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2026年6月14日日曜日

見落とすと17万円の損…税理士が「絶対捨てないで」と警告する「6月に届く細長い紙」と、確認すべき「項目」

 手取りを増やすにはどうすればいいか。税理士の板倉京さんは「毎年、税制控除の見落としで、数万円、人によっては数十万円、余計な税金を払っている人がいる。大切なのは使える控除をきちんと使い、見落としをなくすこと。まずは年に一度、6月に届く“通知書”を確認することから始めてほしい」という――。

〇年に一度届く、税金の「答え合わせ」

毎年6月頃、会社から渡される細長い紙、ちゃんと見たことありますか?「給与所得等に係る市民税・県民税・森林環境税特別徴収税額の決定通知書」

自営業者や個人で住民税を納めている人には、自宅に「市民税・県民税・森林環境税税額決定納税通知書」などの名称で届きます。長い名前に、いろいろな数字が細かく並んだ通知書。中身を見ないで放置、という人が多いのではないでしょうか。これは、今年の住民税の計算結果を伝えてくれるもの。お住まいの自治体から「今年の住民税はこう計算したんですけど、いいですよね」という確認なのです。住民税は基本的には、年末調整や確定申告で出した内容をもとに計算されます。出し忘れた控除は、税金の計算に反映されません。毎年、ふるさと納税・扶養控除・医療費控除などの見落としで、数万円、人によっては数十万円、余計な税金を払っている人がいます。この通知書は、控除に漏れがないかなどを思い出す、年に一度の「答え合わせ表」です。でもこの通知書、どこをどう見たらいいのか、わかりにくい。見るのが面倒な気持ちも分かります。とはいえ、ちょっとチェックすることで、税金が戻ってくる可能性があるなら、確認しておいた方がいいと思うのです。そこで、今回はこの通知書をチェックする方法やその効果、間違っていた時のリカバリーの方法などについて、お伝えしていきたいと思います。

〇30秒で分かる、いますぐ通知書を確認すべき人

以下のいずれかに当てはまった人は、通知書を手元に置いて、この先を読んでください。

・去年ふるさと納税をして、医療費控除などで確定申告もした

・大学生の子どもがいる、または子どもがアルバイトをしている

・「収入が103万円を超えたら扶養は無理」と思っている

・去年、親が亡くなった

・年金暮らしの親や、遺族年金を受け取る母に仕送りをしている

・住宅ローン控除を受けている

もちろん、これ以外にも控除等の漏れが気になる人は、しっかりチェックしてください。

1.ふるさと納税

ワンストップ特例が「自動的に無効」になる人がいる

最初に確認したいのが、ふるさと納税です。会社員のAさん(年収800万円)は前年、控除上限額の範囲内と考えて12万円のふるさと納税をしました。寄付先は5自治体以内。ワンストップ特例も申請済み。「これで手続きは完了」と思っていました。ところがその年は、家族の医療費の自己負担額が大きく、医療費控除を受けるために確定申告をしました。ここに落とし穴があります。ワンストップ特例は、確定申告をしない人のための仕組み。医療費控除などで確定申告をすると、ワンストップ特例は自動的に無効になるのです。ふるさと納税の控除を受けるためには、確定申告書に、改めてふるさと納税の寄附金控除を書く必要があります。Aさんは「ワンストップを出してあるから大丈夫」と思い込み、確定申告書にそれを書かなかった。結果、Aさんの住民税には、ふるさと納税が反映されなかった――このケースは、実務でもしばしば見かけます。ふるさと納税は、控除上限額の範囲内なら実質負担は原則2000円です。手続き漏れで控除が反映されなければ、その年にした寄付額のほぼ全額分を取り戻し損ねることになる。Aさんでいえば、12万円から2000円を引いた11万8000円分、税金が高くなってしまうということ。

〇どこをチェックすればいいのか

確認方法は、通知書の「税額控除額」や「寄附金税額控除額」、摘要欄を見てください。自治体によって表示は異なりますが、ふるさと納税をしたのに寄附金控除らしき記載がない、前年より住民税が思ったほど軽くなっていない、という場合は黄信号です。確定申告をした人は、所得税の寄附金控除による軽減分と、住民税の寄附金税額控除を合わせて、寄付額から原則2000円を差し引いた程度の控除になっているかを確認してみてください。ただし、医療費控除や住宅ローン控除など他の控除もある場合、通知書だけでは判断しにくいこともあります。分からない場合は、お住まいの自治体(市区町村)に確認してみてください。

2.扶養控除

・年収の壁は103万円→123万円に

もうひとつ気を付けたいのが、扶養控除です。

Bさんは50代の会社員。大学生の子どもがいます。子どもは去年アルバイトを頑張り、収入は120万円でした。Bさんは「103万円を超えたから、もう扶養には入れられない」と思い、年末調整で子どもを扶養に入れませんでした。でも、実はこの大学生のお子さんは、Bさんの扶養控除の対象にできた可能性があるのです。令和8年度の住民税(所得税は令和7年分)から、扶養に入れる年収の壁が103万円から123万円に引き上げられました。給与収入だけなら123万円以下まで、扶養控除の対象だったのです。19歳以上23歳未満の子は、要件を満たせば「特定扶養親族」として、控除額は所得税63万円、住民税45万円を受けることができます。所得税率20%の人なら、所得税だけで12万6000円。住民税の4万5000円と合わせて、約17万円も税負担が変わる可能性があるのです。さらに、子の収入が123万円を超え188万円以下でも、新設された「特定親族特別控除」により、収入に応じて段階的な控除を受けられる可能性があります。「うちの子はバイトでかなり稼いでいるから」と、最初からあきらめるのはもったいないのです。

・「配偶者控除」も変わっている

なお、配偶者控除・配偶者特別控除も、令和8年度の住民税(所得税は令和7年分)から確認すべきラインが変わっています。配偶者の給与収入が123万円以下なら配偶者控除、123万円超201万6000円未満なら配偶者特別控除の対象になりうるので、「103万円を超えたから無理」と思い込まないこと。ただし、納税者本人の合計所得金額が1000万円(給与収入だけなら、おおむね1195万円)を超える場合は対象外です。これ以外にも、前年と家族構成が変わっていないのに住民税が急に高くなっている、扶養人数が想定と違う――こういった場合もお住まいの自治体に確認をしてみましょう。

3.老親の扶養控除

・年金暮らしの親も、扶養に入れられる

「うちの親は年金をもらっているから、扶養は無理」「同居していないから入れられない」。そう思い込んでいる人は少なくありません。でも、年金をもらっていても、同居していなくても、要件を満たせば親を税金上の扶養にできます。扶養に入れることができるのは、「生計を一にする」親族。別居していても、生活費や療養費を継続的に送っていれば扶養に入れることはできます。税金の扶養には、仕送り額の決まりもありません。そして、子の扶養と同じく、令和8年度の住民税(所得税は令和7年分)から、親を扶養に入れられるラインも上がりました。65歳以上で年金以外に所得がない親なら、年金収入168万円以下(改正前は158万円以下)までが扶養の対象となります。(65歳未満の親なら、年金収入118万円以下)。年金がある場合でも、遺族年金の場合は非課税なので、扶養の判定に使う合計所得金額に含めません。母の収入が遺族年金だけ、あるいは遺族年金のほかは少額の老齢年金だけ、という場合、生計を一にしていれば扶養控除の対象にすることが可能です。

・年の途中で亡くなったら要注意

さらに見落とされやすいのが、年の途中で親が亡くなった年です。通常なら年金額が多くて扶養に入れられない親も、年の途中で亡くなれば、その年に受け取る年金は亡くなるまでの分だけになります。扶養に当たるかどうかは、亡くなった時点の状況で判断するので、その年に受け取った年金が少なく、所得が要件に収まれば、亡くなった親を扶養控除の対象にすることが可能なのです。親の扶養控除額は小さくありません。70歳以上の親なら老人扶養親族として、別居でも所得税48万円・住民税38万円、同居老親等に該当すれば所得税58万円・住民税45万円の控除になります。所得税率20%の人なら、所得税と住民税を合わせて、別居の親で約13万4000円、同居なら約16万1000円の節税が可能というわけ。すでに納めた税金があれば、その分を取り戻せる。さらに親の医療費を負担していれば、その分を医療費控除に加えることができます。親が亡くなった年は、相続や葬儀などの手続きに追われ、気持ちにも時間にも余裕がなく、扶養控除まで気が回らないという人も多いと思います。だからこそ、後からでも確認してほしいと思います。最初から「年金があるから無理」「別居だから無理」と決めつけず、わからなければ自治体や税務署に聞いてみることをおすすめします。

・通知書で見るべき「4つの項目」

ここからは、通知書の見方です。細かい数字をすべて理解する必要はありません。見るべきは、次の4カ所です。ひとつ目は寄附金税額控除額。ふるさと納税が反映されているか。とくに医療費控除などで確定申告をした人は要注意です。ふたつ目は扶養の人数と扶養控除額。子ども、配偶者、年金暮らしの親、遺族年金を受給している母など、対象になりうる家族がいる人は必ず見てください。3つ目は所得控除の欄。医療費控除、生命保険料控除、iDeCoの掛金(小規模企業共済等掛金控除)などが入っているか。4つ目は住宅ローン控除の反映。所得税から引ききれなかった分は、住民税からも一定額まで差し引かれます。判断に迷ったら、前年の源泉徴収票や確定申告書の控えと見比べてみましょう。控除額が大きく違う、あるはずの控除が見当たらない、住民税が急に上がった――どれかに当てはまれば、要確認です。

・取り戻せる期間の目安は、5年以内

漏れや誤りを見つけたら、期限内であれば、取り戻せる可能性があります。手続きは状況で分かれます。年末調整しかしていない会社員が控除漏れに気づいたら、自分で「還付申告(確定申告)」を税務署にします。すでに確定申告をしている人が控除を入れ忘れていたら、「更正の請求」です。いずれも税務署で行い、所得税が直れば、その内容は自治体にも連携されて住民税にも反映されます。住民税だけの問題に見える場合や、判断に迷う場合は、お住まいの自治体に相談してください。取り戻せる期間の目安は、5年以内です。漏れや誤りを見つけたら、早めに手続きを確認しましょう。

・最強の「裏技」は、控除を落とさないこと

手取りを増やすというと、特別な節税テクニックを探したくなります。でも実際は、使える控除をきちんと使うことが、いちばん確実な節税対策です。ふるさと納税を申告し忘れた。大学生の子を扶養に書き忘れた。亡くなった親や別居の親の扶養を、最初からあきらめていた。どれも知っているか、チェックしているかの違いで、数十万円単位の税金の違いになることもあります。だから、6月に届く住民税決定通知書を、ただのお知らせとして放置しないで、しっかりチェックしていただきたい。数分のチェックで、税金を取り戻せるならすごくオトクだと思いませんか。


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板倉 京(いたくら・みやこ) 税理士、マネージャーナリスト 保険会社・財産コンサルティング会社、税理士法人等で税理士業務に携わる。開業独立している女性税理士の組織、ウーマン・タックス代表。テレビ出演や全国での講演、書籍の執筆などの活動も多数。著書に『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)、『定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)など。

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2026年6月11日木曜日

退職金制度について詳しく知らない人が増えているのでは?

 先日ネット上のニュースを見ていて明らかに「退職金制度について詳しく知らない人が増えているのでは?」と思う記事が出ていましたので紹介します。

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若手歓迎も中高年は猛反発!「退職金廃止」に動く企業の本音と、いまだ転職者を冷遇する制度の時代錯誤

退職一時金制度を縮小・廃止する動きが、日本企業で広がりつつあります。たとえば、王子ホールディングス(HD)は今春、中途採用も含めて2026年春以降に入社する従業員(一部の高卒採用を除く)の退職一時金を廃止すると決めました。一時金の廃止分は給与に上乗せします。生涯年収は、新旧制度でほぼ変わりません。また、既存従業員の退職一時金制度は存続します。したがって、会社にとっても従業員にとっても、即座に大きな影響があるわけではありません。それに対し、即座に大きな影響があるのが、伊藤忠商事の化学品子会社タキロンシーアイです。同社は、4月に退職一時金を廃止しました。一時金の廃止分は給与と存続する確定拠出年金に上乗せします。王子HDとの違いは、国内従業員約1200人すべてを対象に実施することです。また、退職一時金制度の廃止には踏み込んでいなくても、支給額を減額したり、前倒し支給で足元の支給を充実させようという動きが他社で広がっています。SMBC日興証券は、採用サイトの初任給に「退職金前払給3.7万円を含む」と明記しています。

■制度の普及は1950年代後半から

なぜ、ここにきて退職一時金を縮小・廃止する動きが広まっているのでしょうか。退職一時金制度が日本で導入されたのは、1872年(明治5年)、工部省鉄道寮(現JR)が最初とされています。そして、同制度が民間企業に普及したのは、1950年代後半以降です。当時、人手不足が深刻化しており、せっかく採用し、訓練した人材に長期勤続してもらうことが、企業の課題でした。企業は、従業員の勤続年数が一定以上(たとえば30年)に達すると支給額が急増するという制度設計をしました。これによって従業員は、1社に長期勤続することが有利になりました。退職一時金制度は、年功序列賃金と併せて、長期雇用を特徴とする日本的経営を形作ったのです。

しかし拡大の一途だった退職一時金制度が、2000年代に入って転機を迎えました。日立製作所・NEC・富士通などが退職一時金を縮小し、確定拠出年金に振り向けました。これは当時、会計基準の変更で退職給付債務が財務諸表に計上されるようになり、リスク要因である退職給付債務の削減が急務になったためです。その後、企業では中途採用のニーズが高まりました。新卒採用?長期雇用を前提とする退職一時金制度は中途採用の足かせになることから、多くの企業が退職一時金を縮小するようになりました。この流れを決定的にしたのが、昨今の新人採用難です。激化する採用競争を勝ち抜くには、初任給を引き上げる必要があります。賃金の総額をなかなか増やせない状況で初任給引き上げの原資を確保するために、各社が退職一時金の減額を打ち出しました。

■新人・若手は制度廃止に肯定的だが…

これまで退職一時金制度を縮小・廃止した企業は、たいてい「退職一時金の減少分を給与や確定拠出年金の引き上げに回している。従業員に不利益は及ばない」と説明しています。従業員全体では、おそらくその通りでしょう。ただ、給与などへの配分を新人・若手に厚く、中高年に薄くすることで、世代間で利益・不利益が出ているのではないでしょうか。この疑問について、退職一時金制度を縮小・廃止した企業の従業員にヒアリングをしました。予想通り、世代間で受け止め方の違いがありました。中高年は、会社の措置に落胆し、会社に対し憤っていました。「中高年を狙い撃ちする措置で、落胆しています。組合も会社の言いなりで、何のために存在しているのか、と思います」(機械・50代)「以前はこんなドラスティックなことをする会社ではありませんでした。従業員の幸福なんて眼中にないようで、やるせない気持ちです」(精密・40代)一方、若手・中堅には、否定的な意見はなく、歓迎する意見が多く聞かれました。「(退職一時金廃止の)説明会に参加して、会社を変えようという会社側の熱意が感じられました」(化学・20代)「数十年先の退職金よりも今の手取りを増やそうというのは、合理的な取り組みだと思います」(ゲーム・30代)

もっとも、世代を問わずに多かったのは、退職一時金制度への理解やそもそもの関心が低く、「判断できない」「わからない」という意見でした。「当社の退職一時金制度は複雑で、理解できていません。制度改正も何やら複雑で、従業員にとってプラスなのかマイナスなのか、判断できません」(金融・40代)「退職金って30年後、40年後の話で、正直なところ関心ありません」(電機・20代)

■世代間の対立を煽らない配慮が必要

では、今後はどうなるのでしょうか。大手企業の人事部門関係者にヒアリングしたところ、退職一時金制度を縮小・廃止したいという声が数多く聞かれました。「これまで退職一時金は聖域でしたが、縮小・廃止に向けてようやく組合と協議に入ることになりました」(不動産)「すでに退職一時金を減額していますが、廃止に踏み込めないものか、部内で検討しています」(エネルギー)今後も中途採用は増加するでしょう。新卒採用難が解消される見込みはありません。とすれば、退職一時金の縮小・廃止という動きが加速することは間違いなさそうです。その際、従業員、とくに不利益を受けやすい中高年に対し、人事部門は慎重に対応する必要があるという見解がありました。「退職一時金の一方的な引き下げは、労働条件の不利益変更に該当するでしょう。退職給付はただでさえ難解なので、引き下げを進めるにあたり、組合としっかり協議し、従業員に丁寧な説明をし、理解を得ようと思います」(輸送機)「退職一時金だけでなく、このところ給与・福利厚生など新人・若手に有利、中高年に不利な制度改正が続いています。『世の中のトレンドだ』という一言で済ませるのではなく、世代間の対立を煽らないよう配慮する必要があります」(商社)

■退職金税制の見直しが急務

最後に、国に退職金税制の改正を改めて要望したいと思います。現在、退職一時金には退職所得控除があり、次のような計算式になっています。

・勤続20年以下:40万円 × 勤続年数

・勤続20年超:800万円+70万円 ×(勤続年数-20年)

例えば、AさんとBさんが30年間働いた場合、Aさん:30年連続勤務 → 控除額1500万円(800万円+70万円×「30年-20年」)

Bさん:20年勤務、転職して10年勤務 → 控除額1200万円(800万円+400万円)となり、同じ30年間働いても、転職したBさんは転職しないAさんよりも控除額が小さくなります。税制によって、Aさんのような長期勤続者を優遇、Bさんのような転職者を冷遇しているわけです。政府は経済界の要望を受けて、23年から「労働移動(転職)の促進」「成長産業への人材移動」を政策課題に掲げました。そして「長期勤続者だけを税制で優遇する仕組みは、転職をためらわせる要因になっている」とし、「骨太の方針」に退職金税制の見直しを明記しました。ところが、それから3年経っても税制改正は行われておらず、長期勤続者を優遇、転職者を冷遇する仕組みが続いています。長く日本の長期雇用を支えてきた退職一時金の見直しは、いわば働き方改革の総仕上げ。企業・組合・政府が協力し、知恵を出し合い、新しい日本の働き方を作っていきたいものです。


日沖 健 :経営コンサルタント2026/6/8(月) 7:00配信



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退職金は通常の給与とは異なり、「退職所得控除」という優遇措置があるため、税負担を大きく抑制することが可能です。退職金制度を廃止すると、企業は退職金という後払い用の賃金を積み立てる必要がなくなるので、積み立てに回していた賃金を現時点の給与に上乗せすることが可能になる。従業員にとっては、目先の賃金が増えるというメリットが期待できるが、「退職所得控除」という優遇措置がなくなるため、退職金制度がある場合に比べて生涯の税負担が重くなってしまうというデメリットがあることには注意が必要だろう。退職金がなくなると退職金で「住宅ローンを全額返済しよう」「大きな買い物をしよう」という考え方を持っている人にとっても困るのではないでしょうか。それに退職金制度をなくせば社会保険料負担も増えてしまうことについて知らない人が増えていることも事実だと思います。もう1度税金や社会保障制度の仕組みについてちゃんと勉強しなおした方がいい人が増えているのではないでしょうか。


2025年12月8日月曜日

米国債について

 ネット証券等を利用しているのですが最近米国債に興味があり、色々調べてみました。あくまでも個人的意見ですので最終的判断は自己責任でお願いします。

〇米国債の種類

①償還期間が1年以下の短期債の「トレジャリービル」

②償還期間が1年超10年以下の中期債の「トレジャリーノート」

③償還期間が10年超の長期債(一般的に30年物)の「トレジャリーボンド」

の3種類あります。これ以外に

①トレジャリーノート

②ストリップス債券

の2種類があります。


〇米国債を購入するメリットデメリット

・メリット

日本国債より利息が高い場合がある。

為替差益が生じる場合がある

・デメリット

「為替差損が生じる場合がある」

為替の変動による利益または損失のことです。

「価格変動リスクがある」

債券も株式と同じように毎日価格が変動します。そして債券価格と金利は逆相関の関係にあり、金利が上昇する局面で債券価格は低下、金利が低下する局面では債券価格が上昇する傾向にあります。したがって米国債の購入後に金利が上昇し、債券価格が低下した局面で中途売却しなければならないときには、売却損が出る可能性があります。ただし債券は償還時には額面金額で償還されるため、金利上昇局面でも償還日が近づけば価格は額面金額に近づくという特色があります。

「政治的リスクがある」

米国は信用格付けも高く、また米ドルは基軸通貨として信用度も高いため、債務不履行になる危険性は少ないです。ただし最近では政治的な問題から一時的な債務不履行に陥る危険性が起きています。


〇米国債の種類と特徴

・トレジャリーノート

利付債券(利息が付く債権)のこと。

・ストリップス債券

ゼロクーポン債(利息は付かない)が割引価格(価格が安い)販売されており満期時に額面価格で償還される債券です。この額面価格と割引価格の差(償還差益)が利息になります


〇ストリップス債券のメリットデメリット

・ストリップス債のメリット

利付債は毎年(毎回)の利払いごとに税金が差し引かれますが、ストリップス債は償還時に一括で課税となるため、毎年(毎回)発生する利息を税控除なしで再投資するのと同様の効果があります。債券は支払われた利息を同じ債券に再投資することは難しいため、償還までの期間が長ければ長いほど、納税が後になるメリットは大きいでしょう。少額の利息を少しずつ受け取っても意味がないという方には向いているともいえますし、逆に、毎回の利払いを楽しみにしている方には向いていないのかもしれません。

・ストリップス債のデメリット

注意点としては、ストリップス債にはクーポンがついていないため、金利による価格変動の影響が利付債より大きい傾向にあります。昨日と今日では買付価格が異なることもありますし、既発債(外国債券は、一般の人が購入するほとんどが既発債で、すでに発行されているものを証券会社から購入する方法を取ります)のため、常に同じものがあるとは限りません。自分の条件に合う債券が見つかったら、その場で決断しないと翌日には買えない可能性もあります。また、途中売却するときには価格が変動しているため、利益が出ることもあれば、損が出る可能性もあるため、購入の際には、満期償還まで持つ前提で選択していただくことをおすすめします。


〇ストリップス債券の償還差益に対する税金

購入時の割引価格と額面との差額が「償還差益」として同じく20.315%で課税されます。 


2025年4月22日火曜日

インボイス制度公表サイト

 2023年10月から始まったインボイス制度に登録しているかどうかを調べることが出来るサイトです。運営している会社の情報を調べるのに便利ですね。

https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/


2024年11月27日水曜日

無効になるリスクも…相続放棄前後に“やってはいけないこと”とは?避けるべき行為をしてしまった場合の「3つの対処法」

 「相続放棄」は、故人の財産や負債の引継ぎを辞退する大切な選択肢です。相続を通じて借金等を背負うリスクを避けたいと考える方にとって、この手続きは有力な手段となります。ただし、相続放棄を行うには家庭裁判所での手続きが必要であり、期間や注意点も多く存在します。本記事では、相続放棄の手続きから注意点、避けるべき行為まで詳しく解説します。

〇相続放棄とは何か

相続放棄とは、相続人が故人の財産や負債を一切引き継がないことを選ぶ手続きです。特に、借金が多い場合に検討されます。手続きは、相続の開始を知った日から3ヵ月以内に、故人の最後の住所を管轄する家庭裁判所で行います。必要な書類(故人の住民票除票等)を提出し、裁判所に受理されることで手続きが完了します。

〇相続放棄前後に“避けるべき行為”

相続放棄を行う前後には、いくつか注意が必要な行為があります。これらを行うと、相続放棄が認められなくなったり、無効となったりすることがあります。

・相続財産の処分

相続放棄を考えている場合、相続財産を処分してはいけません。例えば、実家を解体したり売却したりすると、相続を承認したと見なされ、相続放棄ができなくなります。保存行為(現状維持のための措置)は認められますが、処分行為には慎重を期すべきです。

・預貯金の引き出しや解約

故人の預金に手をつけると、相続放棄ができなくなるリスクがあります。誤って引き出してしまった場合でも、使わなければ処分行為と見なされないこともありますが、元の口座に戻すのが理想です。口座が凍結されている場合は、引き出した現金を他の資金と分けて管理するようにします。

・車や家具などの遺品整理

車や家具は相続財産に含まれるため、売却や廃棄をすると相続を承認したと見なされることがあります。車を処分しなければならない場合は、専門家に相談し、見積もりを取って書類を残すことが大切です。家具についても同様で、安易に処分せず、弁護士に確認し、証拠書類を残すことをおすすめします。

・賃貸契約の解約

故人が賃貸物件に住んでいた場合、相続放棄を検討しているなら、賃貸契約の解約には注意が必要です。契約を解約すると、賃貸物件を借りる権利(賃借権)も財産の一部と見なされ、それを処分したとされて相続放棄が認められなくなる恐れがあります。解約を進める場合は、貸主や管理会社と相談し、後で証拠となる書類をきちんと残しておくことが大切です。

・クレジットカードや携帯電話の解約

故人のクレジットカードや携帯電話の解約も慎重に行うべきです。これらを解約することで、相続財産を処分したと見なされる可能性があります。相続放棄の手続きが完了するまでは、契約に手をつけない方が無難です。

・相続財産の隠匿・消費

相続放棄を行った後でも、故人の財産を隠したり使ったりすると、相続を承認したと見なされ、相続放棄が無効となる恐れがあります(民法921条3号)。相続放棄後は、財産に手をつけないよう注意が必要です。

・財産を隠す、目録に記載しない

相続放棄後に故人の財産を隠す、遺産目録に記載しないなどの行為は、背信行為とみなされます。このような行為が発覚すると、相続放棄の効力が否定され、相続を承認したことになるリスクがあります。隠匿や未記載は法的なペナルティを伴うため慎重に対応することが求められます。

・被相続人の債務支払い

相続放棄を検討している場合、故人の借金を相続財産から支払うのは避けるべきです。借金の支払いが「処分行為」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。支払いが避けられない場合は、自分の資産を使って支払いを行うと良いでしょう。これにより、相続放棄手続きに影響を与えることなく債務を返済できます。

〇遺産分割協議への参加

遺産分割協議に参加すると、相続を承認したと見なされるリスクがあります。協議は基本的に相続を前提に行われるため、相続放棄を考えている場合には参加しない方が無難です。ただし、相続人全員での協議が行われなければ、法的に有効な協議とはなりません。相続放棄を確実に行うには、家庭裁判所での手続きが必要です。

〇3ヵ月の熟慮期間を放置すること

相続手続きでは、相続開始を知ってから3ヵ月以内に単純承認、限定承認、または相続放棄を選択しなければなりません。何も手続きを行わないと、原則として単純承認が適用されます。熟慮期間を過ぎた場合でも、弁護士に相談すれば救済措置があることもあります。遅れた場合は、早めに専門家に相談することが重要です。

〇相続放棄後にも必要な「財産管理」

相続放棄をしても、すぐにすべての財産管理から解放されるわけではありません。相続放棄後でも、占有している財産については「保存義務」が生じます。これは、相続財産の価値を保護するために必要な義務です。例えば、空き家や土地、車などを占有している場合、その財産を管理し、適切に保存する義務が続きます。2023年の民法改正により、相続放棄後に占有している相続財産については、保存義務が引き続き適用されることが明確になりました。この保存義務は、相続財産清算人が正式に選任されるまで続きます。すべての相続人が相続放棄をした場合や、誰も財産を占有していない場合には、家庭裁判所により相続財産清算人が選任され、財産の管理が移行します。

〇保存義務の重要性

保存義務を怠ると、損害賠償請求やトラブル、ペナルティを受けるリスクがあります。特に不動産や車などは劣化や事故のリスクがあるため、注意が必要です。相続財産の保存義務は、相続放棄後でも他の相続人が正式に財産を引き継ぐまでは続くため、放置しないようにしましょう。

〇相続放棄後でも“例外的に許される”財産処分

相続放棄後でも、以下のような場合は財産の処分が認められています。

・保存行為

「保存行為」とは、相続財産の価値を維持するために必要な措置を指し、民法921条1号により財産の処分には該当しません。例えば、台風で家屋が被害を受けた際の応急修理、借金返済期限の督促、有価証券や貴金属の保管、公共料金や税金の支払いなどが保存行為に該当します。相続放棄後も財産の保存義務があれば、これらの行為を行う必要があります。保存行為と財産処分を誤ると、法定単純承認が成立する恐れがあるため、判断に迷う場合は専門家に相談することをお勧めします。

・短期賃貸借

相続財産に関して、一定期間を超えない賃貸借契約は財産処分に該当しません。具体的には、山林の賃貸借は10年、その他の土地は5年、建物は3年、動産は6ヵ月以内であれば問題ありません。しかし、相続放棄後はこれらの賃貸借契約を結ぶ必要は基本的にありません。リスクを避けるため、相続財産には手をつけないことが推奨されます。

・葬儀費用などの社会通念上相当な支出

葬儀費用は故人を見送るために必要な支出であり、一般的な範囲内であれば相続財産の処分には該当しません。ただし、その範囲は故人の社会的な立場によって異なるため、支出の妥当性には注意が必要です。場合によっては、債権者が葬儀費用の過剰支出を問題視することもあります。相続放棄を考えている場合、葬儀費用は自分の資金で賄うのが無難です。

・経済的価値のない遺品の形見分け

経済的に無価値な遺品については、形見分けをしても相続財産の処分とは見なされません。しかし、自動車や高価な時計など価値がある遺品については、形見分けを行うと財産の「処分」と見なされ、相続を承認したと判断されるリスクがあります。したがって、価値のある遺品については慎重に扱う必要があります。

〇相続放棄後にやってはいけないことをしてしまった場合の対処法

相続放棄後に誤って財産の処分を行い、法定単純承認が成立した場合、相続放棄が無効になる可能性があります。その場合でも、取るべき対策があります。

対処法1:遺産分割協議での対応

相続放棄後に相続財産に関わる行為をしてしまった場合、まず遺産分割協議を検討します。遺産分割協議書を作成し、他の相続人と「財産を相続しない」合意を得ることで、実質的には相続を避けることが可能です。しかし、故人に多額の債務がある場合、他の相続人の同意を得るのは難しく、慎重な交渉が必要です。専門家のサポートを受けながら進めることをお勧めします。

対処法2:債務整理の検討

誤って借金を相続してしまった場合、債務整理を検討することが有効です。代表的な方法として、任意整理、個人再生、自己破産、特定調停があります。これらを利用することで、借金の返済負担を軽減できますが、信用情報に影響を与えるデメリットもあるため、慎重に選択しましょう。専門家の相談を受け、最適な方法を選ぶことが重要です。

対処法3:専門家への早期相談

相続放棄を検討している場合、誤った行動によって法定単純承認が成立するリスクがあります。法定単純承認が成立すると、その後に相続放棄はできません。しかし、相続問題に詳しい弁護士に早めに相談すれば、決定を覆す可能性があります。

実際に、3ヵ月を超えた後に相続放棄が認められた事例もあります。専門家の知識を活用し、適切な対応を取ることが重要です。

〇相続放棄後に受け取れるもの・受け取れないもの

相続放棄を行った場合、受け取れるものと受け取れないものがあります。

・受け取れるもの

死亡保険金(受取人が指定されている場合):受取人に指定されていれば、死亡保険金は相続財産とは見なされず、受け取ることができます。

未支給年金:故人が死亡時まで受け取っていなかった年金は相続財産に含まれず、相続放棄をしても受け取れます。未支給年金は、配偶者や子など、一定の条件を満たす家族が受け取ることができます。

祭祀財産(仏壇やお墓など):相続放棄をしても、祭祀財産は引き継ぐことができます。

・受け取れないもの

相続財産(不動産、預貯金、株式など):相続放棄をした場合、これらの財産を受け取ることはできません。

医療費や未払い給与などの還付金:これらは相続財産に含まれるため、相続放棄後には受け取ることができません。

相続放棄を考えている場合、これらの財産に手をつけないよう注意が必要です。特に、故人が生前に受け取るべきだったお金に関与すると、相続放棄が無効になり、相続を承認したとみなされることがあります。

・相続放棄後でも「免除されない義務」

相続放棄をすると、法的には相続人としての立場を失いますが、全ての責任や義務が免除されるわけではありません。以下の義務は、相続放棄後も残る場合があります。

・相続財産の管理と引継ぎ

相続放棄をすると、相続財産を受け取る権利はなくなりますが、相続財産を保持している場合、その管理義務が生じます。例えば、故人の通帳や重要書類を保管している場合、他の相続人や相続財産管理人に引き渡すまで、その財産を適切に管理する責任があります。積極的な行動は求められませんが、安全に保管し、引き渡しを行うことが求められます。

・連帯債務や連帯保証債務

相続放棄をしても、連帯債務や連帯保証に関する義務は免除されません。被相続人と一緒に連帯債務者や連帯保証人になっていた場合、相続を放棄しても自分が負っている債務の責任は残ります。したがって、相続放棄をしても連帯債務や保証から解放されるわけではありません。

・相続放棄に関する専門家への相談

相続放棄を進める際、法律的な知識が必要です。誤って法定単純承認に該当する行為をしたり、手続きを期限内に進めなかったりすると、相続放棄が無効になることもあります。そのため、相続放棄を確実に進めるためには、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

・手続きのスムーズ化

相続放棄の手続きでは、戸籍謄本など多くの書類が必要ですが、専門家に依頼すれば、煩雑な手続きや書類収集を任せることができます。また、相続放棄申述書の作成もミスなく進められます。

・単純承認や期限超過の防止

相続放棄の手続きには、相続開始を知った日から3ヵ月以内に申立てを行う必要があります。期限を過ぎると、相続放棄が認められなくなるため、専門家に依頼することで、期限内に確実に手続きを進めることができます。

・債権者対応のサポート

相続放棄の手続き中に、債権者から故人の借金の返済を求められることがあります。弁護士や司法書士に相談すれば、債権者とのやり取りもサポートしてもらえ、手続きを安心して進めることができます。相続放棄を確実に進めるためには、専門家によるサポートが重要です。必要な手続きを確実に行い、リスクを避けるためにも、早めに相談することをお勧めします。


2024年11月14日木曜日

あなたはどのタイプ? NISAを始めたいけれど「始められない理由」5つ

 「NISA」が話題だけれど、なかなか始められない…という方はいませんか? 筆者は、日々そのような方にたくさんお会いしていて、決して始められないのは少数派ではないと感じます。そんな、NISAを始めたいけれど始められない人は、大まかに「5つのタイプ」に分かれると感じます。今回はそれらのタイプと、始めるためのアドバイスについてお伝えしたいと思います。

タイプ1.「お金が減ることが怖い」

「NISAって投資ですよね? 投資って、お金が減りますよね?」と、投資をしてお金が減ることが怖いタイプです。投資が初めてであれば、誰でもそう思うのは当然でしょう。これまでお金をすべて元本保証の預貯金に預けていれば、最初から金利がわかっていますし、お金が減ることはありませんよね。一方で、NISAでは、株式や投資信託を買うことになり、いずれも元本保証はありません。増えたり減ったりする可能性があるのは確かです。しかし、お金をしっかり増やそうと思ったら、増える可能性だけでなく、減るリスクも同時に受け入れなければなりません。今の超低金利時代で、元本保証で、大きく増える金融商品は存在しないからです。「でも、お金が減るのは怖いから、投資はやめておこうかな」と思うのは、ちょっと待ってください。最近の物価上昇も、実は大きなリスクの一つなのです。自分の資産を、すべて低金利の預貯金だけに預けておくと、10年、20年たって物価がさらに上昇した場合、資産が実質的に目減りしてしまいかねません。そのため、投資をして減るリスクを受け入れながら、増やすことを目指すことも、物価上昇中の今の時代では大切なことなのです。まずは少額から、毎月の積み立てで投資を始めてみてはいかがでしょうか。増えたり減ったりしてお金を育てることを経験してみることで、投資をすることの大切さも実感できるかもしれません。

タイプ2.「投資するほどお金がない」

「投資をする人って、お金持ちですよね。投資をしたいけれど、お金が全然なくて…」という声もよく聞きます。

実際にお金持ちで投資をしている人は多いですが、一般的な人でも、投資がしやすい仕組みができて、実はお金持ちかどうかは、あまり関係ない時代となりました。というのも、幅広く投資先を分散できる「投資信託」なら、月100円や1000円などの小さな金額でも、気軽に投資ができるようになったからです。月100円くらいであれば、どんな方でも捻出できるのではないでしょうか。これを機に、自分の支出を見直してみて、無駄があればカットしましょう。意外と、貯蓄や投資にまわすお金が捻出できるかもしれません。

タイプ3.「忙しくて申し込みに行けない」

「投資を始めるのは、手間がかかって大変。金融機関の窓口があいている平日の昼間に、申し込みになんていけません」という声も聞きます。実はNISAの口座開設は、ネット証券やネット銀行なら、PCやスマホで申し込みが完了しす。わざわざ店舗に行かなくても、NISAが始められるのです。以前は、金融機関の口座開設には長い時間がかかりましたが、最近は、ネット証券を中心に、かなりスピーディーになっています。昔の経験者からは「時間がかかるよ~」と言われるかもしれませんが、意外とそうでもないのです。ネット証券などの口座開設ページを確認してみてください。

タイプ4.「金融機関が決められない」

「NISA口座を作る金融機関は、どこがいいのだろう…」と、何か月も何年も迷っていて、決められない方もいます。NISAは、ネット証券、店舗型の証券会社、店舗型の銀行、ネット銀行で始められます。それゆえ、迷ってしまうかもしれません。一つ注意したいのが、株式を買いたい場合は、基本的には証券会社(ネット証券、店舗型証券会社)のみということ。銀行でNISA口座を開設した場合は、株式は買えず、投資信託の購入のみとなります。ちなみに、NISAは一人1口座で、一度口座開設をして商品を買うと、その年は違う金融機関に変更ができません。年1回変更は可能とはいえ、毎年変更するのはなかなか面倒。ある程度の期間はお付き合いすることを考えて、口座を開けるとよいですね。そのため、いつか株式を買いたいと思っていたら、ネット証券か店舗型証券会社でNISA口座を開くのがよいでしょう。身近な人と同じ会社の口座で開くのも一つの選択肢だと思います。

タイプ5.「そもそも、NISAが複雑すぎてよくわからない」

上記のタイプに加えて、よく聞かれるのが「NISAという言葉は散々聞いてきたけれど、結局NISAって何なのかがよくわからない」という声です。「NISA」とは、「少額投資非課税制度」の略。投資をして、利益が出たら通常は約20%の税金がかかりますが、それがかからない(=非課税)制度です。10万円の利益が出た場合、一般的には2万円ほどの税金がさしひかれて利益は8万円になりますが、NISA口座で買えば、この税金が差し引かれず、10万円の利益をそのまま受け取れるのが大きなメリットです。NISAでは一人あたり、年360万円まで投資ができる枠があります。「少額投資非課税制度といっても、360万円なんて“少額”ではない…」と感じてしまいそうですが、何億もの資産を投資している人も世の中にはたくさんいて、その金額に比べたら“少額”というわけですね。ちなみに、NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2枠が自動的についてきます。「成長投資枠」は株式や投資信託などいろいろな商品を買える枠で、年240万円が上限、「つみたて投資枠」は金融庁が事前にOKを出した投資信託だけが買える枠で、年120万円が上限です(“枠”という投資上限額が決められているだけで、お金は自分で出します)。その枠を使い切る必要はなく、例えば月100円×12か月=年間1200円の投資でもOKです。NISAのどちらの枠を使って何を買ったらよいかと迷う方も多いので、まずは「つみたて投資枠」にある投資信託を積み立てていくのが、選びやすくてスムーズかと思います。以上、NISAを始めたいけれど始めたい人によくある理由について5つ紹介しました。さまざまな投資を経験すると、利益が出たときに約20%の税金がかからないNISAの魅力を感じるでしょう。ただ、あくまでも投資ですので、減る場合もあることを念頭において、余裕資金で少額から始めるようにしましょう。


(西山美紀)


MONEYPLUS / 2024年11月5日 7時30分


2024年11月2日土曜日

「相続税の滞納」なぜ増加?5つの原因と「本当に必要な対策」とは?【専門家が解説】

 国税庁が発表した「令和5年度租税滞納状況の概要」によると、相続税の新規滞納発生額は前年度より増加しており、多くの人が納税に悩まされていることが推測される。相続税を支払うべき方々には、被相続人が残した財産があるはずだ。にもかかわらず、なぜ相続税の滞納は発生するのだろうか。本記事では、来たるべき日に備えた本当に必要な相続税対策や、相続税の滞納によるペナルティなどについて、詳しく解説する。(税理士・岡野相続税理士法人代表社員岡野雄志)

〇相続税の滞納が増えている!2023年度の滞納状況とは

国税庁が発表している「令和5年度租税滞納状況の概要」には、租税の滞納状況や未然防止策、整理促進に向けた取組が掲載されている。まず、相続税に限らず租税全般の滞納状況を見てみると、2023年度(令和5年度)の新規発生滞納額は7997億円で、1992年のピーク時の4割程度に留まっている。しかし、前年の22年度よりも802億円増加している(国税庁が指す滞納とは、納付期限までに納付されず督促状が発送されたものを指す)。今回注目する相続税を見てみると、新規発生滞納額は464億円となっている。前年の22年度は367億円だったことから、こちらも97億円増加しており、前年度より滞納が増えている。21年度は325億円、20年度は236億円と公表されており、増加の一途をたどっている。

本資料には新規に発生した滞納以外に、滞納残高も公表されている。相続税の滞納残高(前年度末時点の滞納および新規発生滞納額の合算)は、23年度は560億円、22年度は527億円とされており、未整理対応が継続している相続税も増加している。なぜ相続税の滞納は発生するのか?

〇主な5つの原因とは

相続税が発生する相続人には、被相続人から引き継げる財産があるにもかかわらず、新規発生滞納額も滞納残高も増加している。なぜ相続税の滞納は発生するのだろうか。主な原因として、以下の5つがある。

1つ目は「現金の不足による納税難」。相続税は原則「現金」で納付する必要があるが、用意できなければ滞納になってしまう。納税のために金融機関から融資を受ける方法も考えられるが、融資を受けるまでには時間を要するため、納税が遅れる可能性もある。

2つ目は「相続財産の中で不動産の割合が高い」。相続財産に有価証券など換価しやすい財産が少なく、換価しにくい不動産が多い場合、高額の相続税が発生しているにもかかわらず、手元に納税資金を用意しにくい。

3つ目は「相続手続きの知識不足」。相続税の納付期限は「被相続人が死亡したことを知った日から10カ月以内」である。しかし、大切な家族が亡くなった後は葬儀や遺品整理などの手続きに追われ、時間があっという間に経過してしまう。知識不足から相続税申告の準備が遅れるケースも少なくない。

4つ目は「相続人間の対立」。遺産分割協議が難航すると、相続税の申告が遅れやすくなる。高額の相続財産がある場合や、被相続人を介護していた相続人とその他の相続人との間で不公平感が生じるケースでは、遺産分割協議がもめやすい。

5つ目は「申告を認識していない」。価値のある相続財産が少ないと思い込んでいたり、名義預金が相続税の対象となることを知らなかったりすると、自身が相続税申告の対象者であることを失念しがちだ。近年はネット銀行やネット証券の財産を見落とすケースもある。また、相続発生から過去7年以内の生前贈与も相続税の対象となるため、注意が必要だ。

〇知らないと怖い!相続税を滞納するとどうなるか

相続税が払えない場合には、一体どのようなペナルティが待ち受けているのだろうか。申告期限である10カ月以内に申告書が提出できないと、無申告加算税が加算されてしまう。無申告加算税は、最大、相続税額300万円を超える部分に対して30%課税される。また、納付期限を超えると「延滞税」も加算される。さらに隠ぺいで申告が遅れたとみなされると、重加算税までプラスされる。重加算税は非常に重いペナルティであり、納付する相続税に対して40%も課税される。相続税申告・納付の遅れや隠匿は、何のメリットももたらさないことがわかるだろう。

〇複数の相続人のうちの誰かが相続税を納付しないとどうなる?

複数の相続人がいる場合、自身が取得した財産に応じた相続税を納めることが一般的だ。基本的に誰か1人が代表して納付するものではない。では、別の相続人が相続税を納付しなかった場合には、どのようなリスクがあるのだろうか。結論から言うと、他の相続人の滞納に関しても、自分が支払うよう税務署から請求される可能性がある。なぜなら、相続税には「連帯納付義務」があり、相続人全員が連携して相続税を支払う必要があるからだ。遺言書で財産をもらう場合も同様であり、相続人が複数いる場合には注意が必要だ。なお、本来支払うべき相続人が税務署から納税猶予や物納を認められた場合は請求されない。「相続財産を使い切ってしまった」「元々仲が悪く連絡しあう関係ではない」といった事情があっても、税務署は考慮してくれない。遺産分割協議や遺言書による財産の分配時に、いつ相続税を納付するのか確認しあっておくことも検討しよう。

納付が遅れそうな相続人がいる場合、代表者が支払うことも可能だが、贈与とみなされる可能性もある。相続税は注意したいポイントが多いため、必ず税理士に相談した上で手続きを進めてほしい。

〇相続税の支払いには現金が必要!来たるべき日に備える方法とは

相続税を納めるためには「現金」と「正しい相続税知識」が必要だ。物納も選択肢として考えられるが、現金での納付が困難であり国が定めた基準に該当していないと、物納申請は却下されてしまう。相続前から物納を目指すことは得策ではないため、来たるべき日に備えて相続税納付の準備を行うことが大切だ。また、納付期限や控除、特例など知っておくべき知識も多いため、相続税の基礎知識を学んでおくことも重要だ。相続について相談する多くの人は、相続開始後に税理士に相談する。相続税申告・納付に直面してから初めて税理士の必要性を感じるのだ。しかし、資産税に強い税理士の多くは生前からの相続税試算を推奨している。将来支払う可能性がある相続税額を把握すると、今やるべき対策がわかるからだ。特に不動産が多い方は、自身の所有する不動産がどのぐらいの評価になるのか、まずは税理士へ相談してほしい。相続税を節税し、将来の負担を少しずつでも減らしていくことも大切だ。オーソドックスな対策方法だが、贈与は効果的である。年間110万円の暦年贈与や相続時精算課税制度、贈与税の配偶者控除の特例など、家族の財産状況や構成にあわせて贈与を進めよう。相続時のトラブルによって相続税申告が遅れないように、遺言書を作成することもおすすめする。遺言書があれば遺産分割協議を行わなくて済むからだ。誰にどの財産を残すか、ご自身の意志を込めることも可能になる。相続時に現金が不足することが予想される場合、生命保険を活用する方法も検討しよう。生命保険には法定相続人1人につき500万円の非課税枠が用意されている。死亡時に保険金を受け取れるため、相続税納付に活用できることも生命保険のメリットと言えるだろう。不動産が多い場合には、贈与の上で収益物件化を目指したり、不要な土地・建物を売却しておくことも大切だ。収益を貯蓄し相続税に充てたり、不動産売却で現金化しておけば納税に備えることもできる。生前の段階から不動産の有効活用を検討しよう。

〇遺産分割協議が終わらない場合は未分割状態で申告できる

遺産分割協議がまとまらない場合であっても、相続税申告は待ったなしだ。調停や係争中であっても、税務署はトラブルを理由に相続税申告を待ってはくれない。このようなケースでは遺産分割の内容が決まっていないため、法定相続分で相続財産を按分して、申告・納付を行うことできる。トラブルの渦中であっても、税理士・弁護士と連携しながら、期限内の申告を進めてほしい。遺産分割が正式に決定したら、4カ月以内に更正の請求をすればよい。本記事では、相続税の滞納について、国税庁の最新資料を参考に滞納の発生理由や対策方法について詳しく解説した。相続税の納付には現金が必要であり、生前から準備を進めておくことが望ましい。納付のために、大切な不動産や株式を売却することを避けたい人もいるだろう。まずは生前から相続税の試算を行い、どのように納税資金を用意するのか家族で計画を立てよう。



ダイヤモンド・オンライン


定年退職を機に息子の「扶養」に入りたいです。「扶養に入るための条件」はなんですか? メリット・デメリットも教えてください

 〇税法上の扶養親族の条件

納税者である子どもに所得税法上の控除対象扶養親族となる親がいる場合には、扶養する子どもは一定の金額の所得控除が受けられ、所得税・住民税の節税ができます。控除額は、扶養親族の年齢、同居の有無等により決まります。たとえば、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の方の控除額は、同居の場合は58万円(住民税45万円)、同居以外は48万円(住民税38万円)です。70歳未満の親の控除額は38万円(住民税は33万円)です。たとえば、所得税率20%の子どもが70歳以上の同居している親を扶養する場合の節税額を計算してみましょう。所得控除額は58万円なので、節税額は58万円×20%=11万6000円です。また、住民税に関しても、控除額45万円×10%=4万5000円の節税ができます。

扶養親族となる条件は、その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人をいいます。

(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます)、または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること

(2) 納税者と生計を一にしていること*

(3) 年間の合計所得金額が48万円以下であること

給与のみの場合は給与収入が103万円以下、年金収入のみなら65歳未満は108万円以下、65歳以上なら158万円以下であれば扶養控除を利用できます。

(4) 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと

親に事業の手伝いなどをしてもらう場合は気を付けてください。

(出典:国税庁「No.1180 扶養控除」)

*「生計を一にしていること」

同居の場合は、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。別居の場合は、余暇には起居をともにすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。銀行振込の控えなどを保存しておきましょう。

〇健康保険上の被扶養者の条件

子どもが会社員等であれば、子どもの健康保険の被扶養者になることによって、親は健康保険料を負担せずに保険給付を受けることができます。子ども(被保険者)の健康保険料負担も変わりません。被扶養者に該当する条件は、日本国内に住所(住民票)があり、被保険者によって主として生計を維持されていること、および次の収入要件と同一世帯の条件の両方を満たす場合です。収入要件は、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ、(1) 同居の場合は収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満、(2) 別居の場合は収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満であることが条件です。

被扶養者が、配偶者、子、孫および兄弟姉妹、父母、祖父母などの直系尊属の場合は、被保険者と同居している必要はありませんが、これ以外の3親等内の親族や内縁関係の配偶者の父母および子は同居している必要があります。なお、75歳になると後期高齢者医療制度に加入しますので、健康保険の被扶養者から外れますので留意しましょう。

〇メリット・デメリット

親が子どもの扶養に入ることにより、子どもの税金負担が減る、75歳未満の親の健康保険料の負担をなくせるといったメリットがあります。一方、高額療養費の上限額が高くなるので親の医療費の自己負担が増える、介護保険料が世帯収入に基づいて計算されるため親の介護保険料の負担が増える、介護サービス利用料の負担が増える、といったデメリットがあります。以上のように、子が親を健康保険の扶養に入れる場合には、このようなデメリットがありますので、税金だけ子どもの扶養に入れるという方法もあるでしょう。

〇出典

国税庁No.1180扶養控除

日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き

執筆者:新美昌也

ファイナンシャル・プランナー



2024年7月16日火曜日

NISA制度"改悪"で譲渡益に課税の悪夢…エコノミストが「老後はNISAを使ってはいけない」と断言するワケ

 老後にストレスフリーでお金を運用するにはどうすればいいか。エコノミストの崔真淑さんは「高齢者は一般口座や特定口座での投資に加えて、資産を『分散投資』することが大切。そのための具体的な対策がある」という――。

■運用資金は5年は使うあてのない金額にする

2025年の年金改正を控えて、「65歳まで保険料を支払う」、あるいは「支給開始年齢が70歳や75歳に引き上がる」といった案が出ていますが、今後、年金制度はどんどん“改悪”されていく可能性は高いです。前回も述べたように、おそらく年金だけで暮らすことは、非常に難しくなるでしょう。年金だけで暮らせないとなると、働くほか、「運用する」ことを考えていかなければいけません。老後の運用について、大事な前提は、次の2つです。

前提①余裕資金で行う

80歳、90歳までカツカツで余裕資金がないといった高齢者は、そもそも株式投資をすべきか再考が必要だと思います。投資するなら、5年は使うあてのないお金を回しましょう。かつて金融業界にいた私がつくづく思うのは、10年に一度は、大きい金融ショックがくる可能性が高いということです。今は景気がよくても、この先、何が起こるかわからない。だからこそ、せめて5年は手元になくても辛抱できるお金をあててほしいのです。

■老後はNISAを使ってはいけない

前提②NISA口座は使わない

今、新NISAが大流行ですが、高齢者の方にはNISAはお勧めしていません。なぜならNISAには「すべてが非課税ではない」「譲渡税が課税される可能性がある」「損益通算できない」といった落とし穴があるからです。一つずつ、説明していきましょう。

・すべてが非課税ではない

NISAを完全非課税だと思っている人は少なくありません。

ですが、NISAは完全非課税ではありません。今、人気のアメリカ株式市場に上場しているような「S&P500」に連動するETF(上場投資信託)や、個別のアメリカ株式を購入する場合は注意が必要です。通常(一般口座や特定口座の場合)、海外からの配当金にはその国に税金を払ったうえで、日本でも20.315%が源泉徴収されます。確定申告をすることにより外国税額控除を受けられるしくみです。新NISAではこの20.315%が非課税になることで、二重課税でなくなるため、“海外に税金を支払う”必要が生じるのです。たとえば、米国株や米国ETFの配当には10%の税金がかかります。

・譲渡益が課税される可能性がある

政府は現在、将来の税制改正を見越して、NISAの配当金などインカムゲインには課税をしていません。ですが、譲渡益などキャピタルゲインには税金をかけようという議論が出ています。「安くなった株を買って高く売りたい」「含み益が出たら利益を確定して売りたい」などと、譲渡益狙いでNISAを使っている人にとっては寝耳に水。この先、制度変更される可能性があると考えるなら、NISAでキャピタルゲインありきの保有にのめり込まない姿勢が必要でしょう。

■NISAで予想される悪循環

老後のお金の設計にNISAが向いていない理由はまだあります。

・損益通算できない

「損益通算」とは、株式や投資信託を売却して利益や損失が出た場合、利益と損失を合算して合計が利益になっていれば、その利益に対して課税されるしくみ。たとえば、ある株式を売って50万円の利益が出る一方、別の株式で30万円の損失が出たら、50万円-30万円=20万円に税金がかかる、ということ。これが損益通算のしくみです。また1年間の合算した損益が結果的に損失になった場合、翌年以降、最小3年間、繰り越せる「繰越控除」が適用されます。たとえば、ある年に30万円の損失で、翌年の利益が40万円であれば、繰り越した30万円の損失と40万円の利益を合算し、40万円-30万円=10万円に対して課税されるのです。この損益通算と繰越控除が、NISA口座ではできません。株式投資は正直、これで儲かると思っても、なかなか理想通りに利益が出ることはありません。“塩漬け”になっているお金をさっさと損切りして、次の新しい運用に使いたいけれど、損益通算できないとそれもなかなか踏ん切りがつかない。こんな悪循環は多々起きます。株式投資は、ある程度“損をする”ことが前提であれば、私は損益通算できるほうが結果的にオトクになると思っています。ですから運用するなら、NISA口座ではなく、一般口座や特定口座で行うことをお勧めします。

■資産を分散投資するときのポイント

高齢者は「一般口座や特定口座で投資する」ことに加えて、資産を「分散投資」することが大切になります。増やすより、とにかく今ある資産を目減りさせないことが先決です。

もちろん80代でも、特定の資産に集中投資して成功しているトレーダーの方もいます。しかし、そういう人は、ずっと昔から投資をしてきたベテランの人。私の知り合いにもいますが、そういう人は本当に株式投資が好きで、『会社四季報』を24時間見ていても飽きない。それほど好きな人であれば、集中投資もよいと思いますが、そうでなければやめたほうがいいというのが私の考えです。では、どうやって分散させればいいか。ここ数年、日経平均が最高値を更新したり、戦争で世界的に物価が上がったりと想像を超えることが起きています。こうした景気リスクや地政学リスクの“有事”に備えるには、それらに敏感に「反応するもの」と逆に「反応しにくいもの」といったように、感応度の異なるものに分散させるのがおススメです。具体的には、株式、債券、不動産、金や原油などはのコモディティは、それぞれ有事や景気に対しての反応の仕方が違う傾向にあり、こうしたところに分散させるのが重要でしょう。株式も日本株と外国株に分散させます。日本円の目減りがこわいならば外貨にする、または外貨で「外貨建て社債を買う」、あるいはインド株などこれから伸びそうなインデックスファンドを買う、といった対策をします。

■不動産投資信託を持つメリット

ちなみに私は、不動産ではなく、「REIT(リート)」と呼ばれる不動産投資信託にも注目しています。不動産投資信託とは、投資家から集めたお金で不動産を所有し、そこから得られた賃料収入を分配するもの。ホテルリートや物流リート、オフィスリートなど、いろいろな商品があり、小口で投資できるのがメリットです。現物の不動産投資は、借金して投資できるメリットがある一方、頭金を用意するのが大変だったり、手数料が非常に高くそれで損することもあるなどのデメリットもあります。そう考えると、不動産投資に興味があっても、そこまではしたくないという人は多い。私もその一人です。そんな人にリートはおススメといえるでしょう。今は金利が上がったことでマイナスになっていますが、もともと不動産投資は、戦争や金融ショックで多少は変動しても、賃料自体は景気に左右されにくいもの。過去のデータからは、「平均的には長期でインカムゲインでしっかりとリターンが出やすい」ことも実証されています。ですから配当金狙いでリートを持つというのは悪くないと思います。もちろん注意点もあります。歴史のあるリートは、想定外に修繕費用などのコストが出ることで、配当金が減る可能性もあります。リートの構成や中身を、しっかり確認してください。

■「仕組債」は様子見で検討を

注意すべきは「仕組債」と呼ばれるデリバティブ(金融派生商品)を利用することでキャッシュフローを生み出す債券です。証券会社や銀行がすすめる仕組債については、手数料や格付けなど、商品の中身が金額に見合っているかどうか、いったん立ち止まって確認してほしいですね。「利回りがよい=リスクが高い」ので、飛びつくのは危険。いったん様子を見ましょう。同じように株価は安いのに、配当利回りがいい銘柄も、様子見が必要です。安いには、ちゃんとワケがある。業績が悪くて、会社の持続可能性が失われているのかもしれませんし、機関投資家が手放しているだけかもしれません。

■世界はアメリカ一極から多極化へ

株式投資の世界には「利大損小」という言葉があります。これは100万円投資して、99万円損したら、残りの1万円から100万円にするのは非常に難しい。でも、100万円の損失を10万円に抑えて、90万円を原資にまた分散投資すれば、100万円を超えるかもしれない――そうした「いかに負けを小さく、そして利益を大きくするかが大事」といった意味です。私自身、分散投資を徹底していますが、それは今後、地政学的に大きなうねりが起こり、これまでの世界のルールが変わるかもしれないと予想しているからです。戦後80年、アメリカが世界の覇権を握ってきましたが、数々の戦争が重なり、アメリカはいよいよ体力が失われてきています。一方、中国が力をつけて、ロシアとタッグを組み始めている。つまり今は、アメリカ一極の世界から、多極化の世界への過渡期である。だからこそ、米ドルが今後も変わらず基軸通貨であり続けるかどうかはわからない――。私はこのように考えています。実際、中東の石油は米ドルではなく、人民元で買えるようになったり、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)では、ドルを使わないしくみをつくろうという動きが起きています。また中国は、自国の通貨の価値を上げるためか、金をどんどん買い増しています。つまり米ドルに今のように価値があるのは、ここ80年ぐらいの流れなのです。米ドル覇権がすぐに消滅することはないにせよ、リーマン・ショック級の経済ショックが頻発したら、アメリカ経済はどうなるかわかりません。

■自給自足は究極のリスクヘッジ

ここからは私の予想です。今後、アメリカ一極が衰えて、世界が戦争状態になってしまったら、かなりの確率でインフレが加速すると思います。そうなると資源を持っている国が強い。たとえば食料や鉄鉱石などの資源が豊富なオーストラリアなどは、しっかりと生き残れるだろう。だから私は今、オーストラリアドルやオーストラリアドル建の債券に関心を持っています。もちろんアメリカも資源がありますが、覇権から衰退する過程で何が起きるかわからないことを考えると、米国債の追加保有は様子見したいと考えています。もしも台湾有事が起きれば、真っ先に飢えやすいのは東京だという試算もあります。それぐらい日本の食料自給率は低い。その自衛策として私は、趣味も兼ねて畑作業での作物づくりの準備に動いています。「自給自足」の準備です。東京にも手放された農地はたくさんあるので、共同でそこを耕し作物をつくり続けるのは、次世代にも価値があることだと。


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崔真淑(さい・ますみ)

エコノミスト

2008年に神戸大学経済学部(計量経済学専攻)を卒業。2016年に一橋大学大学院にてMBA in Financeを取得。一橋大学大学院博士後期課程在籍中。研究分野はコーポレートファイナンス。新卒後は、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)でアナリストとして資本市場分析に携わる。債券トレーダーを経験したのち、2012年に独立。著書に『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』(大和書房)などがある。

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(エコノミスト 崔 真淑 構成=池田純子)


プレジデントオンライン/2024年7月15日 9時15分


2024年6月19日水曜日

相続放棄したのに請求がきた!債権者による取り立てへの対処法

 親族がなくなった際、相続放棄をすれば、故人が残した借金の返済を引き継がなくてよくなります。しかし、相続放棄をしたのに相続人に請求が来ることがあります。相続放棄したのに請求が来た際の対処法や、相続放棄しても返済をしなければいけないケースについて弁護士が解説します。

1. 相続放棄後の請求に支払い義務はない

民法では、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかをしなければならないと定められています。単純承認とは被相続人(亡くなった人)の財産を無条件で全て相続することであり、限定承認とは相続によって得たプラスの財産の範囲内でマイナスの財産も引き継ぐことを言います。これに対し、相続放棄をすると、相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされ、被相続人の権利や義務を一切受け継がないことになります。そのため、相続放棄をした人は、その後に、亡くなった人の借金について債権者から請求を受けたとしても支払う義務はありません。

2. 相続放棄をした後に債権者から請求が来た場合の対処法

まずは「相続放棄をしたのに借金の請求が来た場合」の対処法を紹介します。

2-1. 相続放棄が認められたことを伝える

家庭裁判所で相続放棄の申述を行い、受理されたとしても、被相続人の債権者に通知が行くわけではありません。そのため、債権者はあなたが相続放棄をしたことを知らない可能性があります。そんなときは慌てずに、債権者に対して相続放棄を行っている旨を伝えましょう。相続放棄をしたことを伝えれば、債権者も基本的にはそれ以上の請求はしてこないでしょう。

2-2. 相続放棄申述受理通知書を提出する

債権者の中には「相続放棄をしているなら、その証拠を提出して欲しい」と主張してくる人がいるかもしれません。そのような場合には「相続放棄受理通知書」を債権者に示すことで、相続放棄が行われていることを理解してもらえます。もし手元に、相続受理通知書がない場合でも、相続放棄の申述をした家庭裁判所に申請することで、相続放棄が受理された旨の証明書を交付してもらうことが可能です。亡くなった人の借入先がすでに分かっていて「いつか連絡が来るかもしれない」という状態が嫌だという場合には、あらかじめ相続放棄をしたことを、これらの書類を添えて通知しておくことで事前に対処することもできます。

2-3. 取り立てが続く場合は弁護士に相談する

相続放棄をしたことを伝え、証明書を提示しても取り立てが続くような場合には、弁護士に相談し、法的に支払う義務がないことを明示してもらいましょう。弁護士に依頼し、債権者との連絡を弁護士に任せることで、債権者と直接やりとりする必要がなくなり、精神的な負担も軽減できます。また、万が一、借金を返済する必要があるかもしれないケースだったとしても、早めに相談することで今後の対策が立てやすくなります。

3. 相続放棄をする前に請求がきた場合の対処法

相続は突然発生するものなので、亡くなった人にどんな財産や債務があるか、相続人が把握していない場合も多いです。債権者からの請求によって、遺産に借金が含まれているのを知ることもよくあります。自分が相続人になった場合には、亡くなった人にどんな財産があるかだけでなく、どんな債務があるかについても、よく調べておくようにしましょう。亡くなった人宛の郵便物や、預金通帳の取引履歴などから、債務の手がかりを見つけることができるケースもあります。なお、相続放棄をする前に、債権者から請求を受けた場合であっても、相続放棄をすることは可能です。ただし、相続放棄は「被相続人が亡くなったことと、自分が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内」にしなければなりませんので、この期間には十分注意しましょう。

4. 相続放棄をしても借金を返済する必要があるケース

相続放棄をしても、借金を返済しなければいけないケースもありますので、注意しましょう。

4-1 亡くなった人の借金の連帯保証人になっていた

相続人が、亡くなった人の借金の連帯保証人になっていた場合には、相続放棄をしたとしても借金を返済する必要があります。なぜならば、相続人自身が亡くなった人の連帯保証人となっている場合には、自己の連帯保証債務として借金を支払う義務を負うからです。この場合には、相続放棄をしたとしても、連帯保証人としての返済義務を免れることはできません。

4-2. 正式な手続きをしていない場合

相続放棄をするためには、被相続人が亡くなった後、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。中には「他の相続人に、相続放棄をする、と伝えたので相続放棄をしたものだと思っていた」「兄弟で、兄が遺産を取得し、弟である自分は何ももらわないということで、話はついているので、相続放棄をしていると思っていた」などというケースもあります。しかし、相続人同士で話し合っただけでは、正式な相続放棄とは認められません。また、「生前に遺留分を放棄する旨の手続きを裁判所に対して行っているので、相続放棄は行わなくてもいいのではないですか」という質問をお受けすることもありますが、遺留分の放棄の許可と相続放棄の申述は全く別の手続きです。遺留分放棄の許可は、亡くなった人の生存中に、亡くなった人の住所地の家庭裁判所に対して申立てをすることで、あらかじめ遺留分を放棄することができる制度のことです。従って、仮に、遺言によって全財産が他の相続人に相続されることになったとしても、遺留分放棄者である法定相続人は、亡くなった人の負債を相続することになります。そのため、遺留分放棄の許可を受けている相続人であっても、亡くなった人の死後に、改めて相続放棄の申述を行う必要があります。

4-3. 相続放棄が無効な場合

家庭裁判所に相続放棄の申述を行って受理された場合でも、実際には相続放棄の要件を満たしていなかったという場合には、相続放棄が無効だと判断される場合があります。

下記のようなケースでは遺産を相続したと見なされます。

・相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき

・相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったとき

・相続人が、限定承認又は相続放棄後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録に記載しなかったとき

そのため、相続放棄をする前に、亡くなった人の財産を処分してしまっていた場合には、相続について単純承認をしていたと判断される可能性があります。相続放棄をした後に、亡くなった人の財産を隠匿したり、自分のために消費してしまっていたりというような場合でも同様です。

4-4. 民事訴訟を起こされ裁判で負けた場合

債権者が相続放棄を無効だと考える場合には、相続放棄をした相続人に対して「亡くなった人の債務を支払え」という民事訴訟を提起してくる可能性があります。この場合には、その民事訴訟手続きの中で、相続放棄が有効か無効かが判断されます。相続放棄が無効であると判断され、債権者の請求が認められた場合には、相続人は亡くなった人の債務を相続したとして、債権者に対して借金を支払わなければなりません。

5. 相続放棄が正しく行われたか確認する方法

続放棄が行われると、相続放棄した相続人は、法律上、初めから相続人ではなかったものとみなされるので、次順位の相続人が、法定相続人としての地位を取得することになります。例えば、亡くなった人に子どもがいる場合、子どもが相続放棄をすると、亡くなった人の親が法的相続人になり、親も相続放棄をすると、亡くなった人の兄弟が法定相続人になります。次順位の相続人が先順位の相続人と連絡が取れない状態にあるような場合、相続放棄の手続きが行われているかどうか分からないという状況になる可能性もあります。このような場合には、第二順位以降の相続人は、相続放棄の申述が行われているかどうかについて、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に照会することによって確認することができます。

6.相続放棄後の請求でよくある質問

Q. 相続放棄されると債権者は泣き寝入り?

相続放棄が有効な場合には、債権者は相続放棄をした相続人に対して、請求を行うことができません。ただし、その場合には、次順位の相続人が法定相続人になるため、次順位の相続人に対して、被相続人の借金の返済を請求することができます。

Q. 遺産の一部を相続したら返済の義務はどうなる?

遺産分割協議を行って、遺産の一部を相続するなど相続人が相続放棄を行わなかった場合には、亡くなった人の債務についても返済義務を負うことになります。その場合、借金のような債務については、法定相続割合に応じて、各相続人に分割されます。例えば、相続人が2人いて、そのうちの1人が、亡くなった人の財産も債務も全て相続するというような遺産分割の合意を行ったとしても、債権者に対しては、それぞれが法定相続割合に応じて借金の返済義務を負うことになります。

Q. 返済してしまったお金は相続放棄後に返してもらえる?

相続放棄をした後に、債権者に支払ってしまったお金は原則、返してもらうことは難しいでしょう。民法では第三者弁済として、債務の弁済を債務者以外の第三者が行うことも認められているからです。ただし、例えば、その弁済が他の相続人の意思に反しているような場合で、かつそれを債権者も知っているような場合など、第三者弁済が無効となる場合には、支払ったお金を返してもらえる可能性があります。また、債権者に騙されたり、暴行や脅迫によって支払を強制されたりした場合には、弁済を取り消して返金を請求することが可能です。

7. まとめ 相続放棄は弁護士に相談を

相続放棄をすれば、亡くなった人の借金の返済はしなくてよくなります。相続放棄をしたのに債権者から請求が来る場合「相続放棄をしたこと」をまず伝えましょう。「相続放棄の証拠を見せろ」と言われた場合には、家庭裁判所から発行される書類を提出するのも有効です。一方で、亡くなった人の連帯保証人になっていたり、相続放棄の手続きがきちんとできていなかったり、相続放棄が無効になったりしたケースでは、借金の返済を引き継がなくてはいけないので注意しましょう。相続放棄の期限は「自分が相続人だと知ってから3ヶ月以内」です。悩みがある人は急いで弁護士に相談しましょう。

(記事は2024年4月1日時点の情報に基づいています)

竹森現紗(弁護士)プロフィール

福井県出身。アリシア銀座法律事務所代表弁護士。第二東京弁護士会所属。大手渉外法律事務所などでの勤務を経た後、銀座にアリシア銀座法律事務所を開業。相続問題や離婚・男女問題など家族にまつわる法律問題と、企業法務・医療機関向けの法務を主に取り扱う。男女問題については、離婚だけでなく、婚前契約や夫婦関係の再構築などの相談にも対応しているほか、結婚相談所アイデアルマリッジ銀座で結婚アドバイザーとしても活動している。

竹森現紗(弁護士)

相続会議2024/6/18(火) 7:03配信


森林環境税って何?

 今年から森林環境税という税金が課税されます。これについて説明します。

森林環境税は、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律(平成31年3月29日法律第3号)に基づき、市町村(特別区を含む。以下同じ。)及び都道府県が実施する森林の整備及びその促進に関する施策の財源に充てるため個人住民税均等割に上乗せして課される税金である。国の課す税金であるが、実際の徴収は個人住民税に併せて市町村が行う。その収入額は、森林環境譲与税とし、市町村及び都道府県に対して譲与される。

〇納税義務者

森林環境税の納税義務者は、日本国内に住所を有する個人となっており、合計所得金額が政令で定められる一定額以下の者や、未成年者・寡婦(寡夫)・障害者に該当する者で合計所得金額が135万円以下である場合は課税されない。非課税基準は、個人住民税の均等割が課されない基準と同じのため、実際には、個人住民税の均等割が課される者に課税される。

〇税率

年間1000円

〇納付方法

森林環境税は、住所所在市町村の個人の市町村民税の均等割の賦課徴収の例により、当該住所所在市町村の個人住民税の均等割の賦課徴収と併せて行うことになっており、納税者から見ると実質的に住民税の均等割が1000円引き上げになったのと同じである。

〇課税開始

森林環境税は、令和6(2024)年度から課税される。

〇森林環境譲与税を活用した森林の整備

森林環境譲与税の制度と同時にこれを財源として利用した森林整備の制度(森林経営管理制度)が整備された。これは森林整備、経営管理が行われていない森林(主に人工林)を対象に、森林所有者から受託を受けた市町村もしくは再委託を受けた事業者が、森林所有者の代わりに森林経営を行う制度である。これまで手入れを行う手立てが無かった小規模所有者や不在村所有者の森林も対象になるほか、境界や所有者未確定のため放置されてきた森林の整備にも道が開けることとなり、森林の質的向上を通じ、森林の多面的機能(水源涵養や防災機能など)が高まるなど多くのメリットの発現が期待されている。

〇問題点

平成31年から交付金として自治体に先行配布されているが、国から具体的な活用方法が示されていないことや、自治体側に人手不足などにより活用できていないことが明らかになっている。2022年の調査では3年間で配分された約840億円のうち395億円が活用されず、大半が基金として積み立てられているという結果となった。配分基準は、私有林や人工林の面積に応じた分が50%、人口に応じた分が30%、林業従事者数に応じた分が20%となっていることから、森林面積が少ないが人口の多い大都市に多く配分されている。渋谷区は私有林や人工林の面積がゼロで林業や農業の担当係もないが、3年間で4600万円が交付され基金として積み立てられている。管理している区の財政課ではNHKの取材に対し「都市部なので、林業に対する考えが及んでないというか、よくわかりません。特定の事業に使う想定はありません」と回答している。林野庁では税制改正要望を出しており議論の推移を見守るとしている。



2024年3月23日土曜日

「確定申告で取り戻せるお金」税理士が教える4つのお金、サラリーマンも年金受給者も要チェック

 会社員の給料、事業や投資で得た利益など、さまざまな所得にかかってくるのが所得税、そして住民税だ。なけなしのお金に税がかけられるのは、本当につらいもの。なんとか税金を減らしたい……。

〇税負担を減らす「控除」というしくみ

「税負担をやわらげるしくみはあります。それが“控除”と呼ばれるものです。養っている家族がいる、障害があるなどの事情がある場合は、税額を計算するときに、所得から一定の金額が差し引かれます。税金がかかる大もとの所得が減ることで、その分、税金も少なくなるのです」そう教えてくれるのは、税理士の服部大さん。代表的な控除としては、例えば、配偶者控除、扶養控除、障害者控除などがある。これらの控除を受ける手続きはさほど難しくない。例えば会社員であれば、会社から毎年11月ごろに渡される用紙に必要事項を記入して、勤め先に提出するだけで納めすぎた税金が戻ってくる。自営業者も、確定申告する際に必要事項を記入するだけでこうした基本的な控除を受けることができるのは、ご存じのとおり。「実は、所得税や住民税をめぐる控除は他にもいろいろあるんです。ただ、こうしたプラスアルファの控除をもれなく受けて少しでも税を減らすには、“自分で”受けられる控除が他にもないか調べ、確定申告しなくてはなりません」(服部さん、以下同)。会社員であろうと自営業者であろうと、年末調整や確定申告を“例年どおり”で済ませていると、せっかくの控除を受けるチャンスを逃してしまうかも。受けられる控除が増えれば、所得税はもちろん、住民税や健康保険料などの負担も減るのだから、あてはまるものがないかしっかりチェックしよう。

〇年金生活者も取り戻せる!

年金生活者も人ごとではない。一般的な年金は65歳未満で年額108万円以上、65歳以上は158万円以上なら、税がかかる。配偶者控除などの基本的な控除はすでに引かれているが、会社員と同様、プラスアルファの控除を受けるには確定申告が必要なのだ。例えば、1年間で払った医療費や薬代、介護サービス費が多かった場合の医療費控除はその代表例。同居している家族の分はもちろん、別居している親やひとり暮らしをしている子についても、仕送りをして生計を同じくしていれば、その医療費も合わせて申告できるので要チェックだ。また今年の元日に発生した能登半島地震の惨状を見て、「何か役に立てないか」と2000円を超える寄付をした人も、控除を受けられる可能性がある。「ただし、今年の寄付については来年の申告になりますから、受領証などを来年まで保管しておいてください」。社会保険料についても注意が必要だ。年金から天引きされている社会保険料については、すでに控除が適用されて、税金が安くなっている。ただし、口座振替や窓口で払っている分については、確定申告をしないと控除が受けられない。特に口座振替をしていると、払ったことじたいを忘れがちなので通帳で確認しておこう。こうした控除は、払う金額が年によって違う、控除を受けられることを知らない、といった理由からうっかり申告し忘れることが多いので注意したい。また、年金生活者で、9月ごろに「扶養親族等申告書」が送られてきたのに、返送していない人も注意が必要だ。これは、年金から所得税が引かれる予定の人に送られてくるものだが、よくわからないからとうっかり出し忘れたままだと、多めに税金を引かれてしまうので要注意。

〇年金収入が少ない人も住民税減の可能性

「年金やパート収入が少なく、所得税が引かれていない場合は、還付する税がないので、確定申告するメリットが薄れてしまいます。ただし、収入によっては住民税のみかかる人も。所得税はなく住民税のみ引かれている人で、まだ受けていない控除があるなら確定申告をしましょう。住民税が下がる可能性が高いので、面倒でも一度確認を」。こういったプラスアルファの控除をあなたが受けられるかどうかは、会社や役所は教えてくれない。自分でやるしかないのだ。親が年金生活者だという人は、親に確認してみてほしい。「去年も控除が受けられたはずなのに、よく考えたら扶養親族等申告書の提出や確定申告をしなかった……という人もあきらめないでください。税を取り戻すための期限は5年。5年前までさかのぼれますので、取り戻せるお金はしっかり取り戻しましょう」

〇確定申告で取り戻せるお金はコレだ!

「自分や家族の医療費、介護費をたくさん払った人(医療費控除)」

・医療費のほか、治療のための薬代、通院交通費、介護保険のサービス費などが対象。

・明細書(医療を受けた人、支払先、金額、日付などの一覧)を作り、申告の際に提出。

注意点

・年間合計額が、10万円または総所得の5%のうち、少ないほうを超えていることが条件。

・別居家族の分も生計が同じならOK。生命保険や高額療養費制度でもらったお金があれば差し引く。

「被災地などに寄付をした人(寄附金控除)」

・対象は、義援金のうち、特定の団体(日本赤十字社など)への寄付。

・ふるさと納税も対象。

・寄付先から受け取った受領証など、必要書類を添付して申告。

注意点

・2000円超の寄付が対象。

・控除の対象となるか、前もって寄付 先に確認を。

「保険料を窓口などで払った人(社会保険料控除)」

・窓口での現金払いや口座振替で納めた社会保険料(国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料など)が対象。

注意点

・配偶者や生計を同じくする親族の社会保険料を負担した場合は合算。

・口座振替をしているものがないか、通帳をチェックする。

「「扶養親族等申告書」を返送していない人(配偶者控除など)」

・扶養親族等申告書は所得税が源泉徴収される予定の年金生活者に9月以降に届く。

・期日までに返送しなかった人は、確定申告して控除を受ける。

注意点

・扶養親族等申告書は配偶者や扶養親族がいなくても自分が障害者や寡婦などの場合は控除が受けられる。

・申告書を提出した人でも、その後、申告内容に変更があれば確定申告を。

※ネットで確定申告(e-Tax)した場合は提出不要の書類もある。

※控除を受けるにはさまざまな条件があるので、国税庁のサイトや所轄の税務署の相談コーナーなどで確認を。

教えてくれた人……服部大さん●税理士。雑誌などで税や“手続きで戻ってくるお金”について多数解説

取材・文/鷺島鈴香


週刊女性PRIME/2024年2月24日 6時0分


2024年2月11日日曜日

NISAなのに課税?「配当金」は受け取り方式に注意

 「憧れの配当生活」「今こそ配当株投資」――。来年始まる新NISA(少額投資非課税制度)を機に「配当金」が改めて注目を集めている。株式投資のリターンは売買益と配当収入に大別できるが、どちらもNISA口座での取引なら、通常なら差し引かれる20.315%の税金がかからない。

〇NISAを機に注目される配当収入

夢があって派手なのは値上がり益だが、結果は株価次第で予測は困難だ。一方の配当は会社が業績予想に基づき、半ば公約的に発表するもの。地味だが堅実で比較的あてにできる存在だ。持っている限り毎年チャリンチャリンと現金収入が得られる。はやりの「ほったらかし投資」向きだが、「ある設定」を間違えたままほったらかすと「NISAにもかかわらずずっと課税されていた」なんて悲劇が起きかねない。一度しっかり確認しておこう。

〇配当金の受け取り方法は4つもある

問題は配当金の受け取り方法の設定だ。証券口座を開く際、どれを選ぶか聞かれるがなんと4つもあるのだ。

①配当金領収証方式

②登録配当金受領口座方式

③個別銘柄指定方式

④株式数比例配分方式

いずれも何度読んでも頭に残らないネーミングな上、証券会社ごとに微妙に呼び方も違うので覚えにくい。ざっくり理解すると、証券口座に入れるか(④)、銀行口座に入れるか(②、③)、現金で受け取るか(①)の違いだ。銀行口座はまとめて1つか(②)、銘柄ごとに口座を変えるか(③)で分かれる。

NISAの場合「株式数比例配分方式」を選ぶ

このうちNISA口座で配当の非課税メリットを享受できるのは④の株式数比例配分方式だけだ。他の方式を選ぶと自分では非課税のつもりでも20.315%の税金が引かれての入金になってしまう。これからNISAを始めるために証券口座を開設する人は悩まず株式数比例配分方式を選び、証券口座で受け取ると覚えておけばいい。問題はむしろベテラン投資家かもしれない。なぜなら昔からのなじみの方法は①配当金領収証方式。ゆうちょ銀行や郵便局で領収証と引き換えに配当金を現金でもらうやり方だ。後に③が始まり、株券の電子化とともに2009年以降、②、④が可能になった。

〇あとで選んだ方式に「上書き」

ベテラン投資家の場合、「配当は領収証を持っていって現金でもらうもの」という認識の人もいるかもしれない。それでもNISAで配当金非課税メリットを享受したければ、株式数比例配分方式を選ぶ必要がある。厄介なのは、配当金の受け取り方法はどれか一つしか選べず、しかも最後に選んだものが全ての口座で適用されることになる。いわば上書きだ。これまで課税口座で①や②、③を選んでいた人がNISA口座開設時に④を選ぶと、すべての課税口座での配当受け取り方法も自動的に変わってしまう。「証券会社に『なぜ入金先が証券口座に変わったんだ』と顧客からの苦情が寄せられるケースもある」(日本証券業協会)

〇「デフォルト」は領収証方式

さらに厄介なのは、もし選ばなかった場合、自動的に振り当てられる「デフォルト」の受け取り方は配当金領収証方式であることだ。NISA口座開設時に自ら確実に株式数比例配分方式を選んでいないと、自動的に領収証方式に振り分けられて課税されている可能性はある。証券保管振替機構によると、個人投資家を中心とする残高のある証券口座は日本に約2898万口座。うち株式数比例配分方式は約1681万口座だが、NISA口座(一般、つみたて)は6月末時点で1941万口座まで増えている。NISAとは関係なく株式数比例配分方式を選んでいる人がいることを考えると「NISAなのに配当の非課税メリットがある口座を選んでいない人」は少なくとも300万人以上はいる計算になる。

〇変更は可能 まずは確認

あくまで株式投資の配当に関する話で、売買益についてはNISAならどの受け取り方式でも非課税になるし、投資信託の分配金は無関係だ。一度選んだ受け取り方式を変更することも可能。対面証券なら丁寧に説明してくれるはずだし、ネット証券の場合はマイページにログインして口座管理画面の自分の情報を変更する項目を操作すればいい。配当の権利確定日前に余裕を持って、一度確認しておくと安心だ。


2023年11月21日 4:00 日本経済新聞


2023年10月25日水曜日

タンス預金を続けて「600万円」貯まりました。銀行に預けると税金はかかりますか?

 〇タンス預金を銀行に預けたら課税されるの?

源泉徴収された給与の手取り収入や、確定申告を行った後の所得からのお金をタンス預金にしていた場合はすでに所得税などが差し引かれているので、銀行に預けるときには新たな課税の対象になりません。銀行に預けた預金に利息が発生したときには、所得税・復興特別所得税15.315%と地方税5%を合計した20.315%が利息から「源泉分離課税」として差し引かれます。タンス預金に親や他人などからもらったお金が含まれている場合は、贈与税の課税対象になることもあります。

1:給与の手取り収入からタンス預金を続けて600万円を貯めたAさんの場合、贈与税・所得税などは非課税

2:自営業で、確定申告と納税を行ったあとのお金からタンス預金を続けて600万円を貯めたBさんの場合、贈与税・所得税などは非課税

3:給与の手取り収入からと、親からもらった400万円をタンス預金にして600万円を貯めたCさんの場合、親からもらった400万円が贈与税の課税対象となる可能性があり、試算すると以下のような計算式となります。__

(400万円-贈与税の基礎控除額110万円)×贈与税特例税率15%-贈与税控除10万円=33万5000円を贈与税として申告し納税する必要が出てきます。

贈与されたお金がある場合には、いつ・だれから・いくらもらったのかを記録しておき、必要に応じて贈与税の申告を行いましょう。

〇タンス預金のメリットとデメリットは?

タンス預金のメリットとしては、急に現金が必要な事態が起きた際にすぐ使えることです。それであれば普通預金で問題ないと感じるかもしれませんが、冠婚葬祭でまとまったお金が必要になった場合にATM手数料などが不要で、自宅にいながら現金を手にすることができますし、銀行が破綻するリスクにも備えることも可能です。デメリットとしては「紛失・盗難・火災などでお金を失くしても保険の補償対象外であること」と「タンス預金をどこに収納したのか忘れてしまう可能性があること」などです。タンス預金を収納していたことを忘れると、タンス預金を収納していた家具ごと捨てられてしまうこともないとはいえません。

またタンス預金をしていた人が亡くなった後にお金が見つかった場合には、タンス預金は相続財産となり、相続税の課税対象になる可能性が出てきます。遺族がタンス預金の存在にすぐに気づかずに相続税の申告を行い、後でタンス預金を発見した場合には修正申告が必要です。

〇まとめ

給与の手取り収入や確定申告を行ったあとのお金から貯めたタンス預金を銀行に預けるときには、新たな課税対象にはなりません(銀行に預けて発生した利息からは源泉分離課税20.315%が徴収されます)。タンス預金に、他からもらったお金が含まれている場合には贈与税、タンス預金を収納したまま亡くなった場合には相続税の課税対象となる可能性が出てきます。後々のトラブルを防ぐためにも、預金記録をこまめに行うと良いでしょう。


2023年9月19日火曜日

「非課税枠内だから申告不要」の勘違い 「住宅取得等資金贈与の特例」は申告しないと延滞税や無申告加算税を課される

 2023年12月31日までの特例で、家を建てたり購入したりする子供への贈与が最大1000万円まで非課税になる「住宅取得等資金贈与の特例」。生前に大きなお金を贈与でき、相続発生時に相続時精算課税制度のように相続財産に戻されることがないので使い勝手がよく、駆け込みで利用を検討している人も少なくないが注意点がある。岡野相続税理士法人代表税理士の岡野雄志氏が指摘する。「贈与を受けた子供は翌年の2月1日から3月15日までに必ず贈与税の申告をしないと、特例を受けられないうえに延滞税や無申告加算税を課されてしまいます。“非課税の範囲内なので申告をしなくていい”と勘違いしてしまう人は多い」(以下、「」内は岡野氏)。無申告加算税や延滞税の税率は「相続税の申告期限に間に合わない」ケースと同じで、延滞税は遅れた日数分本来の贈与税に上乗せされて課せられる。

「1日でも申告期限に間に合わないと特例を受けられず贈与税が課せられるので注意が必要です。500万円の贈与なら、贈与税ゼロになるはずが48万5000円の贈与税と遅れた日数分と無申告加算税などのペナルティを払わなければならなくなります。申告し忘れてからの対処法はなく、なるべく早めに税金を納めるしかありません」確定申告をしたことがないサラリーマンや、確定申告をしたことがあっても「申告期限に間に合わなくても1か月以内に自主的に申告したのなら無申告加算税がかからない」と、高を括っている人が失敗しがちだという。相続税対策をするうえで、ルールをよく知ることが何より重要となる。

※週刊ポスト2023年9月15・22日号



2023年8月16日水曜日

〈会社経営の超キホン〉「青色申告にするだけで!?」…すぐに使える節税のポイント、3つ【税理士が解説】

 納税は事業経営者の義務ですが、必要以上に払う必要もありません。「節税をしたければ会社をつくりなさい」と言われるように、株式会社にはさまざまな節税のポイントがあります。税務のプロが会社の節税のポイントを紹介します。※本記事は『<改訂2版>らくらく 株式会社設立&経営のすべてがわかる本』(あさ出版)より抜粋・再編集したものです。

〇なにはともあれ「青色申告」を選択すべきワケ

◆青色申告は「正確な帳簿&正しい納税」の約束のもと税金をオマケしてもらえる制度

節税の第1歩は、何をおいても「青色申告」です。青色申告とは、簡単に言うと、「複式簿記のルールに従って正確に帳簿をつけ、正しい納税をします」という約束をすることで税金をおまけしてもらえる制度です。

これに対して、青色申告ではない通常の確定申告を一般的に白色申告と言いますが、青色申告は、白色申告に比べ、税務上有利な点がたくさんあります。主なものを紹介しましょう。

◆青色申告にするだけで!?…すぐに役立つ「節税術」3つ

①繰越欠損金を控除することができます

株式会社の税金は、その事業年度(通常1年間)に生じた所得(利益)に対して法人税、法人住民税、法人事業税が課されます。したがって、赤字になった事業年度については原則、法人税等の税金は生じません。ただし、所得に関係なく一律に課される「均等割」は赤字であっても納付する必要があります。特に設立事業年度等は経費がかかり赤字になる可能性が大きくなります。法人税等は原則事業年度課税です。白色申告だと、この赤字の金額(欠損金)は、その年で切り捨てられてしまうのですが、青色申告であれば、この欠損金を最大9年間(平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年となりました)繰り越すことができます。翌事業年度以降に黒字になったとしても、その所得から欠損金を控除することができます。

②30万円未満の減価償却資産を一括損金算入することができる

株式会社が、減価償却資産を購入した場合、その耐用年数にわたって損金算入(法人税では経費計上を損金算入と言います)することになります。ただし、その使用可能期間が1年未満であるものや取得価額が10万円未満であるものについては、全額その支出した事業年度の損金として処理することができます。これが青色申告であれば、取得価額が30万円未満のものを、総額300万円までに限って、その支出した事業年度の損金として処理することができます。

③特別償却・税額控除その他特別な減税制度を適用できる

固定資産の減価償却費を法定の償却額より多く損金にできる特例や一定の要件に該当した場合に法人税額を直接減額してくれる制度等、青色申告であれば優遇される特例が数多くあります。

〇資産購入は「30万円未満」に抑えるべき理由

◆固定資産は、一括して損金処理ができない!

事業をする上で必要な資産にはどのようなものがあるのでしょうか。例えば、パソコン、電話器、FAX、机、椅子、商談をするための応接セット等の備品類、移動のための車等々。これらは事業をするための必需品ですが、中にはかなり高額なものもあります。しかし、これらの資産の購入金額はすべて支払った年の損金(経費)とすることはできません。これらの資産のうち購入価格10万円以上のものは、その使用する期間にわたって分割して損金にします。これがいわゆる減価償却です。

◆全額必要経費にできる「固定資産の購入方法」とは?

ですが、資産の購入金額によっては支払時に一括で損金にできます。青色申告していることが条件になりますが、30万円未満なら損金にできます。ポイントは「未満」です。30万円ちょうどの資産を買うと全額落とせなくなります。なお、消費税を税込経理している場合には、消費税も含めた金額で判定します。例を挙げて説明しましょう。

●29万8,000円のパソコンを期末に買った場合=損金の金額29万8,000円(全額)

●30万円のパソコンを期末に買った場合=損金の金額18万7,500円(定率法、4年で償却)

たった2,000円の違いで損金の金額が28万5,500円も変わるのです。なお、金額の判定は1台ごとに行います。2台購入してまとめて領収書を切ってもらう場合には「パソコン2台分として」というように明記してもらってください。


THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2023年8月15日 12時15分


2023年6月19日月曜日

突然届いた「借金1,200万円」の返済通知に絶望…父の葬儀後“流れで”遺産相続の話に参加した35歳・会社員の悲劇【司法書士の助言】

 離れた場所に住む子どもが、親が亡くなったタイミングで帰省し、そのまま流れで遺産分割協議を行うというケースは、非常に多くみられます。しかし、遺産分割協議を行ったあとに被相続人の借金が発覚した場合、思わぬトラブルに発展すると、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏はいいます。こういった事態を防ぐには、どうすればいいのでしょうか。本記事で詳しくみていきましょう。

〇3ヵ月で決断が必要…「相続放棄」検討時のポイントは?

相続放棄とは、相続人が亡くなった方の権利義務の承継を拒否する意思表示のことを指します。プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多い場合は、相続放棄をしたほうがいいといえます。相続放棄をする場合、相続が開始したことを知ってから3ヵ月以内に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。これが受理されることによって、相続放棄が認められることになります。

相続放棄をしたあとは、最初から相続人ではなかったものとみなされるため、遺産分割協議等には当然参加しません。相続放棄手続きは選択期間が3ヵ月ととても短いため、注意点も多く存在します。具体例をもとにみていきましょう。

・遺産分割協議参加後は、原則「相続放棄不可能」

・帰省の流れで遺産分割協議に参加後、父の「1,200万円」の借金が発覚

都内の中堅IT企業で働くXさん(35歳)。3歳年下の妻と2歳になる子どもが1人います。地元は九州で、63歳の父親は飲食店を経営していました。その父親が亡くなったという報せを受けたため、Xさんは一時的に帰省。葬儀のあと相続の話になったため、そのまま遺産分割協議に参加しました。財産を相続することで話をまとめたものの、後日父が営んでいた事業の借金1,200万円の返済を求める書面が届いてしまいました。このように、「もし被相続人に個人的な借金があると知っていれば相続しなかった」という事例の場合、どうしたらいいのでしょうか。こういったケースは、筆者が司法書士として実務をやっているなかでもよくある話です。「相続をしたものの借金のことなど知らなかった」「知っていれば絶対に相続放棄していた」といったご相談をよくいただきます。遺産分割協議というのは、自分が法律上の相続人であること認めたうえで行うものになるため、原則遺産分割協議に参加したあとは相続放棄することができません。

〇遺産分割協議後、相続放棄が受理された事例もあるものの…

例外として、今回の事例のように、「相続人が被相続人に借金がないと信じて遺産分割協議をした」「もし多額の借金の存在を知っていたら相続放棄していたであろう」と考えられ、かつ細かな条件に合致していれば、相続人が借金の存在を知ってから3ヵ月以内に相続放棄の申述をした場合は受理すべきであると判事した裁判例も存在します。ただし、この「細かな条件」というのは相当ハードルが高く、類似ケースでも却下となっているケースもたくさんあります。したがって、原則としては先述のとおり、遺産分割協議に参加してしまったらそのあと相続放棄はできないと考えていただきたいです。父親が亡くなったと知り帰省し、その流れで遺産の話し合いに参加するケースはよくありますが、ぜひ相続放棄にはこういった注意点があるということを知っておいていただければと思います。

〇相続放棄ができない事態を防ぐ「3つのポイント」

「相続放棄ができない!」という事態に陥らないためには、以下の3つのポイントに気をつける必要があります。

1.故人の財産に手をつけない

まず、遺産の全容がわからないうちは、亡くなられた方の財産に手をつけるようなことは絶対にやめましょう。

2.遺産分割協議に参加しない

また、遺産分割協議に参加することも控えていただく必要があります。

3.負債調査を行う

さらに、負債の調査をしっかりと行っておきましょう。郵便物や保管物、通帳の確認を行い、信用情報機関に問い合わせる必要もあります。信用情報機関というのは大きく分けて「JICC(日本信用情報機構)」「CIC(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)」「KSC(全国銀行個人信用情報センター)」の3つがありますが、この3つとも照会し、問い合わせておくことが重要です。金融機関からの借入やクレジットカードのローン等に関しては、信用情報機関に必ず記載があるため問い合わせればわかりますが、個人間の借金はなかなかわかりづらいです。借用証書などの書類がないと、借金が判明しないまま相続してしまう場合もあるため、十分に注意が必要です。また、信用情報機関に問い合わせをするにしろ、これは郵送で行うためかなりの時間(3週間~4週間)を要します。3ヵ月の熟慮期間内に相続放棄をしなければならないなか、調査に時間を要して相続をするか・相続放棄するか決定できない場合には、家庭裁判所に申し立てることで熟慮期間を延長することが可能です。相続放棄を検討するのであれば、同時進行で一気に手続きを進めていかないと間に合わないため、財産調査は個人で行うよりは専門家に依頼するほうがスムーズです。

◆まとめ

相続放棄手続きを失敗しないためにも、自らが相続人となる可能性がある人の情報については、生前のうちにある程度は把握しておいたほうがいいでしょう。

相続が発生した場合、

1.まずは財産調査をしっかりを行う

 2.相続放棄を希望する場合は、熟慮期間がわずか3ヵ月であるため早めの手続きを行う

というのがポイントです。相続財産の調査に関しては、相続の専門家である弁護士や司法書士に早期に依頼し、のちのトラブルを防ぐことにつながります。


加陽麻里布

司法書士法人永田町事務所

代表司法書士


幻冬舎ゴールドオンライン / 2023年6月18日 11時15分


〈死後にスマホの中身は見られたくない…〉プライバシーは守れて遺族に迷惑はかけない“1分で終わる”賢いデジタル終活術

 昨今、多くの人がスマートフォンやPC、インターネット上でさまざまな個人情報やデータを保存・管理している。そのため生前に情報を整理しておかないと、もし自分が突然死んでしまったとき、家族やパートナーが手続きなどを進めるうえで非常に困ってしまうことも。最低限やっておきたい「デジタル終活」を、日本デジタル終活協会の代表理事・伊勢田篤史氏に聞いた。

〇死ぬ前にやっておきたい「デジタル終活」

人がいつ亡くなるのかは、わからないもの。もし、不慮の事故や病気で自分が死んでしまったときに、まず真っ先に困るのは遺族です。遺族は行政的な手続き以外にも、銀行や保険、遺産相続に関する手続きなど、さまざまな作業に追われます。特に、昨今は多種多様な情報やサービスがデジタル化しており、たとえば、故人がどんな証券会社と取引していたのか、どんなサブスクリプションサービスを契約していたのかなども、ひとつずつ確認していかなければなりません。とはいえ、遺族になる可能性のあるパートナーや子どもからしてみれば、あなたが亡くなったときの対応について相談したりするのは、「縁起でもない」と思われそうで、なかなか気が引けます。そのため、遺族に対しての負担を少しでも減らすための準備は、本人が能動的に行っておくことが大切です。でも、いざ「終活をしよう」と意気込んだところで、具体的に何をどうすればよいのかは意外とわからないもの。また伝達事項を細かく残そうとして、途中で疲れて頓挫してしまったら元も子もありません。そこで、今回は日本デジタル終活協会の代表理事・伊勢田篤史さんに “デジタル遺品”を残すうえで、心掛けておきたいポイントを伺いました。

〇何より大切なのは「スマホのパスワード」

??伊勢田さんが代表理事を務める「日本デジタル終活協会」では、普段どのような活動をされているのでしょうか。

日本デジタル終活協会は、その名のとおり「デジタル終活の普及」を目的に2016年に設立した団体です。設立当初はデジタル終活に特化した「エンディングノート」(自分の死後に備え、遺族に伝えたいことを書き留めておくノート)を作ることからスタートしました。現在は、セミナーやメディアを通じてデジタル終活をわかりやすく伝える活動を中心に行っています。

??「デジタル終活」の分野において、遺族の方は、実際にどんな点で困ることが多いのでしょうか?

やはり「スマホやPCのパスワードがわからない」というケースが圧倒的に多いですね。PCなら何とかなることもありますが、特にスマホはパスワードロックを解除するのがかなり大変です。一般的に、自分自身のスマホのパスワードを家族やパートナーと共有しているケースは少ないように思われますが、万が一の際、スマホのログインパスワード(パスコード)がわからず、そもそもスマホ内にアクセスすることができないというケースは今後増えていくものと思われます。故人のスマホのログインパスワード(パスコード)がわからない場合には、データ復旧の専門家にご相談されるとよいでしょう。

??故人のスマホのロックを解除してくれる業者がいるんですね。

はい。ただ、専門家にスマホのパスワードロックを解除してもらう場合、ケースバイケースですが、半年から1年以上かかることもあり、また解除費用も非常に高額(20~30万円程度)となってしまうこともあります。特に、最新のOSや端末については、特に時間がかかるようです。スマホやPCが開けないと、遺族としてはかなり困ることになります。たとえば、故人の友人を葬儀に呼びたいけれど、連絡先がわからない、遺影となるいい写真が見つからない等のトラブルはよく耳にします。また、相続関連では「サブスクリプションで毎月何に課金していたかがわからない」「ネット証券会社がどこかわからない」といったケースがよくあります。そういう事態を防ぐために、私はとにかく「スマホのパスワードを残しましょう」というメッセージを発信しています。もちろん、PCのパスワードも残しておいてほしいところですが、まずはとにかくスマホです。スマホのパスワードさえわかれば、あとはどうにかなるケースが多いので。

〇自分の死後もプライバシーを守るために

??ただプライバシーの関係上、「生前にログインパスコードを伝えるは嫌だ」という方も多いですよね。その場合は、どう対処すればよいでしょうか?

生前にスマホのパスワードを知られたくないなら、「亡くなったときに伝わるような仕組み」を作っておきましょう。もちろんエンディングノートに記しておくという手もありますが、ほかの手段でも構いません。エンディングノートの場合、たとえば「家族との想い出を書きましょう」といったパートで何を書こうか困ってしまい、なかなか作成が進まないこともあるので。

??「亡くなったときに伝わるような仕組み」とは、具体的にどのようなものでしょう?

あまり難しく考えず、まずは遺族の方がわかるように、スマホのログインパスワードを簡単なメモで残しておきましょう。遺族が見る可能性が高いであろう財布や通帳に挟んでおく、一人暮らしであれば冷蔵庫のドアに貼っておく等の方法で、万が一の際でもパスワードが容易に伝わるような仕組みを作っておくとよいでしょう。また、たとえば保険に加入しているならば、その保険証券が自宅にあるはずなので、その保険証券の中に、ログインパスワード等を書いたメモを入れておくという方法も考えられます。なお、専属の担当者がいるような場合には、その担当者に対して、「保険証券の中にログインパスワード等を書いたメモが入っているから、万が一の際に家族に伝えてほしい」とお願いしておくことも考えられます。

??「自分の死後であっても、スマホの中は見られたくない」といった場合は、どうすればよいでしょうか?

その場合は、生前に「遺族にとって最低限必要な情報」をまとめて残しておきましょう。たとえば証券なら、取引している会社名さえわかれば、遺族は何とかなるものです。「どのような銘柄に投資しているのか」といった詳細は省いて、会社名だけ記しておく。そういった最低限のことをノートやメモにまとめておけば、遺族はそれを確認するだけで済み、故人としてもスマホ内を漁られる可能性が低くなります。そして、そのノート等からPCなどに誘導する場合には、遺族用のフォルダをPC上に用意しておいて、そこまでの導線を記載しておくとわかりやすいです。あらかじめ「PCに入って、このフォルダを開いて」と指示しておけば、わざわざほかのフォルダまで探られる心配もグッと減ります。なお、「指示したフォルダ以外は見ないでほしい」と具体的に指示をしておくことも重要です(生前から、このような指示をしても疑われないような人間関係を築いていくことも大事です)。

いつ死ぬかわからないから、シンプルに

??デジタル終活は少々煩雑なイメージもありましたが、実は至ってシンプルなんですね。

もちろんベストなのは、自分がどういうツールやサービスを使っていて、担当窓口が誰で、ID・パスワードがどうなっているか、といった情報をきちんとノートなどで残しておいて、「もし自分が死んだら解約して」としっかり家族に伝えておくことです。しかし夏休みの宿題と一緒で、締め切りギリギリまでやらない人(かつての私もそうでしたが)は、何を言ってもやりません。終活の場合は「いつ終わりがくるのかがわからない」という点が、少々厄介なのです。明日死なないのに、今日やる必要はない、と考える人は多いのが実情といえるでしょう。作業としては30分くらいで終わることであっても、「自分が死ぬ」ということを考えなくてはいけないので、ついつい先送りしてしまいがちです。しかも、本人にとっては先送りしても困らないですからね。

??先送りにしがちだからこそ、シンプルな手段を薦める、と。

はい。なので、私としては「スマホやPC、各種サービスのパスワードをすべてノートに羅列して…」といったことをやってもらおうとは考えていません。とにかく、スマホだけでも構わないのでログインパスワードを残しておくこと。まずは、それだけでいい。これだけやっておけば、デジタル終活はほぼ完了です。これなら1分で終わります。そのうえで、もし「もっときっちりと残しておきたい」と思ったならば、エンディングノートを作成したり、遺族とあらかじめ話し合ったりと、本格的にやっていただければよいのです。


文/井上晃


集英社オンライン / 2023年6月13日 17時1分


2023年5月13日土曜日

タンス預金「3,000万円」が税務署にバレて…夫の死後、妻子に告げられた「追徴課税額」【税理士が解説】

 きちんと相続税の申告を済ませたつもりが、把握していない財産やうっかり計上し忘れた財産があった…そんなとき、相続人にはどのような事態が起きるのでしょうか? 本稿では、タンス預金3,000万円をうっかり申告し忘れた八代家の事例をみていきましょう。辻・本郷税理士法人 井口麻里子税理士が解説します。

〇キャッシュレスの時代でも「タンス預金」は健在

キャッシュレス決済がすっかり日常となった昨今ですが、まとまった現金を自宅に置いている方は結構多いものです。オレオレ詐欺などでご高齢の方が何百万、何千万円と受け子に渡してしまっている事件を、再三、耳にしますよね。今日ご紹介する八代家では、昨年、夫の慎司さん(仮名)が亡くなりました。慎司さんは自宅のタンスに3,000万円を置いてあったのですが、妻の和恵さん(仮名)はうっかりこの3,000万円を慎司さんの相続税申告に入れ忘れてしまったのです。後日行われた税務調査で果たしてどんな追及がなされたのか、八代家の顛末をご紹介してまいりましょう。

〇相続税申告の後、亡き夫の部屋から見つかったのは…

八代慎司さんは長らく事業を行っていましたが、70歳を機に事業はすべてたたみ、その後は妻の和恵さん(仮名)と悠々自適の生活を楽しんできました。慎司さんの体は丈夫でしたが、昨年の1月、体調不良を訴え救急車で運ばれ、そのわずか4日後に亡くなりました。あまりに突然の別れで、頭も気持ちも追いつかない和恵さんでしたが、混乱した状態にありながらも、税理士と協力してなんとか慎司さんの相続税の申告を済ませました。和恵さんは元来、書類や事務手続きなどが苦手なうえ、初めてのことばかりだったので、申告納税がすべて済んだときは、心底ほっとしました。ようやく落ち着きを取り戻し、少しずつ慎司さんの部屋を片付けようとしたところ、押し入れの中にあるタンスから、紙袋を発見しました。「あ!」和恵さんは思い出しました。そうです。生前の慎司さんは、商売をやっていた習慣か、常にある程度の現金を手許に置いておきたがりました。相続税の申告のための書類を収集していた際に、和恵さんはこの紙袋を見つけていました。そして中に3,000万円の現金が入っていることを発見したのですが、そのときの和恵さんは別のものを探していたため、これを元通りに戻し、それっきり忘れてしまっていたのです。税理士に伝えることもなく、相続税の申告はそのまま済んでしまったのでした。「どうしよう。今さら税理士の先生に言ってもご迷惑になるだけよね。」と考え、それに再び事務手続きなどに関わるのは気が重くて、またもやそのまま元通りにタンスの奥へと戻しました。

〇税務調査官「慎司さんのお部屋を見せてください」

慎司さんが亡くなってから1年半ほど経った頃、税務署が税務調査へとやってきました。調査当日、午前中は慎司さんについて、過去のことや家族のこと、趣味、交友関係などを中心に聞かれ、思ったより和やかに過ぎました。午後になり、調査官が「慎司さんのお部屋を見せてください」と言い出したので、和恵さんは調査官を2階の部屋まで案内しました。調査官は次々に「これを開けていいですか?」などと尋ねながら引き出しや袋を開けていきました。そして数分後、ついにあの押し入れの中のタンスから紙袋が引っ張り出され、中から3,000万円の現金が出てきたのです。厳しい目の調査官に対し、和恵さんはことの経緯を説明しました。しかし調査官によれば、和恵さんが意図的にこれを申告から外したのではないか?隠したのではないか?とかなんとか。和恵さんの頭は真っ白になりました。慎司さんの急な死ですっかり頭が混乱し、精神的にも不安定な状態だったとはいえ、二度にわたり、3,000万円をタンスの奥へ押しやったのですから。

〇税務調査官は「確信」を持って調べに来る

税務署が税務調査に入る際には、前もって入念な下調べをしてからやってきます。特に現預金の漏れについては、税務署は徹底的に注力します。まず、税務署は被相続人の銀行口座や証券口座について、過去の口座の入出金をデータがあるだけ遡って調べます。まとまった金額の出金があり、それを入れた口座がない場合は、不動産や車といった高額なものを購入したり、借りていたお金を返済したり、なにかしらに使ったはずです。ところが、調べてみてもこういった節がない場合があります。また、税務署は被相続人だけでなく、その家族の銀行口座等のデータも調べられる限り調べます。被相続人の口座からある日500万円が引き出されていて、その後息子の口座に500万円の入金が認められたら…? 明らかに両者は紐づけられるでしょう。そして、息子さんから贈与税の申告書も出ておらず、その後の期間に返済を受けた様子もなければ、贈与税の申告漏れか、息子さんに貸したお金かお預けたお金か、ということになります。こうして調べた結果、ある日500万円引き出して、高額なものを購入した形跡もなく、借金を返済したようでもなく、息子の口座へ入ったわけでもなければ…。そう、タンス預金が疑われるのです。それから、税務調査で大活躍しているのが、国税総合管理システム、通称KSKシステムと呼ばれるものです。国税庁や全国の税務署が納税者の申告、納税情報を一元管理するシステムで、これによりその納税者について、どれだけの所得が毎年あって、この年にこれだけの贈与や相続を受け、この年に不動産を売却し、といった情報をすべて把握できることになっているのです。このシステムにより税務署はその被相続人の合理的な金融資産残高を想定し、それより大きくズレた申告がされていれば、家族の口座へ移っているか、自宅のタンスに眠っているか、と考えるのです。ですから、現金なんて黙っていればわからない、という考えは、通用しないのです。八代家の場合、慎司さんが亡くなる前の5年ほどの間に、100万円単位のまとまった金額の引き出しが繰り返され、その合計は3,200万でした。和恵さんや子供たちの銀行口座への移動はなかったため、タンス預金と目星をつけて調査に来たのでした。

〇タンス預金がバレて課される「ペナルティ」

相続税を意図的に減らそうとしたのではなく、和恵さんのようにうっかり忘れてしまった場合でも、相続税の申告漏れがあった場合には、次のようなペナルティが課されます。

■申告漏れに課される「過少申告加算税」

まずは、今回のケースのように申告自体はしたものの、申告に漏れがあった場合は、「過少申告加算税」というペナルティが課されます。追加で納めることとなった税金が50万円までは10%、それを超える分については15%の割合で、追加で納める税金にプラスされます。

■納税が遅れるほど増える「延滞税」

さらに過少申告加算税に加え、本来であれば当初の申告期限までに納めるべき税金の支払いが、調査を受けて改めて申告するまでのあいだ遅れていたわけですから、その遅れた期間について「延滞税」という、利息のような税金がかかります。

■悪質と判断された場合の「重加算税」

また、相続税を意図的に回避するためにタンス預金を隠したと判断された場合には、非常に悪質である、ということで、「重加算税」という大変重いペナルティが課されます。重加算税になると、追加で納めることとなった税金の35%が過少申告加算税の代わりにプラスされることとなります。さらには、配偶者の税額軽減という大きな特例が使えなくなってしまいます。

〇八代家の顛末

八代家の場合はどんなペナルティを受けたのか?幸いにも意図的に隠した、とまでは判断されなかったため重加算税は免れましたが、3,000万円という追加財産に600万円の本税がかかり、過少申告加算税と延滞税も加わって、合計で700万円を超す追徴税額を課されることとなったのです。本件は、すっかり慎司さんの相続は片付いたものとして平穏な生活を取り戻していた八代家に、突如降って沸いた大事件でした。和恵さんは、なんだか慎司さんの人生の終わりにミソをつけてしまったみたいで、また子供たちに申し訳なく、いたたまれない思いで過ごすこととなりました。和恵さんのように、後味の悪い思いをしないように、申告の際には充分に気をつけたいものです。相続税の申告漏れは、このように重いペナルティが課されますから、租税回避はもってのほかですが、くれぐれも「ついうっかり」には気をつけましょう。


井口 麻里子

辻・本郷税理士法人

税理士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士


gentousya online 2023/5/8(月) 12:02配信


2023年4月20日木曜日

【定年後の確定申告】必要?不要?判断基準も合わせて解説します!

 〇年金受給者で確定申告が必要になるケース

結論から述べると、定年後の確定申告は原則不要です。公的年金等を受給している場合には原則として確定申告が不要、という理由によるものですが、特定の条件を満たしている場合には確定申告をする必要があります。ここでは、公的年金受給者でも確定申告を行う必要があるケースをご紹介します。

〇公的年金等の収入額の合計が「400万円」を超える

公的年金等の収入額の合計が400万円を超える場合は、確定申告を行う必要があります。公的年金とは国民年金法、厚生年金法、公務員等の共済組合法などの規定による年金のことを指します。

〇公的年金等を除く所得金額が20万円を超える

〇公的年金等を除く所得金額が20万円を超える

公的年金等を除いた際の所得金額が20万円を超える場合も、確定申告を行う必要があります。

〇各種控除を受けたい場合は確定申告を行う

ここまで解説した条件に当てはまらない場合には確定申告は不要ですが、各種所得控除を受けたい場合には確定申告を行う必要があります。医療費控除、雑損控除、寄付金控除、各種保険料控除などは、確定申告を行わなければ控除を受けることができません。上記控除をはじめとした各種控除を受けたい場合には、本来確定申告が不要な場合でも、確定申告を行うことで所得税や住民税の節税につながります。

〇退職金を受け取る場合は確定申告不要

定年退職をする際に退職金を受け取る場合は、原則として確定申告が不要です。退職所得の受給に関する申告書を提出の上、手続きを行いましょう。申告書を提出しないと退職所得控除による優遇を受けることができず、20.42%の税率で源泉徴収が行われます。提出し損ねてしまった場合には、払いすぎた税金の還付を受けるために確定申告を行う必要が出てくるため、注意しましょう。

〇年末調整を受けていない場合は確定申告が必要

年の途中で退職した際など、年末調整を受けられていない場合には、別途、確定申告が必要になります。会社員の所得税は源泉徴収されていますが、源泉徴収額は概算で算出されるため、正確な値ではありません。余分に納めすぎた所得税は、年末調整によって還付金として返ってきますが、年末調整を受けなければ清算を行うことはできません。退職した翌年から数えて5年以内であれば、確定申告を行って還付が受けられます。

〇定年後の確定申告は必要に応じて行おう!

今回は、定年後の確定申告の必要性と判断基準をご紹介しました。定年後は基本的に確定申告は不要ですが、ご自身の状況によっては必要になるケースがあります。加えて、義務ではないものの、所得控除や還付を受けたい場合には、確定申告を行う必要があります。確定申告が原則不要な定年後であっても、必要に応じて確定申告を有効活用しましょう。