかと痛感しましたね。私は“地方政治の闇”、“池田市にはびこる闇”と戦い続けてきたという自負はあります。古傷が悪化し頸椎に痺れが出たり、胃潰瘍にもなるほど満身創痍でしたが、それでも点滴を打ちながら早朝から深夜まで市民の皆さんのために働き続けました。志半ばで辞職することになったのは残念で仕方ありませんし、わきが甘くて反省する点も多々ありましたが、市民の皆さんのためにやるべきことはやったと胸を張っていたい」とはいえ、政治家の道をあきらめたわけではないという。「政治家という身分にこだわっているわけではなく、社会をよくするための最善の手段が政治家だと思っています。日本の法的な問題とか歪な社会構造を変えようとしたら、政治家になるしかない。ですから、いずれは国政の道へ進みたいという強い意志はあります。しかし、今はまだ、その時期ではない。私に対して誤解を抱いている方がたくさんおられますので、ひとつひとつクリアにしていきながら、とは思います。それに、妻と子を養っていかなければいけないので、このまま無職というわけにもいかない。というわけで職探しを始めたのですが、これがかなり苦戦しまして……」冨田氏は「市長月額給与30%カット、退職金ゼロ」を公約に掲げて当選していたため、辞職時に潤沢な貯金があるわけではなかった。そのため、すぐさま職を見つける必要があったのだが、ここでも「サウナ市長」という負のイメージが彼を苦しめることに。「身の潔白を証明するには活動の拠点を東京に移すしかない。そんな思いから東京で職探しをしていたのですが、私の履歴書を見た人事の方が、ネットで名前を検索すればすぐ『わっ、サウナ市長や!』ってなるみたいなんですよね。こんな面倒くさいヤツをわざわざ雇いたくはないじゃないですか。結局、履歴書だけでも400社近くに送ったと思いますが、すべて全滅でした。この歳からの再就職ですから年齢的な面でも不利なうえに、サウナ市長という悪いイメージがずっと付きまとってくる。正直、苦しかったですね。ただ、履歴書には池田市長だったことも明記しましたし、『今後、政治家を目指していきたい』という自分の意思もしっかり書きました。嘘だけはつかないでおこうと決めていましたので、一切自分の身元をごまかさず、すべてをさらけだして就職活動をしていたため、ここまで苦戦を強いられたのかもしれません」当時は東京のゲストハウスに身を寄せ、夢を追う若者たちと寝食を共にしながら就職活動をしていたという冨田氏。節約をしながら、一日でも早く仕事を見つけようと、東奔西走していたという。「お金が続かないので夜勤のバイトをしつつ、そのまま朝からネクタイをして面接に行くという日々でした。疲れ果ててゲストハウスで昼間から寝てしまうときもありましたね。同じ時期に寝泊まりしていた若者と仲良くなって一緒にキッチンでご飯を作ったりもしました。『何をしてる人なんですか?』と聞かれたときは答えに困って『いろいろやってたよ』としか言えませんでしたけど。『45歳でゲストハウスに泊まってて、この人、大丈夫かな?』と心配されていたと思いますね。彼らとは仲良くはなりましたけど、結局連絡先は交換しませんでした」そんな苦しい時期を乗り越え、無事に職を見つけたという冨田氏。現在は公共政策のコンサルタントや企業顧問などを中心に忙しい日々を送っている。「結局は就職というかフリーランスのようなかたちでコンサルタントや企業顧問をやらせていただくことになったのですが、私が市長時代にさまざまなでっちあげで辞職に追い込まれたことをすべて知っている人たちにお世話していただきまして。本当に感謝しかありません。今はゲストハウスを出て、ビジネスホテルで暮らし、月に何度か家族のもとに帰るという日々です。ちなみに、このビジネスホテルにサウナはついていません(苦笑)。サウナがきっかけでいろいろありましたが、サウナを嫌いになったわけはありません。今もたまには行きますよ。やはり体温をあげるってすごく大事ですし、副交感神経を刺激してリラックスもでき、ストレスの解放にもつながる。サウナとは今度も適度な距離感で付き合っていきたいと思っています」政治家として再起を図るため、ひとまずは安定した生活を手に入れた冨田氏。その晴れやかな表情は、サウナでととのった男たちが浮かべる笑顔のようでもあった。(第3回につづく)


取材・文/田辺健二と女性セブンWEB取材班 撮影/渡辺利博NEWSポストセブン / 2022年7/27(水) 16:15配信


【サウナ市長と呼ばれて/第3回】私が見た地方政治の闇「続けたいなら何もするな」正義がまかり通らない世界とは

働く男たちがサウナで疲れを癒す一方、サウナで身を崩した男がいる。彼の名は冨田裕樹(45)。大阪府池田市長時代に市長控室に家庭用サウナを持ち込んだことが問題視され、パワハラ疑惑なども相まって、2021年7月で辞職に追い込まれた男である。今回のインタビューで彼の口から何度も飛び出した「地方政治の闇」。これは何も池田市だけの話ではない。広島県安芸高田市議会の「居眠り騒動」、千葉県市川市の「市長室ガラス張りシャワー室騒動」、兵庫県尼崎市の「USB紛失騒動」、山口県阿武町の「持続化給付金4630万円誤送金騒動」など、地方政治に目を向けるとなんともお粗末な事件や騒動がたびたび報道されている。では、実体験として地方政治の闇を体感してきた冨田氏はこれらの騒動についてどのような思いを抱いているのか、女性セブンWEB取材班が追った。最終回となる今回は、数奇な騒動を体感した冨田氏だからこそ知る、さまざまな地方政治の闇に光を当てた──。

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冨田氏が池田市長を辞職するきっかけとなった「市長室に家庭用サウナをはじめとするいろんな私物を持ち込みすぎた問題」。公私混同と誤解を招いたことは本人も認めていたが、それでも「百条委員会まで設置するのはやりすぎでは?」という声があったのも事実だ。「そこまでして、とにかく私を市長の座から蹴落としかったということなんです。地方政治はさまざまな利権や既得権益やしがらみが存在しており、私のように『池田市をよくしたい』という思いで改革を起こそうとすると異分子と見なされ、徹底的に排除しようとする。私が市長に就任した直後、周りの職員から『とにかく一期目は何もしないでほしい。改革は二期目でやりましょう』と言われました。性急な改革は旧勢力を刺激することになり、必ず揉め事になる。それが地方政治の特徴です。自分がしたことを棚に上げるあげるわけではないですが、正直、私物持ち込み程度で百条委員会は私もやりすぎだと思いますよ」最近では、広島県安芸高田市議会の「居眠り騒動」が何度も報じられ、元エリート銀行マンの石丸伸二市長と議会との対立が何度もクローズアップされている。市議会との対立という意味では似たような経験をした冨田氏の目にはどう映るのだろうか。「この石丸市長という方も『安芸高田市をよくしたい』という強い意志を持っておられる方だとお見受けしますが、旧態依然とした市議会議員に対して『恥を知れ恥を!』とまで突き付け、対立関係が深まってしまったばかりに、副市長案や議員定数削減案を否決されるなど窮地に立たされている。すべての地方自治体がそうだとは言いませんが、昔ながらの義理人情が優先される世界だというところはたしかに多いんです。挨拶がないとか、『前もって聞いてない』とか、そういう低い次元で反発心を抱き、旧体制で徒党を組み、新興勢力を駆逐しようとする。市長を長くやりたいなら、何もせずずっとニコニコしていればできますから。居眠りなんて見過ごして、一緒に仲良く酒でも酌み交わしていたら駆逐されることはない。しかし、それでは何も変わらないんです。私は池田市長時代にさまざまな事業見直しや機構改革を推進しましたが、これらの変革の種をまいても芽が出て花を咲かすまで少なくとも3年はかかる。つまり、1年目からフルアクセルを踏まないと任期中に改革なんてできないんですよ。だから真面目に改革をしようとする市長ほど議会と衝突してしまうんです」では、2021年2月に報じられた、千葉県市川市の「市長室ガラス張りシャワー室騒動」についてはどうか。約360万円を費やして新設されたガラス張りのシャワー室だけでなく、「公用車をテスラに変更」「市長室に合計1058万円の家具を導入」も明らかとなり、当時の村越祐民市長の金満ぶりが問題視された。奇しくも冨田氏の「サウナ騒動」が紛糾していた頃と時期が重なっていたが……。「そうですね……。繰り返しになりますが、私が後遺障害の症状緩和のために持ち込んだ家庭用サウナやトレーニング器具はすべて私物ですし、もちろん水風呂があったわけでもなく庁舎のシャワーも壊れていたので、サウナやトレーニング後は濡れたタオルで体をふく程度でした。とはいえ、ガラス張りのシャワー室はやりすぎだと感じますし、市長室の家具に1000万円以上を費やしていたのも、あきらかにやりすぎです。ちなみに私の場合は市長室のイス、パソコン、パソコン机、冷蔵庫などもすべて私物を持ち込んで使用していました。理由は、徹底して公費の使用を控えたかったからです。また、公用車をテスラにするというのも当然ながらやりすぎです。私の場合は職員の負担削減とコスト軽減のため、公用車の使用自体を極力控えておりました。むしろタクシーを使用したほうがよっぽど割安で、職員に時間外手当を出す必要もないと判明したためそうしていました」繰り返し報道される地方行政発のお粗末事件簿。旧態依然とした地方自治体が伏魔殿化しやすいのなら、「もはや地方議員自体が不要なのでは?」という思いすら抱いてしまう。「地方政治では、誰かひとりをやり玉にあげて徹底的にいじめ抜いて排除するということが可能な世界。地縁血縁が強く、しがらみや既得権益の巣窟であり、正義がまかり通らないゆがんだ世界なんだと、私は身をもって感じました。ただ、だからといって地方議員が不要だとは思いません。まずは地方議員の在り方を抜本的に変えるべき。例えばデンマークのように地方議員という仕事をボランティアだけにすれば、カネや利権は生まれないはず。伏魔殿化して足の引っ張り合いをし続ける地方自治体って、今後の日本のためにも次の世代のためにもならないし、誰も得しないじゃないですか。私は今回のサウナ騒動を通じて、根本的な解決は地方政治からでは無理なんだと痛感しました。国のトップから落としていかないと地方は動かない。だからこそ、来るべきタイミングで国政の道に進み、最終的には地方政治の在り方を変えていきたいと、強く思っています」空前のサウナブームの折、“ととのい”という境地に達するにはサウナと水風呂の温冷交代浴を3セット繰り返すことが推奨されている。それで言うならば、彼の政治活動はまだ1セット目。来るべきタイミングで彼が2セット、3セットと繰り返し、国政から地方政治をととのわせることができるのか。元“サウナ市長”の灼熱の巻き返しに期待したい。

取材・文/田辺健二と女性セブンWEB取材班 撮影/渡辺利博NEWSポストセブン / 2022年7/27(水) 16:15配信

この人は自分のやったことに反省していませんね。「国政から地方政治をととのわせることができるのか。元“サウナ市長”の灼熱の巻き返しに期待したい。」と書いてあるが誰もこの人に期待していません。この人を企業顧問として雇用する企業ってどこの会社なのでしょうか。


2022年7月12日火曜日

売ろうにも売れない不動産の相続トラブル「更地にしたら税金4倍」で泣きっ面に蜂

 相続トラブルはお金持ちだけの話──そう安易に思っていたら大間違い。親が残すのは「プラスの財産」ばかりでなく、借金などの「マイナスの財産」も含まれる場合があるのだ。実際の相続の際に特にトラブルになりやすいのは不動産だ。埼玉県在住の青木史子さん(49才・仮名)は3年前に他界した母から、静岡県の海沿いにある実家近くの土地を相続した。土地を実際に見たことはなく、地元の不動産業者に電話で聞いたところ「立地がいいから買い手は見つかるだろう」と言われたので、いつか見に行こうと思いながらもつい放置していた。そんなある日、市役所から一通の通知が届いた。そこには、相続した土地に大量の廃棄物が不法投棄されて、近隣住民からの苦情が殺到していると記されていた。慌てて業者に連絡すると「撤去には1000万円かかる」と言われてしまった。そんな大金はとても払えない青木さんは、急いで地元の不動産業者に土地を引き取ってもらえないかと打診したが……。「“不法投棄で一部の土壌が汚染されて、浄化費用は500万円です”と言われました。こんなことになるなら、相続放棄しておけばよかった」(青木さん)『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)の著者で司法書士の椎葉基史さんが指摘する。「相続人には、相続した不動産を管理する義務が生じます。“土地は持っておいて損はない。不要になったら売ればいい”と考える人が多いですが、どのような土地なのか確認することもなく、安易に相続するのは避けるべきです」

○建物の解体費200万円!でも土地は売れず…

都内在住の隅田洋一さん(54才・仮名)は両親を亡くした後、秋田県の実家を相続。帰郷の予定はなく相続放棄を考えたが、思い出の詰まった実家を手放せなかった。誰も住んでいない実家には年3万円ほどの固定資産税がかかり、無駄な出費を嫌った隅田さんは実家の売却を決意。不動産業者の助言もあり、まずは200万円かけて古びた建物を解体して更地にした。ところが期待通りに事は進まなかった。その後、いくら値を下げても土地はまったく売れなかったという。「住宅が建っていると評価を6分の1にする減税措置があるのですが、更地にするとそれが適用されないため、固定資産税は6倍になりました。維持費を減らすために更地にしたのに、解体費が200万円かかったうえにトータルの税金が3~4倍になって泣きっ面に蜂です」(隅田さん)

椎葉さんは「土地神話」に警鐘を鳴らす。「高齢の人ほど“土地は絶対売れる”との神話を信じていますが、人口が減る日本ではもはや不動産は確実に売却できる資産ではありません。実際に生前の親から、“あの土地は絶対に高く売れるから”と言われていたので軽く考えて相続したら、どこの不動産業者も取り扱わず、相続が重荷になる事例が増えています。特に田舎の持ち家や農地、山林などを相続すると、固定資産税や維持費がかかり“負動産”となるので、金融資産がほとんどない場合は相続放棄を選択肢とすべきです」相続した実家を「空き家」として維持することにも警戒が必要だ。「いまは『特定空き家』に指定されると、家屋があっても更地と同様の税負担を強いられます。空き家はほかにも衛生上、景観上、防犯上などさまざまな問題があり、私が知るなかでは、住宅密集地の古い空き家が倒壊して隣の家に被害が生じ、130万円を請求されたケースがありました」(椎葉さん)誰も住まないなら、相続のタイミングで家を放棄することを考えるべきだ。


※女性セブン2022年7月7・14日号


マネーポストWEB / 2022年7月5日 16時15分


2022年6月26日日曜日

NHK受信料「死後も請求」が話題に、遺族が悩む故人のサブスク解約の対処法

 亡くなった人の銀行口座からNHK受信料が引き落とされ続けていたことが判明。NHKは死後も支払いを止めてくれないのか……春先、そんなことが話題になった。しかし、こうした事態が起こるのはNHKだけではない。各種サブスクサービスが花盛りな昨今、遺族に請求が届くケースは今後ますます増えてくる。もし家族や親しい間柄の人が定額制サービスの契約を残して亡くなってしまったら、遺族はどう対応するのが正しいのだろうか?(ライター/ジャーナリスト 古田雄介)

●亡くなった人の口座から、 NHK受信料が引き落とされ続けていた

急死した一人暮らしの親戚の遺品を整理した際にNHK受信料が引き落とされ続けていることが判明。支払いを止めて、死後の支払い分を取り戻すために悪戦苦闘をした……春先、そんな苦労をした人のツイートがネットで話題になった。亡くなった人がテレビを見ているわけがないのに、支払いを止めてくれない。当人以外が手続きするとなると手間は本人のとき以上で、事態を収めて損失を取り戻すには膨大な書類と交渉が必要になる。遺族側からすると実に不条理な状況といえる。ただ、筆者はこの話題を知ったときに既視感を覚えた。似た事例をサブスクリプション界隈でもよく耳にしているからだ。

●定額制サービスからすると、契約者の生死は分からない

毎月、あるいは年単位で一定の支払いが発生する(お金が引き落とされる)という点では、最近増えているネットの各種サブスクリプションサービスも同じである。NHKにもサブスクリプションサービスにも、契約者の生死を自動で検知する仕組みは存在しない。継続支払いの設定になっているなら、遺族や代理人からの連絡がない限り、契約者の身に何が起きても変わらず支払いが続くのが一般的だ。だから、残された側は頑張って対応窓口を突き止めて、事態を説明したり必要な書類をそろえたりするしかない。NHKの場合は、解約手続きには全国共通の窓口として「NHKふれあいセンター(営業)」を設けているほか、払込用紙などに記載している各地域の放送局や営業センターでも対応している。いずれも電話対応が原則となっており、受付時間が限定されている上、つながりにくいという声もある。ただ、対応窓口としては比較的見つけやすいほうだ。苦労するのは、ヘルプページから解約の方法にすらたどり着けない場合だ。あるサブスクサービスは、奥まったところに置かれた解約メニューに2段階認証を設定しており、認証を経ても翻意を促すキャンペーンページをスクロールしないと手続きが進めない構造になっていた。ページ下段の「解約します」を押してもなお次のアンケートページで翻意できる作りになっていて、そこでもう一度「解約します」と意思表明することでようやく解放される。契約者本人でも相当面倒で、遺族の立場では到底達成できそうにない。こうした状況を踏まえてか、5月25日に可決・成立した改正消費者契約法では、定額制サービスを提供する事業者の努力義務として「解除権行使に必要な情報提供」が盛り込まれた。将来的には運営元に直接アプローチすればほぼ問題なく解約できるようになるかもしれない。業界全体での今後の改善を期待したい。ここまで読んで、個別に手続きするよりも、銀行やクレジットカードなどの自動引き落とし先を止めたほうが手っ取り早いと思った人もいるだろう。しかし、むしろそちらのほうが茨(いばら)の道かもしれない。そこが本記事で伝えたいところだ。

●サブスクの支払いがあるからと クレジットカードを退会できないケース

「自動引き落とし先をストップすれば、継続的な支払いが止まる」という認識は、残念ながら甘い。筆者は5年ほど前からデジタル遺品に関する相談をサイトで受け付けているが、過去にこんな話を本人から聞いたことがある。中部地方に暮らすAさん(60代)は、1年前に実家で一人暮らしをしていた兄を亡くした。遺品整理を進めるなかで、祖父の代からの不動産や生命保険の確認など難題がいくつも現れたが、なかでも手を焼いたのがクレジットカードの退会手続きだったという。クレジットカード会社の窓口は、事情を伝えても「債権が残っているので退会できない」と譲らない。毎月1200円ほどの引き落としがあり、その債権が止まないと退会手続きに進めないのだという。それでいて、プライバシー保護の観点から債権の詳細は教えられないとのこと。閉口するしかなかったが、粘り強く交渉しているうちに支払い元の情報が少しずつ見えてきた。手元の情報と照らし合わせたところ、どうやら動画配信サービスと英会話アプリの月額課金が残っていると判明。それぞれのサービスに掛け合って解約したところ、ようやくクレジットカードを退会することができたそうだ。また、長年相続関連の仕事をしているBさんからは、亡くなった家族の銀行口座を凍結したところ、その後も毎月500円の出金が続いた事例があり、対応に苦労したとの話も聞いた。こちらも定額サービスの自動引き落としによるものらしい。

●定額制サービスの料金のほとんどが 銀行かクレジットカード経由で支払われる

NHK受信契約の約8割が自動引き落としで支払われているように、定額制サービスの対価の多くは銀行やクレジットカード会社を経由している。それゆえに見落としがちだが、定額制サービスの提供元と自動引き落とし先は別物であり、情報も共有されない。ただでさえややこしい定額支払いの停止手続きが、自動引き落とし先という新たなステークホルダーが加わることで、さらにややこしくなってしまっているのだ。

●銀行の原則は 「口座を凍結したら振替も停止」

間に挟まった自動引き落とし先では、何が起こっているのか。主要な銀行とクレジットカード会社に実情を尋ねてみた。まず銀行はメガバンクとネット銀行を含めた全国規模の8行に情報提供をお願いし、5行から回答を得た。口座の持ち主の死亡が遺族等によって知らされると、銀行は口座を凍結する。口座振替のある口座はその後どうなるのか。回答を得た銀行ではいずれも「停止する」との回答だった。「預金者死亡の連絡を受けた場合、債権の有無に関わらず、ご預金等のお引き出し、ご入金についてはお取扱いができなくなり、口座振替も停止となります」(みずほ銀行)出金が続く可能性があるとすれば、相続人から口座振替の継続の希望を受けたシチュエーションだが、それも例外的な処理といえる。三菱UFJ銀行は「事前に特定の明細について、従来通り被相続人の口座からの引き落としを希望する依頼書を相続人全員の署名の上受入れしている場合、その明細のみ支払いを許容する手続きもございます」という。ただ、これは銀行側の都合だ。定額制サービスを提供する運営元は契約者の生死を確認できないし、銀行から伝える義務もない。実際、凍結後に請求が届くことも珍しくないという。それでも、「生前お支払いに当社のデビットカードを登録されており、相続開始後に請求が到着した場合、故人口座には請求できないため、当社では原則として当該請求を加盟店(請求元)に返却する対応を行います」(ソニー銀行)といったスタンスが一般的といえる。

●個別の事情に応じて 柔軟な対応をしてもらえることも

一方で、三菱UFJ銀行が特定の明細のみ支払いを継続するケースを認めているように、個別の事情に応じて柔軟に対応している様子もうかがえる。Bさんから聞いた事例は5行とも経験がないようだった。しかし、別の金融機関が何らかの事情から特殊な措置として、そうした措置を行っている可能性も否定できない。ただ一般論としては、凍結中は原則として口座振替を継続しないのは確かなようだ。そして、銀行側から定額制サービスの運営元へ、契約者の生死に関わる情報が自動で伝わるような流れも確立されていない。

●クレジットカードは 退会後も請求が継続しうる

クレジットカードも主要な8社にアプローチし、6社から回答を得た。こちらも契約者の生死を知りようがないため、遺族等から連絡がない限りは自動引き落としの処理が継続することになる。死亡の連絡を受けたら退会の手続きを進めることは可能だが、預金口座の凍結のように直ちに処理するわけではない。あくまで遺族等の希望に基づいて処理を進めるというスタンスだ。いずれもカードも定額制サービスとの契約は事前に解約した上での退会を促しているが、イオンカードが「支払い義務(債権)が残っている場合であっても退会は可能です」というように、回答を得た中では債権が残った状態でも退会手続きを止めるケースはなかった。Aさんのケースは特殊事例なのかもしれない。ただし、あるカード会社は匿名で「支払い義務が残ったまま退会されると後々面倒なことになることも。それを防ぐための対応としてはあり得る措置といえます」と見解を教えてくれた。

●サービスを停止せずにクレジットカードを 退会するとどうなるのか

注意したいのは退会後だ。債務ありの状態で退会すると、その債務の請求が後日届くことになる。クレジットカードは決済と請求までタイムラグがあるため、単発の決済であっても翌々月支払いということも普通にあるし、定額制サービスの契約が継続している場合は数カ月先まで請求が届くということも起きてしまう。「基本的にはカード解約後にカード支払いをご利用いただけませんが、サブスク等については、ご利用先に契約解除の連絡をしていただくまで利用が継続する場合がございます」(セゾンカード)クレジットカードを退会しても、退会前にした買い物や契約には影響を及ぼさない。「各種サービス料金の支払契約は、あくまでお客様とサービス提供業者間で取り交わされたものです。第三者である弊社はその契約関係には入り込むことはできかねます」という三井住友カードの回答が端的だ。この原則に従えば、遺品整理時に気付かれなかった定額制サービスの支払いはその後も延々と続くことになる。しかし、何年も請求が続いて困ったという声は聞かない。今回得た回答でも、数カ月先までの請求が続くというタイムスケールで言及する企業が大半だった。年額支払いの請求が絡んで、せいぜい2年弱だ。どうやら、現実としては半永久的に請求が続くというわけでもないらしい。あるカード会社は「退会後に定額制の請求が続く場合は、債権を回収管理する部門があり、そこから退会したお客様やご遺族に契約解除や支払い方法の変更を促しています。それと同時に、水面下では定額制の提供元にも停止をお願いすることもありますが、応じてくれるか否かはまちまちです」と明かす。つまるところ、支払いが滞った後のスタンスは定額制サービスがどう動くかにかかっているといえる。

●引き落としが止まった後に 郵送で請求書が届くケースも

定額制サービスを提供する立場からすると、契約者が亡くなった後にいつまで請求を続けるかは判断が難しい。何しろ生死を正確につかめる手段はない。そのため、遺族からの申請をきっかけに契約を終了するとしているケースが多いようだ。NHKも解約の届け出があった日を解約日とすることを原則としている。遺族等により要望があった場合は住民が亡くなった日までさかのぼっての解約とする措置も個別に応じているが、それは例外的な対応だ。例外ゆえに、契約者の死亡やその後の利用状況を含む多くの証明が必要になるなど手続きは煩雑になってしまう。しかし、口座振替やカード退会で支払いが滞った際は、請求書を郵送する形で支払いを促すケースも増えている。葬儀を終えた数カ月後に故人名義の請求書が届いたという話は、ここ数年でよく耳にするようになった。支払い滞納分を含めても数千円程度という比較的少額の請求も珍しくない。一方で、お金の流れが滞った時点で解約とみなすケースもある。典型例はマイクロソフトだ。同社はオフィススイートアプリやクラウドサービスなどを定額制で提供している。その契約者が亡くなった場合は、遺族等が代理でログインしてサービスの停止を申請することを認めているが、IDとパスワードが分からない場合は「お客様の銀行口座やクレジットカードの停止、承認の取り消し、または銀行への通知を行うことで停止することができます」と明言している。定額制サービスのすべてがマイクロソフト型の対応をしてくれれば、口座の凍結やカード退会で一網打尽が可能だが……。残念ながら、いまのところはサービスごとに対応がバラバラだ。

●もし、故人が契約していた定額制サービスを 解約することになったら

以上を踏まえて、遺族の立場から、故人が残した定額制サービスの契約はどうしたらいいのか対応を考えたい。理想を言えば、すべての定額制サービスを個別に調べて、それぞれに沿った形で解約や引き継ぎを進めていくのが安全だ。しかし、あまたのサブスクや定額制サービスを利用している人の全契約を正確につかむのは難しいだろう。Apple IDやGoogleアカウント、通信キャリアの月額支払いにまとめられたサブスクなどは、お金の流れからたどっても個別に探すのは至難の業だ。それぞれの契約に気付けたとしても、故人のアカウント名を突き止め、解約の窓口をそれぞれ調べて、それぞれに必要な書類をそろえるとなると相当骨が折れる。正直、定額制サービスの提供元が求める手続きのすべてを遺族が完遂するのは不可能だと思う。だとすれば、現実との折衷案を組み立てるしかないだろう。

(1)通常の遺品整理の過程で特定できた定額制サービスは、個別に解約や名義変更などの手続きをする。

(2)その上で、口座の凍結やカードの退会を済ませる。

(3)その後にさまざまな形で請求が届くことを想定し、1~2年程度はアクションがあるたびに個別に支払いや解約などを進める心構えだけしておく。

2022年6月時点では、この3段構えの対策が現実的ではないかと思う。


2022/6/22(水) 6:01配信diamondonline


ネットカフェの天下統一!快活CLUBが、倒産相次ぐ業界で“独り勝ち”したワケ

 インターネットが身近になった結果、ピンチに陥っている業界がある。インターネットカフェ業界だ。10年以上前は「通信料や家族の目を気にせず、自由にネットが使える」という環境が貴重だった。しかし、2012年にはスマートフォンの普及率が50%を上回った。このころからネットにアクセスできる環境が当たり前となり、ネットカフェの人気は低迷。さらにコロナ禍が追い打ちをかけ、約10年間で2000億円を超えていた市場規模が約1000億円に半減したという。帝国データバンクによると、20年度にはネットカフェ・マンガ喫茶などの「複合カフェ」を主力とした企業が10件倒産した。そんな中で、“独り勝ち”しているのがAOKIホールディングス傘下の快活フロンティアが展開する「快活CLUB」だ。売上高、店舗数はいずれも19年度まで右肩上がり。20年度は新型コロナウイルスの影響でマイナス成長となったが、21年度で売上高は19年度(583億8800万円)の97%である569億3300万円まで復調している。沈みゆく業界の中で、成長を続けられる秘訣はどこにあるのか。快活フロンティアの常務取締役、中川和幸さんに話を聞いた。

●他社と何が違うのか?

快活CLUBが他社と最も違う点は「全国505店舗(6月時点)の全てが直営店であること」だと中川さんは話す。ネットカフェ業界の中堅・大手ではフランチャイズ形式で出店数を伸ばしている企業がほとんどで、この業態はかなり珍しい。では、直営店とフランチャイズの一番の違いは何か。それは、出店スピードだという。中川さんは「出店を拡大しようと計画を立てたときに、一気に舵を切って進められます。例えば19年度には1年で85店舗出店しました。20年度は50店舗、21年度は29店舗とコロナ禍でも出店を進めています」と説明する。設備投資の面でも、直営店の強みがある。「大きく違いが出るのは、PCです。PCのスペックは年々高くなっていて、処理速度がかなり異なる。われわれは全てのPCを3年に1度入れ替えています。また、ソファやマットについても、定期的に交換しています」と中川さんは話す。フランチャイズ店では、オーナーの意向によって設備投資のレベルにばらつきが出ることが多い。特に、売り上げが低迷した場合には、十分なメンテナンスや入れ替えができないことがある。しかし、直営店のみの同社の店舗では、設備投資のレベルを統一できる。こうした店舗の品質の良さが、快活CLUBのブランドを作ってきた。中川さんは「実はインターネットカフェの利用料金は、店舗によってそれほど差がありません。『だったら、こっちの方が良いね』とお客さまの選択が(快活CLUBに)集約してきた。それが当社がシェアを伸ばせている要因になっているのではないかと思います」と笑顔を見せる。

●AOKIホールディングス、物件確保の秘訣は

快活フロンティアを語る上で欠かせないのが、同社がAOKIホールディングス傘下の企業だということだ。スーツ販売の「AOKI」と「ORIHICA」、カラオケ店の「コート・ダジュール」、フィットネスの「FiT24」などのブランドが同グループにある。中川さんは、グループでさまざまな店舗を運営しているため、物件の確保が有利になっていると説明する。「新規出店にあたり、物件交渉は大きなポイントです。物件を探す部署は、快活フロンティアの社内ではなく、AOKIホールディングスに所属して(グループ内の物件交渉を)一括で担当しています。なので物件を探し、条件に合わせて『この物件は快活CLUBに』『この物件はAOKIに』『この物件はコート・ダジュールに』と振り分けをしています。選択肢が多いので、物件のオーナーさまの要望に合わせやすいという特徴があります」また、需要や売り上げ状況に合わせてAOKI店舗を快活CLUB店舗にリニューアルする手段もある。さらに、広い面積が確保できる場合は、AOKIと快活CLUB、FiT24と快活CLUBなど複数店舗の抱き合わせで土地を活用している。「直営でブランドも多くあるため、オーナーさまに『長く続けてもらえそうだ』と安心感を持っていただきやすいという点もあるかもしれません」(中川さん)

●社員やアルバイトの人材交流も

こうしたグループ内でのシナジー創出は、出店時だけにとどまらない。社員とアルバイトの双方を対象に、複数店舗で働いてもらうことで、適正な人数で店舗を運営できるようにしているという。

「昨年から、グループ間の人材交流を進めています。AOKIなど紳士服の業界は基本的に夏場が暇で、新社会人の方などがスーツを購入する2~3月が繁忙期です。それに対して、インターネットカフェやカラオケが忙しいのはゴールデンウイークや夏休みの時期です。AOKIの閑散期に余ってしまう人材に、快活CLUBの店舗に入ってもらったり、反対に他形態の繁忙期にこちらから応援に行ったりという活動です」(中川さん)

特にスーツ販売のアルバイト人材では、夏場などの閑散期には思うようにシフトに入れないことがある。どの業態も店舗でお客さまに案内をするという点は共通している。別のアルバイト先を探すより楽だと、この制度を利用する人は多いそうだ。また、人によっては「昼が空いている日はAOKIで働き、夜が空いている日は快活CLUBで働く」といったように、人手が足りない時間の違いを生かしたダブルワークも可能としている。「これにより、グループ全体での人件費の効率化につながっています」と中川さんは説明する。

●快活CLUBが抱える危機感

このような取り組みで、シェアを伸ばし業界の圧倒的1位を独走する快活CLUB。しかし、危機感も併せ持っている。中川さんは「ネットカフェは『することないから』など、余暇の需要で使われるものです。しかし、利用用途を広げて、これまでネットカフェを使ったことのない人も取り込んでいかないと市場は広がらないと思います」と話す。ネットカフェを日常的に使う人は、中小企業基盤整備機構が実施した調査(17年)によると14%。快活フロンティアで実施した調査でも16%(21年)と、約15%程度であることが分かっている。つまり、残りの約85%の人は普段ネットカフェを活用していない。市場規模の減少に歯止めをかけるには、多くの人の選択肢に入り、活用の幅を広げることが重要だ。

●「ネットカフェに行きたい人」以外をどう取り込むか?

そのための施策の一つとして、10年ほど前からランチをはじめとする食事の提供にも力を入れてきた。当然だが、「ネットカフェに行きたい」と考える人よりも「ランチをどこかで食べたい」と考える人の方が人口が多い。そうした客層にも来店してもらうことで、ユーザーの幅を広げてきた。ランチに目を付けた理由は、「当時の社長が“愛知県出身だった”ことがきっかけです」と中川さんは説明する。「インターネットカフェの前身はマンガ喫茶です。そしてマンガ喫茶は愛知県で『喫茶店の空いたスペースに、お客さまが喜ぶだろうからマンガを置いてみようか』という形から始まったと聞いています。愛知県は、モーニングでも有名なように飲食店のサービスに尋常じゃなく力を入れているお店が多いんです」(中川さん)そんな文化を良く知る当時の社長の意向で、ドリンクだけではなく食事も十分に出すシステムを整備してきた。ただし、「飲食店は諸刃(もろは)の剣でもあります」と中川さんは話す。「なかなか人手がかかります。今は特に、人手の確保が大きな課題ですから、エリアによって分けて考えています」

取材をした赤坂見附店(東京都港区)では、食事の提供はしていない。周囲にコンビニや飲食店が多いエリアなので、周囲で買って持ち込んでもらう方針だ。一方、カフェ文化が根付く愛知県や静岡県、また冬場に移動を嫌う東北エリアなどでは食事の利用が特に好調なのだという。

また、利用客を広げるために、コロナ禍以降はテレワークで利用するビジネスパーソン向けの施策に力を入れてきた。

●ネットカフェの天下統一、次なる課題はどう解決するのか?

こうしたさまざまな戦略で、快活フロンティアはシェアを伸ばし、勝ち上がってきた。快活CLUBの複合カフェ業界内でのシェアは、店舗数で33.3%、売上高で39.6%(複合カフェ協会のデータから試算、2020年度)。以下に続く企業は店舗数・売上高ともに10%に満たず、一強他弱の状態だ。さらに5月には、AOKIホールディングスが業界2位の店舗数を誇る「スペースクリエイト自遊空間」を運営するランシステムと資本提携を結び、子会社化。これにより、グループ全体で複合カフェ市場の店舗数の42.6%を占める形になった。かつて多くの企業が参戦し、戦国時代状態だった複合カフェ業界を、AOKIグループが天下統一したと言って差し支えないだろう。


ITmedia ビジネスオンライン / 2022年6月19日 14時20分


2022年6月14日火曜日